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映画感想「アイの歌声を聴かせて」(Filmarksより)

予告を観た時から、創作者センサーが反応していたので鑑賞。

研究者である母と二人暮らしの女子高生、サトミの学校にシオンという転校生がやって来る。天真爛漫なシオンに振り回されるサトミだが、母の仕事とシオンの関係に気付き非日常に巻き込まれる…。

素晴らしかった。
AIであるシオンの突拍子もない行動によるドタバタは定番だが、メインキャラ全員のキャラが立っており高校生らしい悩みがシオンによって解決されていく前半は爽快。
その後シオンに危機が訪れ、サトミ達が一丸となって救出に向かう流れも言ってしまえばありきたり。なのにシオンの成り立ちが余りにも鮮やかで「見えない繋がり」を感じさせる作劇がもはや芸術的。

現代、ITパニックやコメディが溢れているが大方は「機械にも心がある」または「芽生える」で感動を誘うパターンが定番。
しかしこの「アイ歌」はそうした漠然とした帰結より一歩進んで、「機械に人の心が宿る」まで昇華していると言えるのではないか。
無垢なシオンの歌や激励は、サトミやトウマの想いが年月を経て自分達に帰ってきたもの。
こういう作品は「こんなAIがいてくれたらいいな」というドラえもん的な夢を見せてくれるものだが、なんのことはない、自分の「好き」を信じ続ければシオンはすぐ側にいるじゃないか。

フィクションが夢を見せるのではなく、夢に気付かせてくれる。
そしてそれをアニメならではの描写で美しく彩る。終盤の、シオンが目覚める思い出の写真が乱れ飛ぶ場面、実写なら子役とのギャップで違和感があっただろう。
今年はアニメ映画多めだが、また一つ傑作に出逢えた。


「サトミは幸せ?」
「私、幸せだよ!シオン!」

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