讒文芝居

サンシャイン60が出来た当時、10歳か其処等だったが、
何故乎サンシャインの「地獄巡り展」に家族と従姉妹の家族包みで
出掛けた。只今の子供に地獄の本を与える奴みてえ喃もん乎。
棘棘の附いた車輪に磔に為った丁髷の人やら
鬼に石の俎板で千切りに然るる丁髷の人やらの蝋人形が処狭し。
何故地獄の時代は未だに江戸だの乎と謂う疑問は感じた。
でも、従姉妹も自分も全く怖く無かった。自分の家じゃあ無いからだ。
余所の家だもの。
只のアトラクションだ。

模擬地獄が凶事為すとて、余所の家が如何為ろうが知ったこっちゃ無い。

其れ選りも家に在る貰った「怪談全集」のが身に抓まされて怖かった。
怖い話がわんさと這入った誰乎の情念詰まったもんが安住の地の在る怖さ。
ネクロノミコンの本物が家に御座る様なもんで在る。
災禍為しても、此れ以上遁げ場が無い。
傍を通る時は親指を隠して、眼を閉じて通った。
只今考えると襲って来るとして、其の方が危ない。

シー・モンキーも怖かった。
当時「小学三年生」だったかの付録で勝手に
「宇宙からきた!なぞのせいぶつ!」等と謳って居り
不幸手紙を商品に雑ぜて送られた様な恨みがましい気分に為った。
「宇宙生物」と謂うのが正体不明感を搔き立てる。マジに居たの乎!と。
大体、ウルトラマンでも小さい宇宙生物が卒爾巨大化して害を為し足り、
碌な事が無い。
宇宙生物(だと謂われた物)が目の当たりにして居るが、
ウルトラマンは未だ一顧だにして居ない。
助けられるのは其の遍だのに居る確証が無い。
親に云っても大体信じて呉れ無いのだ。
大変だー!

まあ、両方共何時迄経っても何も起こさぬので、
其の裡怖がるのに狎れたし飽きたのだが。