マイスネア考察

随時追加していく予定です。

1.Craviotto Solitaire Alminum 14x5.5

単板の木胴スネアで主に知られているメーカーなので、あえてCraviottoのメタルスネアを大枚はたいて買うという人は間違いなく変わっているだろう。自分はそんな一人だった。

メインスネアとして位置付けているこのスネア、「これが私のサウンドです」と言える自分なりの個性と、あらゆる場面でいい仕事をしてくれる懐の広さを兼ね備えている。

特徴的なのはシェルに小さな穴がたくさん空いていること。穴が空いていればいる程胴鳴りはドライになるが、これによって自分にとって苦手なアルミ特有の倍音の感じられない、スチールが落ち着いたようなバランスのいい響きになっている。ピューター(スズを中心とした合金らしい)フィニッシュも関係ありそう。軽快ながらチューブラグ仕様によって落ち着いたコシが感じられるのも自分にとっては大事な要素。

加えて自分の方でAngel Drumsのステンレス2mm厚シングルフランジフープに交換し、明瞭な輪郭とキレの良さを得た。アンサンブルを邪魔せず存在感を示す、イコライジングされたようなサウンド。コレがこのスネアの現場強さを決定的にしている。

そこにレンジの広いアサプラのヘッドで高域低域の心地良い鳴りをプラス。打面はST(スタンダードな1plyコーテッド)、裏面はLC(ハードコーティングされた仕様)で、この半透明なコーティングのされたスネアサイドによるメリハリの効いたトーンもマイク乗りに大きく貢献していると思われる。

(ただこのシングルフランジフープ、導入当初は強力過ぎて不評だったのが、ボルト緩み防止目的で打面側のテンションボルトをPearlのSpin Tight Tension Rodsにした所で初めて丁度良くなったことも付け加えておく。芯部がアルミになっているボルトで、堅さを緩和してくれているのだ。最近はボトム側のテンションボルトを常時1本抜いた状態にして、よりオープンに鳴るようにしている。ボトム側なのでピッチに影響は出ない。)

スナッピーはCraviottoオリジナルのままである。PURESOUNDに作らせているモノで、同社ブラスターシリーズのプレート部をブラス製のものに替えたような感じの21本仕様。最初はCANOPUSのVintage Snare Wire (DRY)にしていたのだが、最終的にフラットでクセのないこちらの方が最適と判断した。良質なシェルならその特性を素直にアウトプットするフラットなトーンのスナッピーの方が組合せとしてはいい。(正直単品でもう一本買っておきたい…)アサプラヘッドも相まって柔軟で繊細な反応だ。

ヘッドの中央付近だけを叩くようなプレイやミュートを乗せた状態でのオープンリムショットでも音詰まり感があまり感じられない。この点をクリアしているのは所持しているスネアでもこれくらいだろうか。

このスネアが苦手とするのは超ラウドでヘヴィなアンサンブルや、アコースティック系など、極端な場面といえる。というわけで結局コレ一台だけで勝負とはいかないのだが…

2.Ludwig 70's LM400 14x5

上述のSolitaireが自分の思考やセンスを反映した個性派オールジャンル枠としたら、このスネアは古典的で普遍的な正統派オールジャンル枠と言えるかも知れない。しかしそういう考えなら400ではなく402の方が相応しいのではと思うだろう…元々402が欲しいと思ってオークションサイトを日々巡ってはいたのだが、疲れていたのか、ちょっと縦長に撮れていた写真を見て間違えて落札したのである(笑)

現行LM400を所持していたこともあったが、現行のラグとシェルの間に挟まれたゴム製ガスケットによる中低域の間延びしたような響きやダイナミクスレンジの狭さ、コシのなさは個人的には苦手だった。(それでもめちゃくちゃいい音だとは思うし、グレッチのブラススネアに乗り換えるまでは愛用していた。)

70年代400はそれらがないだけでなく、リアルな響きがあるのも特徴だと思った。現行にも受け継がれているリッチで心地良い響きに生々しい野性味が同居しているのだ。叩いていると自分の中の狂気がだんだん放たれ、凶暴なまでのエモーションが発揮される…この感じ…ジョン・ボーナムだ。ジョン・ボーナムのあの鬼気迫る感じはその時の402によって発現されていたのかもしれない…

このスネアが活躍するのはオリジナルバンドのみである。それ自体特別感が出ていいのもあるけど、上記の特徴は何かをコピーする上では向かないと感じる。(スタジオミュージシャン志向なので…)。しかしオリジナルバンドならもっと自分を出していいと思うし、どうプレイするかも融通が利く。ロックバンドだけどギターもベースも音が大きくないので、十分に存在感は出ている。

結局402にすればよかったとか思ったことは一度もない。スネアサイドヘッドをEVANSのホワイトコーティング仕様のオーケストラルにしているおかげか、コシがないといったことを感じないからだ。ちなみに打面もスネアサイドに合わせてEVANSでUV1である。一般的な1plyコーテッドヘッドより少しタイト目の素直なサウンドという印象。スナッピーはオリジナルのまま。野性味の要素はこのスナッピーによるところが大きい気がしている。

録音した音がかなり良く聞こえるのも流石だと思った。総じて自分の好みとは違っても十分説得力が感じられるスネアだ。何よりオーラに凄みがあり、自分自身が圧倒される程。自分より長生きしてるのはそうだけど、一体どういうアレなんですかね。

3.Gretsch 50's 4157 14x5.5

グレッチは過去に数台所有していたが、金欠で全て手放してしまったという悲しい過去がある。この50年代についてはそんな厳しい時代を乗り越えた後に改めて入手したものである。

ヴィンテージグレッチの難しい所はリムショットした時にマイクに中低域が乗りすぎるため、特に女性ボーカルの場合はそれが邪魔に感じる所だ。それでも今の自分の音作りのノウハウをもってすれば上手く使いこなせたかもしれないが…特に70年代4158を手放したのは勿体なかったと今でも後悔している(堅すぎてリムショットすると速攻耳鳴りするような所もあるのだが…)

50年代の木胴はメイプル+(ガムまたはポプラ)+メイプルの3ply構成になっており、少しのいなたさと、優しく柔らかい響きが特徴だ。向いてるとしたらポップスやアコースティック系、小編成ジャズやロックンロールあたりだろうか。

フープはブラス製で分厚く堅い、一般的なダイキャストフープをスリムにしたように見えるダブルフランジフープ。特にリムショット時にスティックがヒットするトップ部分はかなり薄く仕上げられており、シングルフランジフープに通じるような輪郭の強調された音になる。堅さを緩和するためか、テンションボルトがアルミ製というのも今にしてみると珍しい。

自分の所有する固体のセンタープライのマテリアルはおそらくポプラだろう。グレッチとしては薄味だが、その分マイクにはフラットに乗ってくれるのでライブではシェル鳴りをしっかり聞かせてくれる。

残念ながらスナッピーはオリジナルではなかったため、SCIROPPE(シロッペ)というドラムショップACTオリジナルブランドの物に替えてみた。リムショットのスイートスポットがかなりシビアになるが、ナチュラルで味わい深いシェルの響きが感じられる原音重視タイプ。当分はこれで行くと思う。ヘッドはREMOのアンバサダーコーテッドと普通のスネアサイド。アサプラが装着できるようならスイートスポットを広げることも期待できたが…

50年代グレッチ特有のStarlight Sparkleカバリングフィニッシュも個人的には気に入っている。

4.TAMA S.L.P Dynamic Bronze 14x5.5

金欠だった時代、所有していたスネアをごっそり手放し、唯一生き残ったスネア。初めて試奏した時の印象は「グレッチ木胴のような腰の据わったサウンドながら中低域が過剰でない、尚且つ音の立ち上がりが早い」というものだった。それにグレッチUSAフープは堅すぎて叩いているとすぐ耳鳴りするが、こちらはそうはならない。

ブロンズシェルは金属ながら木のシェルを思わせるような響きで、色やマットフィニッシュであることも相まって木のスネアと勘違いされたことも何度かある。

グレッチ木胴の色気こそないものの、多くのスネアを手放すにあたって実用性を優先しこのスネアが生き残ったのだった。それから長きに渡り1台体勢でがんばったわけだが、現在となってはメインの座を張るSolitaireに比べてしまうと臨機応変ぶりにはわずかに及ばない。ブロンズの中域を中心に抜けるサウンドは結局人によって好みが分かれる所であろう。

そんなわけで現在はトップにブラックコーテッドヘッド(AQUARIANのジャックデジョネットモデル)を張り、ミクスチャー系などヘヴィなロック系のバンドでキレの良さを求められる場面にて活躍している。スナッピーはラディックで足りない明るさを確保。スネアサイドをアサプラのクリアタイプにすることで、ハードながらリッチなサウンドに進化した。音抜けも十分。

1台時代はREMOのヴィンテージEコーテッドにCANOPUSのVINTAGE SNARE WIRE(DRY)の組み合わせで、カースケさん的落ち着きと深みを伴ったバックビートが魅力的だった。

TAMAのスネアはテンションボルトのワッシャーを一般的な樹脂製のものにするとかなり緩み易い(その代わり回す時のスムーズさは工業製品としての精度の高さで抜きん出ていることを感じさせた)。そんなことからPearlのSpin Tight Tension Rodsを初めて試したスネアでもあり、ずっと装着されたままだ。サウンド的にはダイキャストフープの堅さを緩和し明るさを補うのにいいが、ヴィンテージEコーテッドとの組み合わせではちょっと元気が足りなくもあった。

途中からヘッドをAQUARIANのJACK DEJONETTEモデルに変えたらパンチが増して元気良くなったが、その代わり深みは失われたり、部屋によっては高域が響き過ぎたり、なかなか難しい所があった。

そういえば途中でシェルにネジ止めされているエンブレムを取り外した。エンブレムが前を向くように配置すると、ストレイナーが膝に当たる。TAMA製品の特徴である。エンブレムを外すことで向きに捉われずに配置できるようになったわけだが(エンブレムの位置をそもそも気にしすぎなのだが…)、シェルに張り付いていたものが外れることよってオープンな鳴りになったのは印象的だった。けどエンブレムがあった状態が程よいミュート具合だったとも思えるし、なんとも微妙である。

今思えば楽器屋で試奏した時の、ボルトもワッシャーもヘッドもスナッピーも全てオリジナルの状態が一番バランス良かったかもしれない。いよいよ出番が少なくなったら一度元に戻してみようか。

5.DW Craviotto Maple 14x5.5

Craviottoブランドとして独立する前の、DWに所属していた時のクラヴィオット氏による単板メイプルスネア。2002年製。プライメイプルスネアがそのまま柔らかい響きになったような、ウッドシェルらしい鳴りが感じられる。

色気のある倍音が豊かという程でもなく、「いい時期の固体はもっといいんだろうなぁ」と想像しないこともないが、それでも余計な倍音のなさ、トーンバランスの良さは優れたスネアと言わしめるには十分と思う。単板メイプルでバランスの良い音を出せるのは未だCraviottoだけなのでは・・・?

実は中古で入手した当初、シェルが凝り固まっており、いくらボルトを締めてもピッチが全く上がらず、自分の基準では使えそうもなかった。一聴して「残念・・・」という印象しかなかったのだが、均等なチューニングをした状態で1年寝かせておいたらかなり良くなり、すぐに現場登用されるに至った。

あまりラウドなアンサンブルでは厳しいが、守備範囲としてはまあまあといったところ。木のスネアの音をちゃんと聴かせられる木のスネアというのは手元に一台持っておきたい思いもあり、頻繁に仕事がなくとも、今後手放すことはなさそう。

パーツはオリジナルだが、dwのTrue Tone Snare Wireはやはりセンシティビティに欠けるので(名前に違わぬフラットなトーンは評価できるが・・・)、少なくともスナッピーは変えることになるかな。いや、ヘッドをアサプラにするのがいいかも。今後さらに大化けしていくことを期待している。

6.YAMAHA YD9000R 14x5.5

後にレコーディングカスタムと名を改める、ヤマハのバーチシェルのフラッグシップモデルだったもの。作られたのは80年代くらい…?楽器屋から中古で購入したものだが、打面側ヘッドがレモのパワーストローク3コーテッドになっているあたり、やはりこのスネアに対するドラマーのイメージはスティーヴ・ガッドなのだろう。(普通中古スネアは店頭に出すにあたりアンバサダーコーテッドが張られる。)

バーチならではの中低域の伸びは凄まじく、コーテッドアンバサダーに換えると輪郭が聞き取れない程だった。そこでスエードアンバサダーに張り替え、スナッピーをCANOPUSのVintage Snare Wire (DRY)にすることでなんとかバランスのいい音にすることができた。邪道といえば邪道かもしれないが、使いやすい音になったのは間違いない。リムショット時の艶のある倍音なんか、なかなかじゃないかと思う。

もともとソウルやR&Bに合うものを一台持っておきたいというのが入手の動機だったのだが、現場で叩くならこのくらいドライで丁度いいくらいに思う。



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