第7回「ムビシナ」参加シナリオ

こちらは第7回「同じ映画から作る千差万別TRPGシナリオ」「ムビシナ」へと投稿させていただくシナリオです。
今回の題材はSFアクションの傑作「メン・イン・ブラック」。
使用システムは恒例の「ふしぎもののけRPG ゆうやけこやけ」(追加サプリメント「よいやみこみち」使用)となっております。
……恐らく「よいやみこみち」をお持ちの方は「あれを使う気だな?」とピンと来ていると思いますが(笑)。
それでは、下部よりどうぞ!

『もののけ・いんべぇだぁ・ぶらいど!』

●登場人物
恋する河童「ハナタバ

悩めるマレビト「ジェイエルク

気難しい土地神様「足童姫

●必要時間2~3時間くらい

●【ふしぎ】と【想い】
このシナリオで語り手が各[場面]に使える【ふしぎ】は20点、【想い】も20点です。

●物語の概要
[場面]数:4つ

 河童の「ハナタバ」が恋をした相手、それは町へと空の向こうからやって来た旅人「ジェイエルク」でした。
 種族も違うし、文化も違う。それにジェイエルクはいつか空の向こうへ帰ってしまうかも知れません。惹かれあいながらも、2人は距離を詰め切れずに居ます。
 ジェイエルクはPCたちに、縁結びの神様として有名な「足童姫」様の力を借りる手伝いをしてくれないかと相談します。
 ですが、実は足童姫様はとても気難しい神様。PCたちを頼ったことを理由に、協力を断られてしまい……。
 果たして2人も恋路の行方は?足童姫様の協力を得ることは出来るのでしょうか?

●はじめに

 このシナリオはゆうやけこやけのシナリオを何度か遊んだことがある人向けのシナリオです。
 どたばたラブコメディとして展開するお話ですが、珍しい人間の出てこない「もののけがもののけを助ける」お話なので、少し勝手が違う人もいるかも知れませんね。
 基本的にはハッピーエンドに繋がる物語としてこのシナリオを描きましたが、せっかくのマレビトメインシナリオということで《さようなら》を使った切ない悲恋の物語に改変してもよいでしょう。その場合は、足童姫様を頼るのはハナタバにするか、出番を削るのがいいかも知れません。
 

●語り手の準備

 このシナリオには以下の3人のNPCが登場します。

▼恋する河童「ハナタバ」
へんげ2  けもの2  おとな1  こども3

追加特技
《すもう》 《みずかがみ》 《かめれおん》

弱点
《きゅうり》 《えっち》 《かなもの》

 PCたちが住む町の川に住んでいた河童です。
 最近までたまに遊びに町へやって来るくらいで人との関りは薄かったのですが、ジェイエルクと出会ったことで恋に堕ち、積極的にアタックを繰り返しています。ちょっと《えっち》ですが、とても一途な女の子です。
 《すもう》で鍛えた怪力で力仕事はばっちりなのですが、《きゅうり》が好きすぎて正体を現してしまいそうになったり、《かなもの》が苦手なので失敗したりもしています。それもあって、恋は一進一退と行った様子です。
 人とほとんど関わってこなかったことから、元は「〇〇(PCたちの住む町の名前)川の河童」という通り名しか持っていませんでしたが、ジェイエルクとの出会いを契機にハナタバという名前を名乗るようになりました。
  

▼悩めるマレビト「ジェイエルク
へんげ3  けもの1  おとな3  こども1

追加特技
《かえりたい》 《びーむ》 《すがたかくし》

弱点
《まよいびと》 《ぐったり》 《いつもおなじ》

 PCたちの住む町に空から落ちて来たマレビト、いわゆる宇宙人です。
 銀髪、碧眼、モデル並の体型と、明らかに普通の人と異なる美貌の持ち主ですが、もののけたちと違って変化が出来ず《いつもおなじ》姿なので、町では暮らせません。もののけたちや土地神様の力を借りて、ひっそりと森に《すがたかくし》て暮らしています。
 不思議な《びーむ》を撃ったりできますが、地球の空気が合わないのかいつも《ぐったり》していて、元いた星に《かえりたい》と願っています。
 ですが、ハナタバを始めとしたもののけ達の優しさに触れ、迷いが生まれ始めているようです。
 《まよいびと》なので、色々と常識が欠けているところも……? 


気難しい土地神様「足童姫」
へんげ4  けもの3  おとな7  こども3

追加特技
《あかいいと》 《くもがみ》 《いとでんわ》

弱点
《かたおもい》 《おどろおどろ》 《さびしがり》

土地神様としての特技
《まよいみち》 《まっくら》

 PCたちの住む町の、大きな森に棲んでいる《くもがみ》───巨大な蜘蛛の土地神様です。
 恋する人の《あかいいと》を紡いでくれる神様として有名ですが、同時に極めて気難しく、見た目も《おどろおどろ》しいので、頼るなら相当の覚悟が必要だと言われています。
 自分自身がかつて辛い《かたおもい》をしていた経験から、恋愛ごとには何より当事者の努力が大切だと考えており、ちょっとした助けを他に求めるだけでも怒りだしてしまうことがあります。
 本当は心優しく、《さびしがり》で孤独の辛さをよく知っているので、恋する人にはみんな幸せになって欲しいと思っているようなのですが……。
 
 

最初の[場面]
場所:ハナタバの住む川
時刻:夜
どういう[場面]:PCたちがハナタバ、ジェイエルクと出会う場面です。

 夏も終わり、少しずつ涼しい日も増えてきた秋の夜。
 久しぶりに蒸し暑くて寝苦しい想いをしていたPCたちは、近くの川で水遊びをして涼むことにします。川に住む河童にお願いすれば、きっと夜でも安全に遊べるでしょう。
 ここで河童と出会いの処理をしますが、彼女は“まだ”「ハナタバ」ではありません。〇〇川の河童として扱い、うっかり名前を口にしてしまわないように気を付けてください。
 河童はPCたちが遊ぶことを快く受け入れてくれます。ただ、彼女はちょっと《えっち》なので「泳ぐんなら人間の姿になって水着とかー、何なら生まれたまんまの姿とか、気持ちいいと思うッスよ!うへへへ……」と鼻の下を伸ばして行ってきます。
 ちなみに、夜なので人の姿になるコストはかかりません。もし、PCが彼女の提案を受け入れるなら、河童からの関係は「下心」になります。それ以外に遊びを提案した人が居れば、その提案が素敵なものなら[夢]をあげてください。
 さて、しばらく遊んでいると、急に空がパッと明るくなり、銀色の火の玉が川へと降ってきます。

「わ、わ、わ!?ななな、なんスか!?何事ッスか!?」

 それを目撃したPCは[おとな]で判定して、失敗したら2の強さでびっくりしてしまいます。
 火の玉は大きな水音を立てて川へと突っ込みます。光は少しずつ弱まっていき、やがて綺麗な女の人の姿を形作ります。銀色の髪、左右完全対象の美しすぎる体、ゆるゆるとこちらに向けた目は青い色を湛えています。明らかに、普通の人間ではありません。

「だ、大丈夫ッスか!?怪我は無いッスか!?」

 真っ先に河童が女の人へと近づいていきます。びっくりしなかったPCもそれに続いてください。《すりすり》や《だいじょうぶ》、《かぜのうた》などの特技なら、彼女の意識をハッキリさせることができます。これらの行動を取ったPCには[夢]をあげてください。
 先に動いたPCたちが行動し終わるか、河童が彼女の気付けに成功したら、残りのPCたちも合流してください。
 河童やPCたちの尽力や水の冷たさで正気に戻ったらしい女の人は、お礼を述べて自分のことについて語り始めます。

「私は……定点観測員DZ-50番ジェイエルク。その、ついこの星の美しさに目を奪われていたら、隕石にぶつかってしまって……ああ、困ったわ、励振渦動相克航空装置が動かない。この星で修理を目指すしかないようね……」

 ここでジェイエルクとの[出会い]の処理をしてください。ジェイエルクは、自分を正気付けるのに協力してくれたPCと河童に(PCが全員びっくりしてしまったり、有効な《特技》を持っていなかった場合は河童にだけ)、何処かから取り出した花を手渡します。

「……こ、これ、何スか?」
「? この星では、感謝の意を示す為には美しいものを渡すのでしょう?」

 そう言って微笑むジェイエルクを、河童───この出来事からハナタバと名乗り始める彼女がぽーっとしているのを見届けたら、この場面を終えます。

[場面の終了]:ハナタバ、ジェイエルクと[出会い]を終えたら、この場面を終了します。


第二の[場面]
場所:足童姫様の森
時刻:昼
どういう[場面]:ハナタバとジェイエルクのすれ違いを目撃した後、ジェイエルクから相談を受ける場面です。

 最初の出会いの場面からしばらく経ち、そろそろ秋も本番になる頃のこと。
 PCたちはジェイエルクの様子を見るために、彼女がひっそりと住むことになった森へとやって来ます。
 この森には足童姫様という土地神様が住んでおり、森を《まよいみち》に変えたり《まっくら》にすることができるので、人間の姿に変身できないジェイエルクも安全に過ごすことが出来るのです。
 さて、PCたちが会いに来るより先に、どうやら先客が居たようです。おかっぱ頭の快活な印象の女の子……ジェイエルクとの出会いから「ハナタバ」と名乗るようになった河童、彼女が人間に変身した姿のようです。
 もののけたちはみんな、ジェイエルクのことを心配して色々と手助けをしていますが、その中でもハナタバはかなり熱心な様子ですね。

「これ、今日の食糧!きゅうりッス!遠慮なく食べて欲しいッス!」
「いつもありがとう。本当に助かっているわ、ハナタバ」
「えへへ、いいんスよー、これくらい……これくらい……」
「……自分で食べたいの?」
「いや!そんなことはッ!どうぞ食べて欲しいッス!」

 そう言いながらも、おかっぱ頭の頭長は少しお皿が見えてしまっていますし、指の間にも水かきが見え始めています。ハナタバは《きゅうり》が大好きすぎて、必死に我慢しているようです。
 PCたちは《だいじょうぶ》で気を持たせてあげる、《こそこそ》近づいて驚かせる、《にせもの》で別のきゅうりを作ってみせるなどして、ハナタバを我慢させてください。成功した場合は[夢]をあげてください。
 特技に成功してハナタバがきゅうりの誘惑に耐えられた場合、PCたちの助力に「ありがたいッス」と言いながらも、照れたようにハナタバは去っていきます。
 もし止められなかった場合、きゅうりに触れようとしてジェイエルクの特徴的な服に触ってしまったハナタバは《かなもの》にびっくりして「あちゃちゃちゃちゃーっ!?」と叫びながら走り去っていってしまいます。
 どちらにしてもハナタバが退場した後、ジェイエルクは「彼女はいい人ね」と前置きをしてから、何かに悩んでいるような素振りを見せます。
 [おとな]で判定して成功する、《なつく》《ごろごろ》《こころのぞき》などの特技を使うと、ジェイエルクはハナタバから向けられる気持ち、ハナタバへ向ける気持ちについて語り始めます。

「彼女が向けてくれる好意は……正直、とても嬉しい。私たちの星とこの星の感情の動きはとてもよく似ているけど、質や熱量はまったく違う。圧倒されるわ」
「けど、だからこそ、いずれは去ってしまう私が、その気持ちを向けられていいのかが分からない。食文化も、生態も大きく違う。仮に結ばれたとしても、彼女を私の星へ連れていっていいものか……」
「そうだ。この森のトチガミサマ……住まわせてもらうことになった初日挨拶して以降は話をしていないが、彼女はそういった恋情を結ぶ不可思議な力を持っているそうね。その、よければ私と一緒に、協力を頼んでもらえないかな……?」

 ジェイエルクは悩んだ末に、足童姫様の力を借りることを思いつき、PCたちに協力を頼んできます。
 PCたちはこの時点で土地神様に身勝手な頼みごとをしてもいいのか?と警戒するかも知れませんが、「縁結びの神様として一部で有名。一生懸命頼み込んで、恋を叶って貰った人も居る」と嘘でも無いけれど本当でもない情報を与えてください。
 また狐の変化がPCにいた場合は《えんむすび》の特技を持っているかも知れません。この力で相談に乗ろうとした場合は、ジェイエルクは「友達に迷惑をかけるより、まず頼んでみてからにするわ」と足童姫様に頼むほうを優先します。彼女は《まよいびと》の弱点を持っているので、神様を安易に頼る危険さを理解できないのです。
 ジェイエルクと一緒に頼み込むにしても、彼女の非礼を謝るにしても、同行して足童姫様の元へ一旦向かうことになるでしょう。

[場面の終了]:ジェイエルクの相談を受けて、足童姫様の元へ向かうことになったら場面終了です。


第三の[場面]
場所:足童姫様の森
時刻:夕方
どういう[場面]:ジェイエルクが足童姫様の怒りを買ってしまい、PCたちで取成す場面です。

 さて、最初に説明しておくと、足童姫様はこの[場面]で随分と厳しい言葉をかけてきますが、ジェイエルクやハナタバに意地悪をしようとしているのではありません。
 そもそも、本当にジェイエルクをいじめたいのなら、足童姫様の力なら辿り着けないようにすることだって可能なはずです。
 あくまで足童姫様は、自身の悲しい恋の記憶と重ねて、ジェイエルクとハナタバの絆を試すつもりなのです。その上で、PCたちの影に隠れるような形になったことを怒っている……というのが真相です。
 なので(やろうとする人はまず居ないでしょうが)、足童姫様に喧嘩をしかけたり、やり込めたりしようとするのでは解決に繋がらないと、やんわりと伝えるようにしてください(あまり足童姫様のいじわるな様子を強調すると、PLたちに悪印象を抱く人が出てしまうかもですからね)。
 さて、PC達とジェイエルクが森の奥へと歩みを進めると、調度森の真ん中あたりに、小さな磐座(注連縄の張られた大きな岩)が見えてきます。その傍らにポツンと立っている、着物姿のどこか陰鬱で《おどろおどろ》しい気配を放つ女性……彼女こそ土地神様こと足童姫様です。

「よく来たな、獣の子らよ……そして、何用かな……マレビトよ……」
「この森に住まわせてもらっていること、改めて感謝します。その上で、貴女は人と人の情愛を結ぶ神様だと聞きました。そのお力を借りたいのです」

 足童姫様にもジェイエルクは(なにしろこの星の常識がありませんので)怖気ることなく語り掛けますが、途端に足童姫様は不機嫌な空気を放ち始めます。

「我が愛する獣の子らを盾に……要求を通そうというのか……?」

 PCたちはまず、この誤解を解かねばなりません。[けもの]か[おとな]で判定して説得する、[こども]で判定して純粋な気持ちを伝える、《おっちょこちょい》《ねこかぶり》《ごめんなさい》《たれみみ》などの特技で、自分たちがあくまで友達として彼女に付いてきているだけだということをしっかり伝えましょう。それぞれ判定に成功した場合は[夢]を得ます。

「なるほど……なるほど……だが、気に入らぬ……己が恋情の話であろう……まずは1人で来るが道理ではないか……最初から、上手くいくはずないとでも決めておるのか……?」
「そ、それは……」

 ジェイエルクはただでさえ悩んでいるところに無礼だと怒られて、言葉に詰まってしまいます。[つながり]が2以上あるPCが[おとな]で説得する、《だいじょうぶ》で気持ちを落ち着かせる、《おもいだして》で出会った日のことを思いだしてもらうなどして、ジェイエルクを奮い立たせましょう。《みがわり》などで代わってあげたい気持ちになるかも知れませんが、ここはぐっと我慢してもらう場面です。
 ジェイエルクが気持ちを奮い立たせるのに成功すれば、

「確かに非礼があったかもしれない。けれど、これは私のとっては努力なのよ。星の違う、生き方も違う者同士が歩み寄るために、色んなものの力を借りるのが悪いとは思わないわ」

と言い切ります(彼女は《かえりたい》を持っているので、この言葉はとても説得力があります。むしろ、帰ろうとしない決意に近いのですが)。

「そうか、そうか……だが、それはお主が……勝手に盛り上がっているだけやも知れぬ……川の子にも……聞いてみようでは無いか……」

 そう言うと、足童姫様は《いとでんわ》の特技を使って、ハナタバと会話が出来るようにします。

『もしもし?足童姫様ッスか?何事?ジェイエルク絡みッスか?』
「その通り……お主ら、2人のことよ……」

 通話という形ですが、主要人物が全員そろったところで、いよいよ最後の場面に繋がります。

[場面の終了]:ハナタバと《いとでんわ》で会話が繋がったら、場面終了です。


最期の[場面]
場所:足童姫様の森
時刻:夜
どういう[場面]:ハナタバとジェイエルクが気持ちを通じ合わせる場面です。

 場面が始まるとすぐ、足童姫様はハナタバに向かってこう告げます。

「マレビトが……お主と添い遂げたいと……そのため力を貸せと……我に言うておってな……」
『は……?えええええええ!?』

 ハナタバは4の強さで[びっくり]してしまい、このままだと話になりません。接触しないタイプの特技(例えば《おねがい》や《きいてきいて》など)ならば《いとでんわ》越しにも効果がありますし、[けもの]で判定して活を入れてもいいでしょう。ハナタバが落ち着いたら、いよいよ本格的な対話開始です。

『ちょっ、ジェイエルク!足童姫様にいきなり頼みに行くとか滅茶苦茶ッスよ!?』
「い、いや、だって、そこまで悩んでいたということで……」
「悩んでいた……1人で、悩んでいた……信用されておらんのではないか……川の子よ……」

 ここから足童姫様は、交互にハナタバとジェイエルクの心を揺るがすようなことを言って、2人を揺さぶり始めます。

・相談も無しにいきなり神頼みとは相手を侮っているからではないか。
・まずどんな努力をして見せたというのか、最初から他人任せか。
・いずれ去ってしまう相手を好きになって、本当に町を離れて付いていくつもりなのか。
・いずれ去る時、他にも縁のあるハナタバを連れ去ってしまうつもりか。

 上記の内容をその時々、どちらかに問いかけて、2人の心を揺るがしてください。
 PCはそれぞれの特技を駆使し、[おとな]や[けもの]の判定を使い、[つながり]が2以上あるなら心からのRPで2人に話しかけ、互いの気持ちが通じるように頑張る形になります。
 鳥の変化の《きいてきいて》、兎の変化の《おねがい》《おもいだして》などが有効ですし、あるいはこれはとっておきですが、道怪ならば《ばったり》を使って「実はハナタバは心配して森までやって来ていた」ことにしてしまうのもいいでしょう。
 また、これまで重要エピソードのはずなのに「河童がハナタバになった切っ掛けだけで過程が語られていない」ことに気付くPCもいるかも知れません。その場合は、それを指摘すれば一気に物語はクライマックスに進みます。
 上記のいずれかの条件を満たせば、ハナタバが《いとでんわ》越しに自分の気持ちを語り始めます。

『足童姫様、聞いて欲しいッス。自分は、これまで○○川の河童でした。それだけでよかった、住んでる場所が自分自身でした』
「それが……川の子の……生き方よな……」
『けど、あの時、感謝と一緒に花を差し出されて、自分自身が嬉しいって気持ちがはっきり芽生えたんです。今までお礼を言われたり、何かを貰ったりなんて無かった。だって、川は何も欲しがらないから。でも、あの時に自分はハナタバになったんス。もっともっと欲しい、この人に感謝されていきたいってなったんスよ!』

 ハナタバの情熱的な告白に、PCたちも出会いの時の様子を口にして援護することができます。ここまでくれば、足童姫様は(呆れたような感心したような)ため息を吐き出します。

「はぁ……まるで我が悪者よな……覚悟を問うただけなのに……マレビトよ……川の子の幸せは、もはやお主とあることのようだ……祝福しよう……汝らを……」

 そう言って足童姫様は《あかいいと》の特技を使います。すると、一瞬にして目の前にハナタバが姿を現します(もし道怪の《ばったり》で既にこの場にハナタバがいるのなら、《あかいいと》をこっそり《えんむすび》に変えて、2人の絆をより強くしましょう)。

「その……あー……先走り、し過ぎたけど……」
「あ、あはは……よろしくお願いするッス!」

 微笑ましいやり取りをする2人を見つめるPCたちを置いて、足童姫様がひっそりと退場したら、最後の場面は終了です。

[場面の終了]:ハナタバとジェイエルクの想いが通じて結ばれたら、場面終了です。


[後日談]

 さて、後日談として、PCたちは足童姫様につかまって、撫でたくられているところから始まります。足童姫様は《さびしがりや》、PCたちに嫌われてしまっていないか、心配で仕方なかったのだと言います。

「立場や種族の異なる恋は……若さだけで乗り切るには、とても難しい……我もかつて、とても悲しい別れをした……後悔はしておらぬが……痛みも消えぬ……」

 まして、ジェイエルクは宇宙人、いずれは星の彼方へと去ってしまう人です。向こうの感情の在り方はこの星と似ているそうですが、仮にハナタバは付いて行って、本当に幸せになれるでしょうか?それは、誰にも分りません。
 もし[夢]を使って《すごいふしぎ》を使うのなら、ハナタバがしあわせになれるように祈ることも出来ます。また、ジェイエルクが宇宙を移動するための道具を修理してあげることもできるでしょう。
 変わった使い方としては、足童姫の悲しい恋にもう一度チャンスを……ということもできます。その場合、1匹の兎の変化がはにかみながら足童姫の元へ現れ、2人はぎこちなく会話を始めます。
 えっ?私自身が足童姫様の恋人になる?彼女は《かたおもい》の弱点持ちなので、お付き合いは大変ですよ?克服コスト必要ですし……それでもいいなら、それもまた1つの結末でしょう。
 それが1組になるか、2組になるか、ともあれ森の中の恋人たちを柔らかな秋の日差しが照らす中で、このシナリオは終わりを迎えます。お疲れ様でした!


蛇足気味なあとがき

 ムビシナに参加させていただくのも、はや5回目。今回もゆうこや百合劇場え参加となりました。まさか「メン・イン・ブラック」を女の子ナイズする日がこようとは……貴重な経験となりました。
 お気づきの方もいらっしゃるかと思いますが、本シナリオのヒロインであるジェイエルクはJ-L-K……MIBのメインを張った3人のコードネームを繋げたものです。彼女の方が宇宙人ですが、後半で足童姫様に翻弄される展開からも解る通り、モデルはMIB側、つまり「宇宙と接触した人間」です。
 その上で、もう1人のヒロインのハナタバは名前から察した人もいるかと思いますが「友好的な宇宙人」、そして、そう……足童姫様は極悪宇宙人である「バグ」がモデルなのです。蜘蛛の土地神様は髪長姫様という大先人がいるとはいえ、改めてなんなんだ、このシナリオ(苦笑)。
 ゆうこやの「本当に嫌なことや悲しいことは起こらない、起こさないように人の為に駆けるTRPG」に落とし込んだ結果、二転三転でこんな話になりました。困惑はしれますが、後悔はしてません。
 それでは、貴重な機会をありがとうございました!

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