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妖精に滝行、ジュラシックパークからのサバンナ。奇々怪々『ヒッチハイク沖縄一周旅』✨〜やればできるをやってみた!あそび屋だいのGW〜





GWも残すところ2日。

ゴロリと投げ出した身体がひんやりと冷たかった床を徐々に生あたたかくし、身体の輪郭が曖昧になってくる。

ぼんやり見える壁の木目を数えながら、
見上げる冷蔵庫が高くそびえ立つ。


暇なのだ。


これでは…「あそび屋」の名が廃る…

でもなあ…特に面白いこと浮かばないんだよなあ…どうしたもんかなぁ…

地面にへばりついてもんもんとする中、
ふがふがと動きながらTwitterのTLを追った。

そこにフォロワーさんの一言

「夏はヒッチハイクしてみたいな」


……これだ!!!!!

そうだ!ヒッチハイクをしよう!!

あそび屋の血が騒いだ。




そうだ!ヒッチハイクをしよう!


完璧なひらめきによって決まったヒッチハイク旅。

正直やったことがない。
5年前からやるやる詐欺しながら一度もやったことがない。その「自由を手に入れるかのような軽やかさ」に憧れつつも、何かと理由をつけてやれてなかった。

でも今回はなんか、やらないといけない。


とはいえ、はじめてのヒッチハイク、、

まず何を持っていくかもわからなかった。
とりあえず荷物は少なめに。



そもそもヒッチハイクって何したらいいんだ??

えーと、ダンボールとマッキーがあれば移動はできるとして、車の中とか気まずくない??ボドゲとか持ってく?
テントは嵩張るし…。野宿だなあ…

考えること多すぎる。考えてもしょうがない気もしてきた。
調べても曖昧な情報しか出てこないし。

…やっぱり「やる」しか解決策は無さそうだな。


ひらめきと実行には大きな隔たりがある。
あんなにヒッチハイクという言葉を見たときはワクワクしたのに、いざ現実味を帯びてくると不安不断不動のオンパレード。
自分で決めたことなのにぶつくさ言い始める。

でも、やりたいんだよな。

そして今回は、やらないといけないな。

うん、やろう。




そして、翌朝。

あそび屋だい人生初のヒッチハイク旅が始まった。





全然とまんない


当日。

予定時刻より遅れること5時間。

派手に寝過ごした。

昼の16時(昼?)から国道58号線にでて、

人生初のヒッチハイク旅がはじまった。


さて、、、、、


開始から2時間、、、、


全然とまんないんだが!?

もー全然とまんねえ!

たぶん顔が引きつってるとか時間帯とかそもそも行き先が雑とか色々あるかもしれないけど、全然とまんねえ!!

くそう…

もう少しで日が暮れる…なんでこんなに日が暮れるの早いんだ!!(寝過ごしたから)

そこから手を変え品を変え道を変え、
ダンボールをパタパタしてみたり引きつった笑顔を見せたり念を飛ばしてみたり色々やった2時間。


通り過ぎる車たち。
容赦なく太陽は沈み、ダンボールも見えなくなってくる。

家から2キロも離れていないこんな場所で…野宿はやだ。帰りたい…

そう諦めかけたそのとき…


「おーい!君、乗せてくよー!」


なんか後ろの方で声がした。
女の人がブンブン手を振っている。さっき通り過ぎた車がそこに停まっていた。


、、、、?!??!

一回うしろを振り返る。

…僕に話しかけてる??なんで??

手元のダンボールを見る。


……?

……!!!??

…!!!!!!

「いいんすかあああ!??」

ようやく現状を理解して駆け出す僕。

人生ではじめて、ヒッチハイクが成功した。




妖精が住む家


何度か乗せてもらうことに成功し、
いつの間にか沖縄中北部の名護に辿り着いていた。

乗せてくれる人たちは優しくて、そわそわもごもごしてる僕にも語りかけてくれる。ヒッチハイクなんて興味の塊だからか意外と会話は弾んだ。

そういえば、知り合いに英語も分からないままヒッチハイクだけでオーストラリア、カナダ、アメリカを縦断した人がいた。
車中で意思疎通しながら言葉も
覚えたそうだ。

共通の話題と相手への関心があれば、言葉が通じなくても場は持つのかもしれない。

「アニメは世界を繋ぐ!」と同じものを感じる。



ある車が停まってくれた。

お姉さんが窓から陽気に声をかけてくれる。

「そこのにいにい!ヒッチハイクしてるの!?

北ってどこよ?ウケる!乗ってきな!」

感謝を伝える間もなくギャル感に圧倒され車に乗った。

「え?野宿すんの?やば!

うちに泊まってく?これから夕飯だしさ!

ね!アカさん!」

隣の運転手さんはアカさんというらしい。仕事のパートナーとのこと。彼は頷く。

泊まることになった。

「子どもたちも喜ぶしさ!」

お子さんいるんですか…!
大丈夫なんです?迷惑じゃないですか?

「大丈夫よー!この前もヒッチハイクの外人さん泊めたし、みんな慣れてるよ」

この前も泊めたのか。すごいな…。

「あと妖精さんもいるしね」

おっと、、え?妖精さん?

「うん!妖精さん!

妖精さんも住んでるけど気にしないでね!」

隣のアカさんも静かに頷く。

…雲行きが怪しくなってきた。



彼女、ナトリさん一家の自宅に着いた。

一軒家のようで広い庭もあり、そこに車を停める。

外は暗く家の全貌は分からないが、
僕の頭の中は子どもたちが走りまわり、小さな妖精さんがうふふと飛び回る妄想に駆られていた。


「ただいまー!みんなご飯の準備してー!

あとみんなお客さん来たよー!」

ざっくりと紹介するやいなや、ナトリさんは早々とキッチンに消えていった。

…どうしたらいいんだ。

高校生と中学生くらいの女の子がふたり。小学低学年くらいの男の子が一人。

女の子たちは慣れてるからか特に反応は示さず、男の子だけが目をキラキラさせている。アカさんはスッと座ってパソコンをカタカタし始めた。

…どうしたらいいんだ。

よくわからないまま立ってると、
男の子が部屋を案内する!と手を引いてくれた。マジ助かる。ありがとうジョージくん。

夕飯になり、なんとなく手伝いをすることで手持ち無沙汰を回避できた。

今のところなんの不思議もない明るいご家族だ。妖精のヨの字も見えない。あれかな?夜の枕元にキラキラと出てくるとか?

そんな想像をしながら、作ってもらった餃子を頬張る。
旨い。すごく美味しい。


食べながら、ナトリさんやジョージくん、アカさんたちと話が盛り上がる。(女の子たちは自室にいた。)

「美味しいなあ。これ本当に美味しいですね!」

「そうでしょうーー?ありがとう!おかわりもあるからねえ」

「はい!いただきます!」

僕がニコニコしてご飯をかき込む。


その目の前を、スーーと誰かが横切った。

四方に広がったアフロの頭にメガネをかけた大柄のお兄さん。
Tシャツとパンツ姿のまま、スーと目の前を通り過ぎて、僕の斜め前に座った。

おもむろにご飯を食べ始める。

みんなは全く反応もなく、それぞれで話して笑っている。

状況がうまく把握できず凝視してると、彼も僕を見る。が、また無言で食べ始める。


…え?見えてるの僕だけ??


戸惑いながら、助けを求めるようにナトリさんに視線を送る。助けて

ようやくナトリさんが僕に気づいた。
ん?どした?と、僕の視線をそのまま辿る。

「あ、!そうそう!こちら大西さん!

妖精さんだよー!」

なんだあああああああああああ

実在してたああああああああ

良かったああああああああ


「あ、ドモ、大西です。」

面倒くさそうにペコッとする大西さん。

妖精さん迫力ありすぎたよ…

もはや新手のホラーだよ…


「大西さんは前からずっといるんだよー!」

ジョージくんが説明してくれる。

どうやら、5年ほど前からナトリ家で居候してるらしい。理由は特にないとのこと。謎すぎる。


「大西さん、あとでゲームしよーー!」

ジョージくんが大西さんの袖を引っ張る。

「うるせー!いま飯くってんだよ!

そもそも俺は子供が嫌いだ!」

…ひでえ…理不尽すぎる。

ナトリさんは特に気にする様子もなく、ジョージくんも、ちぇ!という感じで他の話をし始める。

これが日常なのか…

 

大人3人、子供3人、拾われたヒッチハイカーが一緒にご飯を食べ、
皆それぞれがそれのやりたいことを自由にやる不思議な夜を過ごした。

僕はひたすらジョージくんと
ジョージくん考案の謎ゲームをやっていた。

大西さんは意外とお喋りで、漫画ワンピースをひたすらディスって僕とナトリさんのブーイングを食らっていたが、本人は気にする様子もなく喋り続けた。

アカさんはひたすらパソコンをカタカタしつつ、たまにジョージくんや女の子たちの相手をするという大人の対応をしていた。

居心地が良すぎて
もはや正月の親戚が集まる実家だった。




いま思い出すと、少し不思議なのだけど
ナトリ家の子どもたちはどこか自立してるというか、親の意見を絶対視してないし飄々と自分の世界を持っているように見えた。同時に、社会性も高い気がした。

恐らくだけど、ナトリさん以外に人の出入りがよくあって、「親以外の大人」との関わりが日常的にあるから、親を絶対視してないのかなと。心の拠り所や逃げ場がたくさんあるのかもしれない。

女の子たちも当然のようにアカさんに頼み事をしていたし、大西さんのちょっと偏った意見もはいはい、とみんないなしていた。

ナトリさんに至っては母親というよりギャルだし、奥の部屋のフィギュアやハリポタ道具や漫画、ほぼすべてナトリさんの趣味で占領していた。

色んな大人がいるなかでジョージくんたちは育って、色んな考え方や世界があるんだなと学んだのかもしれない。

大西さんも面倒くさそうに「育児なんてやんねー!」って感じだったけど、
その存在だけでナトリさんは助かってるのかもしれない。ジョージくんたちは受け取っているのかもしれないなと。

本当に面白いご家族だった。



最北端はジュラシックパーク


車をひたすら乗り継いで連れてってもらうこと2日目、

ついに…ついに沖縄の「最北端」に辿り着いた。


来てしまった…沖縄最北端「辺戸岬」

車ではよく来ていたけれど、いま僕の手にあるのは「北」と書かれたダンボールのみ。

こんなもので…ここまで来れたのか。

すごい…誇らしい。


そして、もう僕一人ではマジで帰れない。

先程送ってくれたお兄さんは、

「俺が折り返し送るのもいいけど、

ヒッチハイクは人との出会いが大切だよね!じゃ!」

と爽やかに帰っていった。

全くその通りです…。

塩を含んだ北の冷たい風に吹かれる。


沖縄最北端である辺戸岬は、その名の通り海に面する岬だった。
断崖絶壁。崖の下には恐ろしい波のうねりが岩肌にぶつかる轟音。
風で飛ばされてくる水しぶき。

遠くに見えるやんばるの山々は鬱蒼と茂って、人間の上陸を拒むかのような崖、波、森。


ジュラシックパークの世界だった。


楽しもう!というような気分になれない圧倒的な大自然の脅威。

だいたいここに来るときはいつも雲が重く曇ってる。天候まで支配してるのか。

それでもにっこり写真を撮った。


よく来たのは、大学1、2年生の頃。

体力も気力も有り余った男子共と一緒に、
男子にたまにある万能感、俗にいう「イキり盛り」にやって来ては、何かを打ち砕かれてすごすごと帰った思い出の数々。

彼女がいないクリスマスぼっちを乗り越えるために「ファッキンクリぼっち会」と称して、真夜中4時間かけて車で走ってきたり、

課題が終わらないときはテントにパソコンを持ち込んで「辺戸岬籠もり」を実施し、
「あそこには虚無しかなかった。」と寂しそうな顔で課題を終わらせてきた友人。

明かりも何もない崖の上で、
テントだけがほのかに光ってる写真には思わず肩が震えた。

人間ができることはちっぽけだ…と思わされる大自然の岬。

それでもみんなに助けられながら、
ダンボールとカバンひとつで、

僕はついに沖縄最北端の地に辿り着いたのだった…!



さて、写真も撮ったし南に戻るか。




サーファーとバーテンダーに酒を奢られ飯を奢られ部屋を支給されヒッチハイクとは


グラスにアルコールが注がれる。


ヒッチハイクを遠く昔のように語りながら、バーテンをしてる目の前の女の子に自慢気に話す。

「ヒッチハイクをしやすい場所があって〜、車が停まれる路肩があるといいんだよね。」

え!なるほどー!すごーい!

高校生の女の子が顔を輝かす。
ジントニックと果実酒のようなものを作りながら先を促してくれる。

「いい路肩でやれば、そのぶん車が停まりやすいんだよね。ヒッチハイクやるときはいい路肩を探してみな。」

えー!やってみますー!おもしろいー!

目をキラキラさせてくれる。

そういえば私も、そういう事やってみたくて!でも進路が心配で…!

ちょっと顔を伏せて相談をしてくる。

「ふむふむ。話を聞こう…」

実は……

彼女が言葉を選びながら話し出す。



…この子バーテンの資質ありすぎでは??

客商売うますぎるやろ
思わず聞き入っちゃったし、なんか得意げに話しちゃったよ。

なんだよ「いい路肩」って
絶対キラキラされるとこじゃないだろ。

流れが完璧すぎるわ。

無自覚なのかどうかは知らないけれど、
彼女の資質に末恐ろしさを感じた。

それ以前になんで高校生がお酒注いでるんだ…大丈夫なのか??

ひとりツッコミのおかげでようやく酔いが覚める。
僕はここで何してる?どうしてこうなった?



「ういー!やってるー?」

バーの入り口から陽気なお兄さんの声がした。
そうだこの人だ。サーファーの兄さん。

この人に拾ってもらったんだった。。



ときは僕が辺戸岬の虚無にさらされ
ふらふらと野宿場所を探している頃。

「え?なにしてんのー?ヒッチハイク??

やば!しょーがないなあ!のってく?」

のせてくれる人あるあるの独特の軽さと言うかギャルみを含んだ声で、お兄さんが声をかけてきてくれた。
お兄さんと言っても30〜40代だとは思う。日焼けしてにこやかだったから、雰囲気は若々しい。

お兄さんはサーファーで、
先程の辺戸岬の崖の下でサーフィンしてた帰りとのこと。

……あそこで?なんで生きてるの!?

いま書きながら思わずツッコんでしまうぐらいまだよく理解できない。

やっぱりなんで生きてるんだ…


そんなサーファーさんと軽い調子で地元の商店街を案内するよ〜と言われ、
沖縄らしい一軒の家の前に停まった。

「ここ、友達の奥さんの実家なんだよねー!」

そう言って彼は、おーい!と明るい窓の側にいた女性に声をかけた。

「この子、ヒッチハイクしてたからさー!拾ったー!」

そうなのー?と(友達の)奥さんが返す。
そして、

「うちで食べてく〜?ちょうど夕飯だしさー!」

そうはならんやろ…。

気づけば、
拾ってくれたサーファーさんの友人さんの奥さんの実家の祖父母の方々および新生児さんと一緒に夕飯を頂くことになった。

混乱しながらもその優しさにじんわりくる。
お子さん可愛すぎる。
飯もうますぎる。ずっとうまいうまい言って食べてた。
よく染みた大根の煮付けと牛すじが最高だった。あとポテサラと米が旨い。。

心ゆくまで食べてしまった。

ごちそうさまでした!!

 


友人さんの奥さんの実家から出るや否や、

「俺の家くる前にその友人がやってる居酒屋に寄っていこーかー!」

なぜかすでに泊めてくれる前提に驚きつつ、頷いて車にのる。

サーファーさんの友人ってことは、先程の奥さんの夫さん…ってことだよね…?
子供ちゃんのお父さん…?
ダメだ、こんがらがってきた。

「おー!やってるー?この子、さっきLINEしたヒッチハイクで拾った子〜!」

すでに連絡済みだったようで、
オーナーさんがニコやかに迎えてくれる。
ファンキーだしめちゃくちゃいかつい。
笑顔とのギャップが凄い。

「おめえ度胸あるなあ!

よくやるなあ!ガッハッハ」

あ、、、たぶんいい人や。


中を案内されると、
もう大人の世界だった。

ポイントで照らされるきらびやかなライトにワインセラーに並ぶ瓶が光る。
無駄なゴテゴテした装飾はないのに、カウンターに並んでるお酒には手書きの可愛らしいメモが貼られている。
一目でセンスが溢れてるとわかるお店だ。


これが元共同売店だったというから驚きだ。3年前に買い取って改装したらしい。
すごい。シンプルにカッコいい。



「今日はここで泊まって行きなよー!

酒も俺からの奢りだ!ほら!好きに頼め!」

なぜか奢られた上にオーナーさんからも宿の打診。
この町は人を泊めることにいささかの躊躇もないのだろうか。防犯意識は…

さすがに少し身構えてしまったけれど、
従業員の子たちがオーナーさんにツッコんだりしてる様子を見て、少し安心した。

「昨日もバイクで旅してるやつ泊めたんだよねえ〜だから部屋散らかってるけど」

そういう場所なんだな…。

なんだかおかしくて笑ってしまった。


お酒を奢られ、バーテンの子と仲良くなり、ついでに賄いのおでんもいただき、居心地良すぎて気付いたら先程のシーンだ。

もはや千と◯尋みたいな世界だな。

僕は人間として帰れるのか…?

酔いの回った頭でうつろうつろとそんな事を考えながら、その日はグラスをあおった。


結局気付いたらスマホを手にしながら部屋で寝てたし、

お客さんもみんな帰ってて、空になった賄いの容器とお菓子が机に残っていた。

楽しく飲んで楽しくTwitterやって楽しく寝たらしい。


翌朝、僕が起きたのは夕方の16時だった。

「え!?まだいたの!??」

出勤したオーナーさんに驚かれながら歯を磨き、申し訳無さとありがたさで微妙に引きつった笑顔の写真をパシャリ。


今度は、ちゃんとお金を落としにまた来ます!!

本当にお世話になりました!

重ね重ねお礼をしたあと、お店をあとにした。

実家から出たかのような余韻に後ろ髪を引かれながら、いい路肩のある道に立つ。

僕はまた「徒歩では到底帰れない北の奥地からヒッチハイク」という現実に振り戻されていった。




滝行に連行される


滝行に連行された。



寝ていた公園に車が停まる。
顔見知りの後輩たちがだいさーんと声をかけてくれる。
滝に行きますよ!

僕も声をかけつつ乗り込む。
後輩たちは僕が公園で寝てた理由も、ハイボール片手にサッカーしてた理由も特に聞かずに、いい天気ですね〜!と話しはじめた。さすが僕と付き合ってきた彼らだ。面構えが違う。

でも後ろの彼女は違った。

「あ、はじめまして、1年の〇〇です。」

今年からサークルに入った新入生らしい。
さっきの後輩たちもなんだけど、僕は沖縄に帰ってくると、母校の大学のサークルにたまに顔を出して遊びに誘ったりしてる。

理由はシンプルに「同年代の友達がもういない」から。みんな僕だけを残して本州に飛び、就職してしまったのです。

それにしても、あんな奴らが…この社会のどこかに…潜んでるのか…
考えるだけでも恐ろしい。
大学の頃のあれやこれやを思い出す。

それに比べて、このサークルのメンバーはとても穏やかでいい子たち。

1年生の子もとてもいい子そう。


その彼女が、怪訝な、戸惑った様子で僕を見る。

「あの…、公園で寝てたんですか?」

え?うん。ヒッチハイクしてて。

「ヒッチハイク?!…え??」

さらに困惑される。
前の2人があーあ、みたいな顔をする。


あー、、確かにこの後輩ちゃんからしたら、

夢の大学新生活に心躍らせて、
サークルから滝に行こう!と誘われて楽しみで車に乗ったのに、

公園で寝てるらしい謎の先輩を迎えに行くと言われ、あげくにサングラス(僕のスマホ用メガネ)を掛けた兄ちゃんが一人ハイボール片手にサッカーしてて、
それが当然のように車に入ってきたら怖すぎる
…かも?

確かに少し戸惑うな。

ひとりふむふむする。
後ろの後輩ちゃんはもはや顔を伏せている。

「そういえば、この前、部室に入ったときも

…なんか見たんですよね私…。」

亡霊かなにかを見たかのようなトーンで話し始める後輩ちゃん。

「部室に行ったら…その…

なんか…先輩?の方が、、」

困惑した様子の後輩ちゃん曰く、

その日、部室が開いてるとのことで軽い気持ちで顔を出しに行くと、
ひとり部室で何か分からない緑色の草?をボコボコ茹でている先輩がいたらしい。

 
「それで私…急いで帰ってしまったんですけど…

あれってなんだったのかな…?って、

アハハ…」




僕です。


あらぬ誤解を回避するべく、

「その節は大変失礼しました!

このサークルは(昔はともかく)今は健全です!安心して!」

経緯を早口で説明したあとに、驚かせてすまない!と謝った。前のふたりはあーあ、と腹抱えてる。

え?という顔とともに彼女は、

「あー!そうだったんですね!繋がりました!」

少し安心したように初めて笑顔を見せてくれた。何が繋がったんだ?


それにしても危ない。
マジで怪しい闇サークルにしてしまうところだった。やっぱりOBが勝手に部室は使っちゃダメだな。
たまに現れて噂が立つところはもはや亡霊と何ら変わりないかもしれない…


そんなこんなで
予期せぬ伏線回収をした後は意外と仲良くやれまして、

片道3時間掛けてゴーパチ(国道58号線)を北部に向けて車で走る。わーここ昨日通ったなー


昨夜、ひとり息絶え絶えに歩いた景色。

すごい速さで過ぎ去るのを眺めながら、

ここ!!

沖縄北部に位置する

県民名所の一つ「ター滝」に辿り着きました!!



雨量が多い沖縄には滝がいくつも点在している。
自然豊かな森に濾されて出る湧水は透明そのものだ。澄んだ水が浅い沢となって森の中を流れている。

特に北部は滝の宝庫。
僕が山籠りがてら道をそれてその辺から森に入ったら、大抵滝に行く手を阻まれる。

比地大滝という舗装された道のある滝もあるけれど、
このター滝はその道のりも自然そのもので足元が常にアグレッシブで面白い。

岩を登ったり、水の中を歩いたり、飛び込めたり。
途中で水切りで遊んだりしながら、僕たちはキャイキャイと滝へ向かった。




遠くから水の音が聞こえてくる。
徐々に音が大きくなってくる。

これは…!!

もしかして…!!



でたーーーー!!!!

ター滝だーーー!!


轟音を立てて大量の水が落ちる音。
滝に開けた吹き抜けの空から、水しぶきが風に乗って顔に当たる。
真水だからサラサラで気持ちがいい。

空気が澄んでいるとはこのことだ。

みんな我先にと滝に打たれに行く。

ちなみに、もう少し大きな滝なら打たれた衝撃で滝つぼに落ちて、渦に巻き込まれ、上下前後左右の感覚が完全に消えて簡単に溺れ〇ぬから気をつけてね、みんな!

と心のなかで呟いて僕も水にどぼーん!

気持ちいいー!

水が身体中を包み込んで冷たく冷やしてくれる。生き返るなあ。
疲れが一気に吹き飛ぶ。


滝に打たれてハイになった僕たちは、ロープを使って飛び込んだり、泳いだり、飛び込んだり、飛び込んだり。一度濡れてしまえば帰りは水を気にせず川の中をジャブジャブ。木に登ってはキャッキャ。


爽快な気分と心地よい疲れと共に、僕らは森をあとにした。

最高だったなあ



そして、僕は

元いた公園に降ろされた。

滝の疲れがどっと襲ってくるのを感じた。




誘惑と逡巡


野宿した公園は、中部にあった。


いま西海岸に横断できれば実家だ。
誘惑に駆られる。家の柔らかなベッド。美味しいご飯。いつでも淹れられるコーヒーにココア。お金を下ろせるクレジットカード。

恋しい。あの空間が恋しい。
いま目の前に広がるのは延々と続く道路。目を逸らして過ぎ去る車。硬いアスファルト。公園で入れた水。現金653円。

ああ、帰りたい。

ヒッチハイクしたかったのは達成したし、なかなか面白い出来事もたくさんあったし、もういいかな…
これまで以上インパクトのあることなんてそうそうないっしょ…

アフロの大柄な妖精…

虚無ジュラシックパーク…

千と〇尋の商店街…

滝行と愉快な仲間たち…

次々に思い出される濃い4日間。
途中で素潜り友達ができたり、大学生に怪談話を無茶振りされたり、遺跡発掘系公務員さんに遭遇したりもした。

楽しかったなあ。

もう十分面白かったし、撮れ高も取れたやろ…。

「撮れ高」とか言っちゃうあたり、完全に帰る理由を探してる。

本気で撮れ高を取りに行くなら、逆にこのまま「南部から無人島まで含めたサバイバル沖縄一周」が始まる。

イカダでも作って難破して無人島でめそめそ火を起こすまでがワンセットだ。

でも、そんなことを望んでるわけじゃない。

今回の目的は、長年の夢を僕も楽しんで実行して「この人が楽しんでるなら私もやってみたい!」と思ってもらうこと。

ロビンソンクルーソー系YouTuberがやりたいわけじゃない。
…やってみたいこともないこともないけど…ゴニョゴニョ


とにかく!ここで帰ってしまうのはあまりにも半端だ!どこにも転がらない!面白くないし心残りがある!

そう!心残りができる!!

それだけはやだ!!!

たとえこのあと車が停まってくれなくて何もなかったとしても、ちゃんと一周したい!!
やってやったぞ!と胸を張って帰ってきたい!

それだ!やるぞおおおお!


その背後で車が停まった。

キュルキュルと窓が開いて、見るからに陽気なお兄さんが顔を出す。ピアスを付けて丸刈りの笑顔に、車内からはパンクロックがガンガン流れてる。

「面白いことやってんね!ニイチャン!

乗っていきなよ!」

、、、一番面白そうな人きたな。

さっそく何事もなさそうな展開は閉ざされた。




マ〇ファナお兄さん


お兄さんは音楽が好きだった。

独特なビートからレゲエの曲が流れ出す。

僕は音楽は何もわからないので、それっぽく体を揺らす。お兄さんは常に揺れてる感じもする。

「ヒッチハイクなんて面白いことやってんね!いいね!!」

お兄さんはニコニコしながらいろいろ話題を振ってくれる。基本的に僕が話す内容をほとんど否定もせず聞いてくれるので、すごく寛容な人なのかもしれない。

カナダで難民してた話やヒッチハイクの話まで面白がってきいてくれた。

「ところでお兄さんは何されてるんですか?」

僕ばっか話すのも何なので、振ってみる。

「オレ?オレはねー、土木業とかやってるー!今日は仕事帰り。」

ふむふむ、しっかりしている人だ。

土木業で、道を作ったり落石を防ぐ仕事をしてるらしい。偉すぎる。社会貢献人だ。

「ご趣味とかあるんです?」

「趣味かあー!趣味はいろいろあるけど、Tシャツとか作って販売してるかな!

自分でデザインも描いて作ってる。

そういえばさっき絵が好きって言ってたよね!オレもオレも! 」

おお!同志だ!

その上、デザインしたTシャツをECサイトで売っていると言うから驚きだ。集客はインスタでやって、たまにライブやイベントに顔を出して販売もしてるとのこと。
最先端だ!!すげえー!

「めちゃくちゃ面白いですね!

Tシャツはどんなデザインなんですか?」

お兄さんが楽しげに話しだす。

「オレ、マリファナ大好きなんだよね!

だからマリファナをカッコよく描いたデザインにしてんだ!」

お…と、まあ、マリファナデザインは普通にあるしな。アングラなデザインTシャツとかでよく見かける感じかな?

「マ〇ファナ好きなんですね!」

「おう!めっちゃ好き!」

ふむふむ。
ちょっと安全圏で話を広げてみよう。

「日本だったら、あれありますよね!

合法のCB…?S?みたいなものありますよね!」

「あー!CBDね!うんうん、あれも好き!」

あれ「も」好き???
も、ってなんだ?

お兄さんは気づいてないのか陽気に運転している。
日に焼けた肌とレゲエの曲が異国に来たような錯覚に襲われる。

勘違いかな。
CBD以外にもいろいろあった気もするし。聞き違いかも。

もうちょいだけ。

「そういえば僕カナダに行ったとき、
あっちではマ〇ファナが合法なんですよ。

知人曰く、めちゃくちゃ安く市販されてるらしいですよ。」

お兄さんさんもうんうん頷いている。

「そうらしいね!日本だと末端の〇〇グラムでも〇〇〇〜円くらいが相場かなあ。

そんで質もそんなに〜〜…」


お兄さん、お口チャックです。

うん、これ以上は聞かないほうがいいな。
確証を得ない内に忘れよう。

まだマシなヤクザの話にすり替えます。

そこからとても自然な流れで沖縄のヤクザの話に持っていき、法律の範囲内の話で盛り上がった。ヤクザ怖いよねえ〜うふふー
僕は何も聞いてないぞ。


まあでも沖繩ではよく聞く話(※)ではあるので、衝撃!ってほどではないのだけど、
初対面には言わない方がいいと思います。
気をつけましょう。

(※沖縄ワンポイントアドバイス!
→沖繩は離島で隠しやすいこともあり
よく栽培地にされてたりするんだ!たまに自生もしているぞ!)


ということも色々あったけれど、
いくつか共通の話題があったことで車内は思いのほか盛り上がった。

お兄さんが気に入ってくれて、
僕の目的地である沖繩最南端の岬まで乗せてってくれることになりました!ありがたい!


ふたりでレゲエを口ずさみながら、
南部特有のサトウキビ畑に囲まれた一本道を風を感じながら走り抜けていく。

純粋にたのしい。

車を走らせること1時間。

ふと、なあ知ってる?とお兄さんが聞いてきた。

「知ってる?

レゲエには “ガイダンス”って言葉があるんだよ!導きって意味とか、何かの前触れって意味なんだけどよ。

…これがまさにそうじゃないか?」

最南端を目指してたはずの僕らの車。
その目の前には、サバンナのような草原が広がっていた。

 

「うおおおおお!!!!」

「うああああああああ!!」

車がガシャンガシャン。ガコンガコン。街中では聞けない音が響く。

Googleマップで示されてる道がどう見ても道じゃない。そんな道幅ない。というか舗装すらされてない。
周りには湿地が広がり、砂利道には水溜りが乱立し、アフリカの子どもたちが走ってきそうな、そのへんからヌーが歩いてそうな場所を、ふたり軽の車でガタガタガシャンガシャン!

車体が揺れる。傾く。一瞬飛ぶ。

のどかな自然に不釣り合いな鉄の塊が走り抜ける。
気を抜けばハンドルを取られて湿地に突っ込んでしまう。

お兄さんが必死でハンドルを握る。


ーーーーー草原を抜けた!!

と思うのもつかの間、
手つかずの森の中に突っ込む。
申し訳程度に踏み固められた道が先へ続く。

容赦のない自然道。
ツタが窓にガンガン当たる。鳥がさえずる。車体が跳ねる。石が砕け散る。

「ここ絶対道じゃないだろ!

誰も使ってないだろ!!」

「いや、でもっGoogleがっ!ここを示してるんですよ!」

「っヤバいだろ!最南端ハードすぎんか!??」

「うわわわわわわわわわわわ」

「あわわわわわわわわわわ」




光が見える。

不意に木々のトンネルが途切れた。一瞬視界が真っ白になる。

「…でたああああ!!」

まっ平らな道。立ち並ぶ電柱。
見晴らしのいい整備された畑。景色。

文明だあああ!!!!

ふたりで安堵の雄叫びを上げながら、
目の前の雄大な平らな道に感謝した。


これがインフラの素晴らしさか…

お兄さんの仕事…尊いっす…。

尊敬の眼差しをお兄さんに向ける。

マ〇ファナお兄さんとか言ってすみません。お兄さんカッケェっす。


こうして僕らはついに、

沖縄最南端「喜屋武岬」に辿り着いた。




南は南でいろいろありまして…沖縄の霊的あれこれ


「喜屋武岬」はこれまた険しい崖の上に立っていた。

灯台があることから、見晴らしのいい高台がベストなのかもしれない。

崖の下には辺戸岬でも見た、唸りを上げる渦。岩に当たって砕ける波。
そしえ風に吹き上げられ飛ばされてくる水しぶき。


常に風の音が耳元で大きく響いている。

さすがに…あのサーファーのお兄さん
こっちには来てないだろうな…?

辺戸岬の波を思い出して、
「いや、ありえる…」とあの笑顔に冷や汗が出た。

そして喜屋武岬は、
断崖絶壁ということもあり「自殺の名所」だった。かつ「沖縄戦の戦地」でもある。

見える人が行くとたいてい気分が悪くなるらしい。何が、とは言わないけど。


沖縄南部にはそういった場所が多い。
沖縄戦は南部から攻められて、中部へ逃げ、北部まで追い詰められて終結した。

そのため、南部は軒並み焼かれて地上戦だったこともあり、そのほとんどの地域が戦場跡だ。無理に開発しようものなら色んなことが起きる。

北部はどうかというと、北部は北部でユタの修行場がある。私の話も聞いて、と色んなものが引き寄せられる。

僕自身も沖縄では何度かそういう体験はしたし、僕の友達も一人1つは体験談がある。持ちネタぐらいの感覚である。見える友だちなんて「行けないとこリスト」がある。

僕の先輩が通っていた南部の高校寮では、もはや代々受け継がれているそういった部屋があり、引き継ぎの際に「こういう事あるから宜しくね!」と言われるという。
実際のところ毎夜枕元にでてきてはイタズラされ、ブチギレた先輩は枕の取り合いをしていたらしい。


沖繩で「いる」と言ったらいるのだ。
いらっしゃる。ガチなので、みんなそこは配慮している。


さて、日も沈んできた。

僕もさすがにここでは野宿はしたくない。

ヒッチハイクができそうな大通りに出るため、夕日を横目で見ながら早々と歩き始めた。


ちなみに、土木業のカッコいいお兄さんとは、最南端に着くなり一緒に写真を撮り、名残惜しくも別れた。
家に奥さんと子どもたちが待っているらしい。めちゃくちゃ社会してるじゃん…何だよすごい。。

なんだかんだ最後まで陽気なお兄さんだったし、サバンナでも楽しんでくれたし、素敵な人だった。

電話越しで奥さんにどやされてるのがちょっと面白かった。

お兄さん連れ回してごめん笑

最後まで言葉の端々がゆらゆら揺れてたけど…笑

またどこかイベントかライブで会おうね!


後で気づいたことなのだけど、
実はGoogleが示した道はもう一本あった。

舗装されためちゃくちゃ綺麗な道。
別に狙ったわけじゃないけど、究極の2択で地獄のデスロードを引いてしまったわけだ。

お兄さんとふたりで
ちゃんとした道あるじゃねーか!!
とツッコみながら復路はそこから帰った。

僕が歩いているのもその道。

なんて歩きやすい平らな道!!

よく進む体重移動!!

見晴らしのいい景色!!

安堵感に包まれる心!!!

お兄さんと分かれてひとり寂しさはあるものの、インフラを整備してくれた人たちに思いを馳せ、繋がりを感じた。

(疲れてそれも保って1時間だったけど…)

僕は、西日が差すなか歩き続け
最後の大通りゴーパチに出た。




帰還 そして新生あそび屋だいの誕生



実は大好きな人と別れた。 

僕の中では一番長く付き合ったひとで、
長所短所とかどうでもよく、もう存在が大好きでその人しかいないと思っていた。

でも、僕が自分のことでいっぱいいっぱいになって、自棄になり突き放してしまった。

ああしておけばこうしておけばなんて死ぬほど考えたけれど、そんな酔狂な世界は現れてはくれない。

ヒッチハイクしてる途中も、一人の時間はずっと考えていた。いくら考えても、そこにあるのは伝える相手のいないどうしようもなく続く独りの時間だけだった。

そもそもヒッチハイクを始めたのも、 
大切な人を失って遊ぶ気力もやる気も分からなくなって、
これまで必死で追い求めていた場所の意味を見いだせなくなったからだ。

僕は「遊んで楽しい!」と思える人間ではなく、
遊んで「楽しいね!」と伝える相手を見るのが好きだったのだと思い出した。 


それでも、僕は「あそび屋だい」だ。

このまま朽ちていくのも悪くないけれど、
僕が彼女からもらったものたちを捨てるような真似はしたくない。
いつまでも何もせずに、腐っていくのが嫌だった。

だから、飛び出した。

GWなんていつもなら遊び散らかしてる。
昨年はふたりで森の中で遊んでいた。
Googleフォトがこれみよがしに「一年前の今日」をおすすめしてくる。その写真すら未だ消せない。

どうしたらいいか分からなくて、でも彼女のおかげで生まれた「今の自分」も大切にしたくて、飛び出した。

あそび屋だいとして、動いた。



僕は1人、フラフラと沖縄南部の大通りを歩いている。

出発地である浦添に向かって、残り20キロは徒歩で向かうことにした。

畑しかない南部の夜中だったこともあって、
車も走ってないし、単純に夜風に吹かれたい気分だった。

ここまで楽しく面白おかしく書いてきたけれど、ヒッチハイクは「孤独」との戦いでもある。
車がつかまらない間は不安と寂しさと無限にも思える時間がそこにある。

僕はまだ1人でも大丈夫な方。
それでも話す相手もなくひとり、大多数の車からは無視され、とぼとぼと歩くのは堪えるものがあった。

でも、それもまた人生って感じだなと。

孤独で真っ暗な道の先は怖くて、進むのも躊躇うときもあった。
残り20キロの道のりは長く、体力の限界もあって、いつもは感じない不安が押し寄せてきた。

でも、それも暫く経つと落ち着いてきて、街の明かりが見えてくると安心した。

悔いたこともごちゃごちゃ考えて止まらなくなったこともあったけど、フラッと入った牛丼屋でご飯を食べて、お水を飲んだら少し元気になった。

生きていくってこんな感じなんだろうな。

正直、僕も全然先行きも見通しつかないし、いつも元気ハッピーなんてことはないけれど、それでもこうやって自分で動いて、前に進もうとしている。今日もなんだかんだ自分で決めて歩いてご飯も食べて沢山考えた。

彼女のことも悔やんでも悔やみきれないけど、それでも進むしかないし、進むことが唯一の風化させない僕なりの答えだと思っている。

足が重くなってきたら休憩して、怖かったら明かりへ歩いて、お腹が減ったらご飯を食べた。

そして少しずつ、でも確実にゴールに近づいていた。

それでいいんだな。これでいいんだ。




道路の標識が「残り5キロ」と示している。

ぼんやりと空が薄く白んできた。

満身創痍の疲弊しきった身体にも朝日は眩しく照らす。

「北部まで70キロ!」と書いてあった標識を見てヒッチハイクをしてたからか、
感覚がバグって「浦添まで20キロ!」と見ても、ま、行けるやろ!と軽い気持ちで歩きだしてしまった。

なんだか夜風にあたりたい気分〜
程度で歩き始めてはいけない距離だった。

この辺も僕らしいっちゃ僕らしい。
失恋で辛いから思い切ってヒッチハイク!なんてのも、よく考えたらよくわからない。

でも、おかげで少し元気になったよ。

未だよくわからない自分だけど、自分を助けてくれてるのも自分だと分かっている。

だから僕は僕のことも大切にしたい。  


もう見覚えのある道だ。

僕が中学高校と通い慣れた道。

朝練だろうか。部活着姿の高校生たちが足早に歩いていく。

高校生の自分が
自転車に乗って横切っていく姿を見た気がした。

あの頃の自分には今の自分を想像できただろうか。

いや、絶対にないな笑

特技もスキルも何もなく面白いことも言えない趣味もなかったころの僕が、数年後同じ道をヒッチハイクしてるなんて。

ほんと面白い人生だな。

だからこそ、不安もあるけど今の自分をみて
「きっとこのまま終わることはない」と信じることができる。動くことができる。

大丈夫。僕は高校生の頃の自分よりずっと自分の言葉を語れる。大好きだと言える。


もうゴールが目の前まで来ていた。



そして、

ヒッチハイク旅開始から約5日と15時間。

AM7:15 明朝。

僕は、出発地である浦添市城間の58号線に立ち、

人生初の『沖縄一周ヒッチハイク』を達成した。


予定時刻から約1日を過ぎた5月9日のことだった。





GWこぼれ話 〜ついでにヒッチハイクTips〜



誰に張り合うとかではないけどやっぱ叫びたいよね。

ここで叫ばせてもらいますね。

ついにやってやったぞーーーー!!

おらーーーーー!!

どうだーーーー!!!

おらおらーーー!!

嬉しい。達成したとて、メリットがあるとかお金持ちになったとかは何もないけど、
とにかく嬉しい。

自分で自分を奮い立たせて、自分の殻を破って、自分に向き合えたことが嬉しい。

今年のGWはこのまま死ぬんかな思うほど潰れてたけど、それはそれで僕を動かしてくれた。あの時間があったからこそ今回の挑戦だったんだもんな。シラフではできないもん。

だから、「全てよし。」なんだ。


ヒッチハイクが終わったあとは、その足で実家に帰って泥のように寝た。4日しか離れてないのに、とても懐かしく温かく感じた。

起きるとお昼すぎだった。
飼っているカメがエサだエサだ!とパタパタしながらご飯を食べているのを、ぼーと眺めながら時間がすぎる。お前はほんとに美味しそうに食べるね。(ヒッチハイク中は家族に預けていた)

乗せてくれた人たちの顔をぼんやりと思い出す。
みんなびっくりするほどいい人たちだったな。こんな人達が存在するんだ…と異世界に迷い込んだ気持ちだったもの。

ヒッチハイクほんと楽しかったな…。

カナダから帰ってきたときのような、
つい昨日まで沖縄を彷徨っていたとは思えない、遠い思い出のような感覚だった。

達成したんだな。

変な気持ち…笑


さて、僕も発信者なので、達成しただけでは終わらない。
ずっと憧れていた「ヒッチハイク達成人」として、最後に

▶『ヒッチハイクこうやれば上手くいくかもよTips!』

をお伝えします✨

達成したらこれを書くんだ!と考えていました。フォロワーさんからリクエストもあったし✨

そして僕も欲しかったやつー!


それではいきます!

①靴はちゃんとしたもので

→ヒッチハイクできる場所(車が停まりやすい場所)って意外と少なくて、そこまでかなり歩くから靴はちゃんとしたものがいい。
ランニングシューズがクッション性のあるスニーカー。最後の20キロを除いても5キロ以上は歩いた。なんか筋肉ついた。

②車が停まらなければコンビニや道の駅で停まってる人に声をかけるのもあり。

→意外とこれが一番確実かもしれない。
ただ、こちらから声をかけるのは勇気がいるので「指を上げて道でニコニコしてるのとどっちが気持ち的に楽か」を試してみるといいかも。僕は道のそばで佇んで微笑んでいる方が楽だった。
その代わりマジで停まってもらえないときは顔も無になる。(その時は諦めて歩きだす。) 

③着替えは多めに。音楽をお供に。たまに甘いお菓子。

→車に乗せてもらうので着替えは多めにあった方がいい。歩くので結構汗かく。
あと音楽プレーヤーかなんかを持ってると、ひたすら歩いても楽しい。好きなポッドキャストを聞きながら歩くとひとりニヤニヤできる。ゆる言語学ラジオおすすめです。
甘いお菓子なんかをちびちび食べて歩くと心も元気になる。

④遠慮より愛嬌。
→僕が出会った人たちが特殊だったのかもしれないけど、そのへんで拾った人間なのにあれやこれやと色々食べさせてくれたり泊めてくれたり差し入れを持たせてくれたり。
もう申し訳ないくらい感謝してしまうけど、そこで変に遠慮して迷うより「ありがとうございます!マジ感謝っす!✨」と伝えるほうが相手もうれしそうだった。美味しいなら美味しいと伝えるのも大事。
ご厚意に甘えた分、ヒッチハイクの話でもしたら大丈夫✨

⑤背負ってるカバンにダンボール貼り付けて指を上げながら歩くのも手。

→海外のヒッチハイカーは割とこの方法で歩いていたりする。移動しながらできるので効率は良い。印象は若干悪くなるけど、目が合う強制感はないので停まりやすいドライバーもいる。(僕がそのタイプ)
停まってくれたら「え!いいんすか!✨ありがとうございます!」とちゃんと伝えたら印象も回復するしいいかも?

⑥車の中で話す内容はパターンをつくる。

→車中は気まずいっちゃ気まずい。けれど、そもそも「ヒッチハイクしてる」ってだけで興味の的なので相手が話しかけてくれることが多い。そこで「ヒッチハイクに至った経緯」やそこから「おすすめスポット」などを聞いていくと話が上手くなくても案外間は持つ。
相手の職業や趣味を聞くでもいいし、どこからの帰りですか?とか聞くのもいい。地元が違うなら地元の話をすると盛り上がる。(僕は本州に行くと沖縄の話をして、海外に行くと日本の話をする)
何台か乗せてもらえるうちに鉄板ネタが生まれてくるので、少しずつ気が楽になるはず。
話すことがなければ、ニコニコ一緒に音楽を聞くのもいい。

⑦いい路肩を見つける。
→やっぱり最後はこれ。いい路肩、大事。
車が停まりやすい路肩を探して、その30メートルくらい前でヒッチハイクする。
ドライバーはヒッチハイカーを見つけると一瞬考えるので、考えたあとちょうどいいところに路肩があると停まってくれる。
路肩がないと面倒くさくて通り過ぎてしまうので、あるのとないのとでは全然違う。
特に「一車線で路肩がある道」がベスト。二車線以上だと、停まりたくても車線変更しないといけない。

いい路肩を制するものはヒッチハイクを制するのだ!✨


        ーーーーーーーーー

ということで、

『明日から役立つ魔法のTips』いかがだったでしょうか?

これであなたも
着の身着のまま知らない土地で目が覚めたとしても大丈夫だと思います。

僕も発信者としてとても満足です。


足かけ3ヶ月、幾度となく「まもなく完成!」と書く書く詐欺を繰り返していたこのnoteも、ようやく日の目を見ます。

こんな怪しさ満点奇奇怪怪noteを気長に待ってくれ、 
最後まで楽しんでくれたあなたへ。

ありがとう。大好きです。 


次会うときはぜひ、どこかの街で飲みながら、まだまだ話してない裏話なんかもできるといいですね✨


それでは長い長いお付き合いありがとうございましたーー!また次回お会いしましょう!


だいでしたーーー!

あでぃおす!



あそび屋だいの沖縄ヒッチハイク旅 〜Fin〜




《お知らせ》 そしてこのnoteを読んでくれたあなたへ


僕も書いていてソワソワしてましたが、
なんか、なんだかこう、動きたくなってきたそこのあなた!

急も承知で、

   

あそび屋だいと遊びませんかー!

オンラインで!✨


あなたが持っている「ずっとやりたかった夢」を叶えてみませんか?


遊びに行くってなかなか大変ですよね。

行ったら絶対楽しいのは分かっているけど、 気分が乗らなかったり体を動かすのが億劫だったり…

でも、もし、

友だちと行けるなら?

約束があったら?

誰かが背中を押してくれるなら?

ずっとやりたかったあれもこれもできるかもしれない!✨

澄みきったサンゴの海で泳いだり、、


フラッと学生ライブに迷い込んだり、、

ずっと気になっていたカフェに遊びに行ったり、、

火を囲んでマシュマロ焼いて語り合ったり!


詳しくは下記のnoteに書いてありますが、
あそび屋だいと「遊ぶ秘密の作戦会議」をして、

「行ってきます!」「目の前までやってきました!」と実況も楽しみながら実行し、

実行できたお祝いにオンライン飲み!✨🍻
(麦茶でもいいよ)


そんな『遊ぶ人生がはじまる3DAYS』を体験してみませんか✨🍰


あなたの人生も遊びを中心に回り始める。
2年後にはヒッチハイクにもいけちゃうかも!?✨

絶対楽しい…ふふ


それでは、あなたに会えるのを

心から楽しみにお待ちしておりまーす!🌴✨



ーーーーーあそび屋だいよりーーーー

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