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第9回「ムビシナ」参加シナリオ

 こちらは第9回「同じ映画から作る千差万別TRPGシナリオ」、2021年最初となった「ムビシナ」へと投稿させていただくシナリオです。
今回の題材はサバイバルホラーの歴史を変えた傑作の実写映画化「バイオハザード」。
 使用システムは恒例の「ふしぎもののけRPG ゆうやけこやけ」(追加サプリメント「よいやみこみち」使用)となっております。
 2021年最初のムビシナということもあり、気合を入れて作成しました!
 それでは、下部よりどうぞ!


『紅の女王と忘れじのお友達』

●登場人物
空き家に潜む強大なもののけ「ジョオウ

記憶喪失の少女「笠原ありす

●必要時間2~3時間くらい

●【ふしぎ】と【想い】
 このシナリオで語り手が各[場面]に使える【ふしぎ】は20点、【想い】も20点です。

●物語の概要
[場面]数:4つ

 そろそろ暖かくなり始めた春先のこと、学校が早帰りになった子供たちと遊んでいたもののけたちは、ふらふらと街をさまよっている古ぼけた服を着た少女笠原ありすと出会います。
 ありすはどうやら記憶を失ってしまっているようですが、もののけたちが色々と聞いてみると、街はずれの小さな空き家についておぼろげに覚えていることがわかりました。
 ありすの記憶を取り戻すために空き家へと向かったもののけたちでしたが、突如として現れた強大なもののけジョオウによってありすは空き家の中へと攫われてしまい……?
 果たしてありすの記憶を取り戻すことはできるのでしょうか?そして、ジョオウは何故ありすを攫うようなことをしたのでしょうか……?

●はじめに

 このシナリオはゆうやけこやけのシナリオを何度か遊んだことがある人向けのシナリオです。
 登場人物が2人と少なく、また空き家に限定にされているので遊びやすいシナリオになっていると思います。
 ジョオウとありすはどういう関係なのかを紐解いていくシナリオになっており、様々な特技を使って空き家の中を探索してみてください。
 それと、これは(元ネタの映画と違って)喧嘩をするシナリオではない……ということを心掛けておくといいでしょう。
 

●語り手の準備

 このシナリオには以下の2人のNPCが登場します。

▼空き家に潜む強大なもののけ「ジョオウ」
へんげ5  けもの9  おとな4  こども0

追加特技
《こうらぼし》 《ひさしぶり》 《じかんのまほう》

弱点
《さむがり》 《おとしより》 《ふゆごもり》

 街はずれの空き家に潜んでいる、とても力の強いもののけです。真っ赤なドレスを着た幼い女の子の姿をしていますが、喋り方は古風で≪おとしより≫みたいです。
 その力は土地神様をも上回るほど大きく、≪じかんのまほう≫にさえ通じているほど博識です。ただ≪さむがり≫なようで、冬場にはほとんど姿を見かけません。
 どうやらありすの記憶喪失の原因に深く関わっているようなのですが、理由を尋ねても教えてくれません。「ありすはこの屋敷から出ていくと大変な目にあう」の一点張りで、彼女を自分の潜む空き家に閉じ込めようとします。
 
  

▼記憶喪失の少女「笠原ありす」
へんげ0  けもの1  おとな4  こども0

 記憶喪失で街の中をさ迷っていた女の子です。なぜかちょっと古ぼけて色あせた服を着ています。
 子供とは思えないくらいハキハキと物事を話し、受け答えもしっかりしているのですが、肝心な場面になると黙り込んでしまう引っ込み思案なところもあるようです。
 街はずれの空き家のことをおぼろげながら覚えており、記憶の糸口になればと尋ねたところを、ジョオウに攫われてしまいます。
 どうやら空き家には、彼女に関するいろんな物や記録が残っているようなのですが……?

 

最初の[場面]
場所:街中
時刻:昼
どういう[場面]:PCたちが笠原ありすと出会う場面です。

 PCたちは最初、街に住む子供たちと昼間から遊んでいます。
 4月も半ば、もう学校は始まっているのですが、学校の都合でお昼前に帰る前になったとのこと。子供たちは詳しい事情を知らないし、遊びたい気持ちが強いので、ここを詳しく聞き出そうとしても要領を得ません(≪こころのぞき≫や≪おねがい≫の特技を使っても、本当に事情を知らないので何もわかりません)。
 ただし、きちんと遊びに付き合ってあげながら「何か変わったことはなかった?」等と聞いてみると「そういえば、朝から若い先生を見ていない。心配だなぁ」というお話を聞くことができます。素敵な遊びを提案したり、上手に子供たちから情報を聞き出したPCには[夢]をあげてください。
 やがて子供たちは昼ご飯を食べるためにそれぞれの家へと一旦帰っていきます。PCたちも昼食に何を食べようか考えるかも知れませんが、そこでちょっと変わった感じの女の子が話しかけてきます。

ありす「あの、すいません。少しお伺いしたいことがあるのですが……?」

 どこか古ぼけて色あせた服を着て、妙に固い感じの言葉遣いをする少女。彼女は笠原ありすという自分の名前を名乗りますが、なんとそれ以外は何も覚えていないというのです。彼女は

・気付けば自分の名前と僅かな情報以外すべてを忘れて、町の中をふらふらと歩き回っていた。
・大人を頼ろうとも思ったのだけれど、何故か大人を見かけると急に怖くなって逃げ出してしまう。
・そこでPCたちを見かけ、自分のことを知らないか聞いてみた。

と、こういった事情を語ります。彼女の話を積極的に聞いてあげたPCには[夢]をあげてください。
 ≪こころのぞき≫などで心を読んでも彼女が言っていることは本当で、とても困惑していることがわかるのみ。また≪ひさしぶり≫や≪おもいだして≫を使おうとしても「ちょっと今は使えないみたい」と答えるようにしてください(後にありすの正体がわかれば納得してもらえるはずです)。
 残念ながらPCたちにも彼女の正体や記憶の糸口はつかめませんが、熱心に話を聞いていると、街はずれにある空き家のことをおぼろげに覚えていることをありすは語ります。住んでいたことがあるのか、そこで何かがあったのかまではわかりませんが……。
 その空き家に行ってみたいけれど、1人で行くのはなんだか不安だし、大人も頼れないと弱り切っているありすに快く同行を提案してあげたら、この場面は終了です。最初にこれを提案した人、同意した人には[夢]をあげてください。

[場面の終了]:笠原ありすと出会い、街はずれの空き家に向かうことを決めたら場面を終了してください。

第二の[場面]
場所:街はずれの空き家
時刻:昼
どういう[場面]:空き家にやって来たありすがジョオウに攫われてしまい、PCたちが空き家へと入り込む場面です。

 街はずれの空き家については、【おとな】での判定に成功するともう10年くらいは誰も住んでいないこと、【へんげ】での判定に成功すると力の強いもののけが住み着いているという噂があることを知ることができます。ただし、前の住人の詳細や、もののけの正体については残念ながらわかりません。
 また、お巡りさんや土地神様に頼ることも、大人を怖がってしまうありすを連れた状態では避けた方がいいでしょう。もしこれらの行動を取ろうとすると、ありすは逃げ出してしまい、PCたちだけになるとおずおずと戻ってきます。
 さて、空き家と聞くと荒れているイメージがあるかも知れませんが、庭に雑草が生えているくらいで、西洋建築風の空き家は綺麗な外観を保っています。ありすに確認してみると「そういえば、この建物の中に入り込んだような気が……します……」と少し戸惑いながらも答えてくれます。
 中に入るべきか否か、答を出すよりも早く空き家の中からは真っ赤なドレス姿の少女が現れ、感極まったようにありすへと語りかけてきます。

ジョオウ「ああ、ありす、可愛いありすや。1人で出歩いてはいけないではないか。外の世界はおんしを傷つける悪しきものでいっぱいじゃ。ささ、わらわと共に帰ろうぞ」
ありす「え、あ……あなたは……ジョオウ……?」
ジョオウ「そうじゃ、ジョオウじゃとも。おや、街のもののけ達か……ありすを送り届けてくれたのかえ?感謝はするが、ここから先はわらわたちの問題よ。疾く立ち去るが良いぞ」
ありす「そんな、言い方は……私は、記憶を……」
ジョオウ「記憶?そんなもの、これからの日々には不要じゃ。不可抗力ではあるが都合のよいこと。すべてを忘れ、また楽しく過ごそう」

 そう言って、ジョオウと呼ばれた少女はありすを軽々とお姫様だっこすると、空き家の中に駆け込んでいってしまいます!ありすはびっくりしているのもありますが、PCたちに向かって手を伸ばしますが、それが届くことはありません。
 ジョオウの能力を見てもらえればわかる通り、PCたちが力ずくで止めようとしても敵う相手ではありません。[けんか]でも仕掛けようものなら、9もある【けもの】の数値でこてんぱんにされてしまうでしょう。
 ≪おばけ≫や≪うそつき≫、≪いかく≫などの特技でジョオウを一旦止めようと試みても、彼女は≪じかんのまほう≫を使って時間を停止させて、屋敷の中に姿を消してしまいます。残念ながら、この場面でありすを取り戻すことはできません。
 こちらに手を伸ばしたありすを放っておくわけにはいきませんし、ジョオウがどうやら彼女の記憶喪失にも関わっているようです。
 PCたちがありすとその記憶を取り戻すために、空き家へと突入を決めたら場面を終了してください。

[場面の終了]:攫われたありすとジョオウを追って、空き家へと突入することを決めたら場面を終了してください。

第三の[場面]
場所:街はずれの空き家
時刻:昼~夕方
どういう[場面]:ありすを追って入り込んだ空き家の中で、ありすとジョオウの秘密に迫る場面です。

 さて、空き家の中には幾つか部屋がありますが、中に物が残っている部屋は4つです。それ以外の部屋は「埃が積もっているだけで何もない」などと描写すると良いでしょう。
 4つの部屋はそれぞれ1階の台所(食堂)と物置、2階の子供部屋と書庫です。それぞれの詳細を記しておくと

・台所(食堂)
 高そうな食器が幾つか地べたの置かれており、カメの餌らしきものが盛られているものもある。【けもの】で4以上の数字を出すと、動きを止めた冷蔵庫にメモが張られているのに気づくことができます。

「ジョオウのご飯が10年分も当たった!でも、10年もショウミキゲンが持つのかな?」

 冷蔵庫の中を覗くと、カメの餌が山ほど中に詰め込まれいて、いずれも賞味期限は10年前のものにも関わらず、どれも異臭もしなければカビたりもしていないのが分かります。
 これはジョオウが≪すなどけい≫の特技を使って餌の賞味期限をずっと遡らせ続けているからです。このことからジョオウが時間を操るもののけ(恐らくは亀の変化)だということを推察することができます。

・物置
 雑多なものが詰め込まれていますが、≪みつけた≫や≪うせものさがし≫、≪どうぐがたり≫の特技を使うか、≪おとな≫で4以上の成功を出せば、中からありすが写った写真を見つけることができます。
 その裏側には10年前の日付と、家族で撮った写真であることが記されていました。また、写真の中のありすは小さな水槽のようなものを手に抱えて笑っています。
 この写真が10年前のものだとしたら、ありすはもっと大きな姿をしているはずなのですが……?

・子供部屋

 他の部屋と比べてもひと際きれいに手入れがされています。
 調べてみると、特に判定なしでも色あせた子供服などがタンスなどにそのまま残されていることが分かります。ありすが着ていた服はこれのようです。
 ≪おとな≫で4以上の成功を出すと黒い女性もののスーツがタンスの中に適当に突っ込まれていることに気付きます。また≪こども≫で4以上の成功を出すと、タンスの底に「みんなを笑顔にできる、りっぱな先生になりたいです」と書かれた作文があるのを見つけることができます。とても大事にされているものだということを伝え「持っていってもいいかも知れない」とやんわりと伝えてあげてください。
 部屋を調べ終えて出ようとすると、携帯電話が入口の辺りに転がっているのに気づきます。確認すると山のような着信がかかっているのがわかり、またブログにでもあげるのか、それとも単に個人的な日記代わりなのか「また明日から元気になりたい。あの時の作文、まだあるかな」と書きかけの文章を見ることできます。この直後、携帯電話は電源が切れて使えなくなってしまいます。

・書庫

 扉を開けると、白衣を着せられ怖い顔をかかれたマネキン人形が一直線に突っ込んできます!
 どうやら扉を開けた相手を驚かせるためにジョオウが仕掛けていたもののようです(≪ときのらせん≫の応用で持ち込まれた時の軌跡を辿り、入口へ戻ってきているのです)。
 ≪かるわざ≫や≪だっしゅ≫で避ける、≪ことことかたかた≫や≪ちからもち≫で受け止める、≪かなぼう≫や≪びーむ≫で壊してしまう、あるいは≪けもの≫で3以上の成功を出すことで避けたり受け止めたりできます。すべて失敗すると3の強さで[びっくり]してしまいます。
 マネキン人形を突破すると部屋の中を調べることができます。≪こども≫で4以上の成功を出すか、≪みつけた≫、≪うせものさがし≫などの特技を使うと机の上に出しっぱなしにしてある本を見つけることができます。最後のページには「わたしとジョオウだけの秘密。ひみつの地下室はかいだんのとなり」と書かれています。

 以上のすべてを調べ終えると、ありすとジョオウの間に何が起きたのか、そして姿が見えない2人がどこにいるのかが何となくつかめるはずです。PCたちが地下室へと向かうことを決めたら、ここで最後の場面へと続きます。

[場面の終了]:ありすとジョオウを探して、地下室へと突入することを決めたら場面を終了してください。

最後の[場面]
場所:街はずれの空き家
時刻:夕方
どういう[場面]:ありすの記憶喪失の真相を暴き、ジョオウの誤解を解く場面です。

 さて、今回の事件の真相を先に提示しておきましょう。
 笠原ありすは、幼い女の子ではありません。先生になる為に教育実習生として頑張っている女性です。
 10年前まで空き家に住んでいた彼女は、アカミミガメの変化であるジョオウと強い絆で結ばれていましたが、彼女が先生になる夢を追う上でもののけの自分が邪魔をしてしまうかも知れないと考え、引っ越しに際して離れ離れになることを選びました。ただ、大好きなありすの面影を残しておいてほしいというお願いを聞いて、もう着れなくなった服や使っていた食器などは残していったのです。
 10年後、教育実習生として小学校にやって来たありすは大きな失敗をしてしまい、とても傷ついた気持ちになっていました。そこで自分の夢を描いた作文のことを思い出し、それを読めば元気が出るだろうと住んでいた家にやって来たのです。ジョオウが今でもそこに住んでいるだろうという確信もあり、彼女は少しも危険な目にあう等とは思っていませんでした。
 ところが、涙で目を真っ赤にしたありすが突然訪ねてきたのを見たジョオウは、彼女が外の世界でいじめられて此処に逃げ込んできたと勘違いし、もう危険な大人の世界に帰らなくてもいいと≪すなどけい≫の特技を使ってありすを子供の頃の姿に戻してしまったのです。
 本来≪すなどけい≫は記憶には作用しないのですが、彼女からするとジョオウがどうしてそんなことをするのかまるで理解できず、ショックと混乱もあって一時的に記憶を失い、空き家から出てさ迷っていたのでした。
 冒頭で子供たちが言っていた「若い先生を見かけていない」という発言と早帰りは、ありすが行方不明扱いになってしまっていることからです。また彼女が大人を怖がるのは、おぼろげな記憶の中で失敗への叱責の印象だけが残ってしまっているからなのです。
 PCたちはありすがもう大人の女性であること、そしてこの空き家にやって来たのは失敗を乗り越えてもう一度頑張る勇気をもらう為だったことを知っているはずです。そのことをありすと、そしてジョオウに伝えなければいけません。
 地下室を見つけて奥へと向かうと、ありすを抱きしめて話そうとしないジョオウが待ち構えています。

ジョオウ「何の用向きじゃ、街のもののけども。ありすはここでわらわとまた暮らすのじゃ。あの日、ありすの夢を応援し、人としての生にわらわの力は過分と身を引いたのは間違いじゃった。傷つき、泣きはらして帰ってきたありすを見た時のわらわの気持ちがわかるか!?もう、絶対に離したりせぬぞ。どんなひどいことからも守ってみせるのじゃ!」

 PCたちは携帯電話の文章について語ったり、作文を提示したりして、まずありすの記憶を呼び起こさなければいけません。【つながり】が2以上あるPCの【おとな】による説得も有効です。
 ありすの記憶が戻り、彼女が自分を教育実習生を志す大人だと思い出すことができたなら、子供たちがありすを気にしていたことや、彼女の夢について語り、今こそ≪おもいだして≫や≪ひさしぶり≫、≪しんじる≫といった特技で彼女の夢を取り戻す手伝いをすると良いでしょう。
 自分の夢とここへ来た理由を思い出したありすは、ジョオウを説得します。

ありす「聞いて、ジョオウ。私のことを気にしてくれたのは嬉しいです。けれど、私は前に進むために……夢を追いかけ続ける為にここに来たんです。あの日、応援してくれたあなたに夢を遮られてしまうなんて、そんなのは悲しすぎます!」
ジョオウ「し、しかしじゃな!あんなに泣いて、悲しんで……わらわは耐えられぬ。外の世界へ行けばもっとありすが笑顔になれると信じて、わらわは送り出したのに!」
ありす「辛いことや悲しいこと、思い通りにならないことはあるけれど、それでもこうやって今日であっただけで懸命に誰かが探してくれるような、素敵なことだってあるのが外の世界なんです。お願いです、ジョオウ。わかってください!」

 ありすの説得をPCたちが援護すれば、遂にジョオウは自分の誤解を認め、ありすを元の年齢へと戻します……が、そうなると当然、ただでさえ古くなっていた子供服が持つはずもなく、バラバラになってしまいます。

ありす「きゃー!な、何するんですか、ジョオウ!?」
ジョオウ「あ、いや、違う!わざとじゃない、わざとじゃないのじゃ!?も、もののけたちよ、手伝っておくれ!」

 ≪だっしゅ≫などで服を取りに行く、≪はねまくら≫などで体を隠してあげる、ちょっと変わった方法だと≪なんでもへんしん≫や≪つかわれるもの≫で服の姿になったPC自身を着せてあげることもできるでしょう。
 どうにもしまらないドタバタ劇の中で、最後の場面は終了を迎えます。

[場面の終了]:ありすとジョオウの誤解を解き、和解させたうえで服の問題を解決したら場面の終了です。

[後日談]

 「怒られてサボッた」形になってしまったありすは更に激しく怒られてしまうことでしょうが、親友との再会と夢の再確認を行った彼女なら今度はきっと耐えられることでしょう。
 学校側も早帰りまでさせて大事になってしまっている……と思いきや、この時期の教育実習生や新任教師がもののけ絡みで色々巻き込まれるのはよくあることということで受け入れており、彼女が先生になれなくなってしまう……などということは無さそうです。
 もし、それでも少し気になるのなら【すごいふしぎ】とジョオウの特技を合わせて時間を今朝に戻し、ごく普通にありすは学校へと出勤した……ということにしてもよいでしょう。ただ、その場合は少ししわの付いたスーツで学校へ向かうことになってしまいますが。
 ジョオウは、というと、どうやら空き家にこれからも住み続けるようです。

ジョオウ「久しぶりに会えたのは嬉しかったが……わらわの力は、やはり真っ当に夢を追うには大きすぎる。きっと、何処かでありすとの関係がありのままで無くなる時が来るじゃろう。良いのじゃ、こうして少し離れていても、強く生きているのを楽しみに過ごしていくことを、おんしらのお陰で覚えたのでな……」

 離れてしまっても、確かな絆で結ばれた2人の関係の修復を祝いつつ、今回のシナリオは終了です。お疲れさまでした!



蛇足気味のあとがき

 2021年最初のムビシナも、ゆうこや百合劇場で参加をさせていただきました。相変わらず、どんな映画であろうと女性同士の関係性の話に落とし込もうとしますね、この書き手は。
 本作は一見するとバイオハザードと共通するのは記憶喪失要素くらいですが、原作のアリスが記憶を取り戻した後(続編でこの記憶についても二転三転がありますが……)ウィルスによって荒廃したラクーンシティに放り出されるように、ありすも記憶を取り戻しても完全なハッピーエンドではなく過酷な現実へと帰っていかなければいけません。ゆうやけこやけの世界のもののけたちは常に優しく誰かを助けようとしてくれますが、逆に言うとそんな優しい世界でも困りごとは無数に溢れ、何処でだって起きているのですから。
 ただ、それでもアリスのラストが仲間も使命もすべて失ってなお生き続ける戦いの始まりだったのに対して、ありすの方は大分希望を持たせた終わりになっていますが。別名「レッドクイーンがアリスたちの味方だったらルート」(笑)。
 ちなみにありすが作中でした失敗って何なの?と思う人がいるかも知れませんが、これについては「聲の形」回と舞台が同じ学校、とだけ匂わせておきたいと思います。
 それでは、今回も貴重な機会をありがとうございました!

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