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第8回「ムビシナ」参加シナリオ2

 こちらは第8回「同じ映画から作る千差万別TRPGシナリオ」、今年最後となった「ムビシナ」へと投稿させていただくシナリオ、2本目です。
 今回の題材はクリスマスを舞台にした傑作ホームコメディ「ホーム・アローン」。
 使用システムは恒例の「ふしぎもののけRPG ゆうやけこやけ」……ではなく、ふたり用異界脱出TRPG「アンサング・デュエット」となっております。
 今年最後のムビシナということもあり、私の好きな要素を思いっきり詰め込みました!
 それでは、下部よりどうぞ!


シナリオ『選別のガーディアン』

・所要時間:約1時間  ・シナリオの公開:OK

・シフターの作成:どちらでもOK

・推奨する関係:深い絆を紡いだ女性同士

・異界の発生原因:大花都女学院成立に関わる恐るべき儀式

※ミッション系女学院で引き起こされる怪異と、少女たちの感情のぶつかり合いはお好きですか?
 本シナリオは貴女が“お姉様”や“可愛い妹”となって、秘められた学園の謎と伝統の闇に立ち向かっていく展開が楽しめます。


あらすじ(プレイヤー向け)

 このシナリオではシフター、バインダーともにミッション系の女子学校「大花都女学院」に通う生徒となり、互いに“姉妹の契り”を交わして遊びます。
 大花都女学院には2年生(時には3年生)の先輩女子が、まだ学院に不慣れな1年生と“姉妹”として契りを交わし、学院の伝統の教授の生活の補佐を行っていくことで、学生による自主的な学園生活の保持と伝統の継承を行っています。
 あなたとシフターは、毎年行われる“守護女神の天杯”と呼ばれる、最も仲睦まじくまた学園の生徒の模範となる姉妹を決める祭典にエントリーしたところ、意識を失ってしまいました。
 そして目覚めると、世界は明けない夜に閉ざされており、何やらおかしな気配の漂う“守護女神の天杯”の会場へと閉じこめられていたのです。
 シフターの彼女は貴女の大切な“お姉様”でしょうか?それとも愛すべき“妹”でしょうか?
 どちらにしても、貴女は彼女の手を取り、明けない夜から抜け出す為に駆け出します。


詳しいストーリー(GM向け)

 大花都女学院の“守護女神の天杯”には2つの目的が存在します。
 表向きには理想の姉妹を選び、学園生活の規範とする為。そしてもう1つは、学園生活の規範と学園の安寧を守る為……即ちある種の人身御供の選別です。
 この事は戦争を挟んだことや時勢の変化などによって、学園の経営者やOGたちさえ既に知りません(巻き込まれて生き残った少女たちも、記憶を失い覚えていないのです)。システムだけが生き残り、学生たちを今も取り込み食らい続けているのです。
 2人で協力しながら、互いを犠牲にすることなくこの儀式場を脱出し、現実へと帰還することを目指します。

・大花都女学院
 いわゆるお嬢様学校で、カトリック系のミッションスクールです。
 明治の頃に華族令嬢の育成を目的として設立されたと伝えられていますが、実際には後述する“守護女神の天杯”の儀式を用いることで、ある種の異界化要塞を作ることを目指した、富国強兵政策の一環としての実験場でした。
 しかし、国家と言えども異界化をコントロールすることなどできるはずもなく、儀式の性質上、成否の観測が外部から困難だったこともあり、計画は頓挫。その時点で複数の名家からの支持が集まっていたことで、そのまま“本物の”令嬢育成の場へとシフトしていきました。
 戦争を挟んだり、時勢の変化で支持層や出資者の変化があったことも手伝い、そのような真実を知る者は(少なくとも学園側には)もう居ません。姉妹制度だけが今でも少女たちの絆の証として紡がれ続けています。

・姉妹制度
 年上の生徒が姉として、年上の生徒が妹として、お互いを尊敬し認め合い、助け合いながら学園の伝統を繋いでいく……という、類似の女学園で採用されていた制度を悪用した“守護女神の天杯”の生贄の生成システムです。
 強い絆を持った少女たちを“学園”そのものに捧げ、異界要塞を作り出すという目的の為に採用されただけで、当初はかなり雑に導入された面もあったようです。
 皮肉にも、他の学園などでは禁忌扱いされがちだった少女たちの関係性を大花都女学院側はむしろやんわりと推奨した(生贄の質が上がるのだから当然です)ことで、他の同様のシステムを持つ学園より自由で独特な伝統が生まれていくことになりました。
 姉がまず左手を差し出し、妹が右手の甲をそこへ触れさせ、独特な握手をするという形で成立し、もし断る場合は左手同士に悪手によって解消がされます。
 これは左手は過去、右手は未来、掌は信頼を、手の甲は敬愛をそれぞれ意味する魔術的な意図があるのですが、今ではすっかり形骸化しています……少女たちが視認できる範囲では、ですが。

・守護女神の天杯
 表向きは、最も仲睦まじくまた学園の生徒の模範となる姉妹を投票によって決める祭典ですが、その実態は強い絆を持った少女たちをある種の人柱として“学園そのもの”へと捧げ、建物を異界要塞化するという儀式です。
 当初は優勝者を儀式の担い手にする予定だったのですが上手くいかず、まったく予定外の少女たちが姿を消すなどトラブルが続き、表向きの学園経営が予想以上に上手くいってしまった(実際はこれこそ“守護女神の天杯”がもたらした恩恵だったのですが)結果、計画は頓挫し放棄されました。
 今や学園側も国もこの儀式のことなど覚えておらず、生徒たちの方もある種の人気投票という程度の意識のまま、誰の為なのかという意図すら失われて少女たちの命を喰らう異界生成装置と化しています。


サンプルシフター

 本シナリオには専用のシフターが設定されています。以下のシフターを用いれば直ぐにシナリオを遊ぶことができます。また、彼女は“姉”であっても“妹”であっても構いません(どちらにするかによって学年を変えてください)。
 勿論、オリジナルのシフターを作成して遊ぶことも可能です!

・シフターデータ

名前:藤宮若葉(ふじのみや わかば)

性別:  外見年齢:15~18歳  所属:大花都女学院

※フラグメントボックス

誰もよりも、何よりも大切な姉妹→貴女のことです。

誰もが振り返る可憐な容姿→如何にもお嬢様然とした黒髪の美少女です。

決して折れない強い心→最後まで諦めない強い心の持ち主です。

結構負けず嫌い→貴女と自分が“守護女神の天杯”に相応しいと譲りません

寂しがり屋→貴女が唯一心を許せる相手。甘えたり、甘やかしたり。

※トークデータ

一人称:私、わたくし  口調:です、ですね、ですわ

口癖:どうか側に居てください、私の天使

設定:大花都女学院の出資者の一角でもある藤宮一族の次期当主。
   非常に礼儀正しく、誰に対してでも優しい理想的なお嬢様。
   ですが本当は心に深い孤独を抱え、誰にも期待していませんでした。
   貴女だけが心から信じる相手、感情の炎を燃やせる唯一の対象です


チャプター0「天杯の守護女神」(異界深度4)

状況説明
 バインダーとシフターが手を取り合い、“天杯の守護女神”にエントリーしたところから始まります。
 貴女たちに対しては他薦での応募も沢山あったのですが、敢えて自分たちからも参加を行いました。

判定
 このチャプターに判定はありません。
 適度に2人でロールプレイをした後、GMは結末を読み上げて次のチャプターへ進んでください。

ロールプレイ指針
 互いのことを大好きであることが解るように、周囲に見せつけるように存分にイチャイチャを見せつけましょう。後に異界に巻き込まれる理由づけにもなります。
 バインダーとシフター、どちらが姉でどちらが妹か、互いの力関係はどうか、このチャプターで確認しておくと良いでしょう。

結末
 2人はエントリーを終えた後、急激な眠気に襲われます。
 近くのベンチへと何とか辿り着き、互いに肩を寄せ合う、片方が膝枕するなどの形で、眠りに落ちていきます。


チャプター1「明けない夜の学院」(異界深度5)

状況説明
 バインダーとシフターが目を覚ますと、そこは眠りに付いたベンチではなく、見覚えのある飾りつけをされた講堂、“天杯の守護女神”の会場でした(どちらか、姉である方が知っていることにしてください。2年生と3年生の姉妹の場合は両方が知っていても構いません)。
 窓の外は真っ暗な夜となっており、会場内も煌びやか装飾に反して薄暗く一切の人気を感じさせません。
 当然バインダーとシフターは強い不安を感じることでしょう。無意識に手を触れさせ合うかも知れません。“姉”側の左手が“妹”側の右手に触れた瞬間、周囲の景色が変化します。
 ここから判定の開始です。

※手を触れさせる
 上述した姉妹制度を結ぶ際の儀式と同じ仕草、“姉”側が“妹”側の右手の甲に左手で触れることで、シフターにはバインダーには見えないものが見えるようになります。
 具体的に言えば、会場の無地の垂れ幕に「~を証明せよ」という指示が見えるようになります。

判定
「自身が見えていることを正確にバインダーに伝え、またバインダーがそれを受け入れて行動を開始する」 難易度:5

 ただでさえ不穏な空気の漂う場所で、一方だけに見えている情報を伝えることはとても困難です。上手に説明できるでしょうか?

・ふたりとも成功した
 無事に感情的になることなく、お互いを信用しあうことで情報を共有することが出来ました。
 ロールプレイに進みましょう。

・片方だけ成功した
 成功した方が、感情的になりかけた失敗した方を何とか宥めることが出来ました。
 失敗した方のフラグメントボックスから1個を選び、「忘却」にチェックを入れてください。
 次にフラグメントを「変異:傍らへの不穏→共有できないもの」に変異させてください。
 その後ロールプレイに進みましょう。

・両方が失敗した
 互いが思わず感情的になってしまい、それによって互いの絆が揺らいでしまったようです。
 2人はそれぞれフラグメントボックスから1個を選び、「忘却」にチェックを入れてください。
 次にフラグメントを「変異:傍らへの不穏→共有できないもの」に変異させてください。
 その後ロールプレイに進みましょう。

ロールプレイの指針
 判定が終わったら、結果に基づいてロールプレイを始めましょう。
 いきなり垂れ幕に触れるのではなく、入り口や窓から脱出できないか探ったり、警備や宿直の先生はいないか声をあげてみたり、警報装置を調べる(当然、電気は消えてしまっています)などをすると、異界に放り込まれた困惑が伝わり、後の判定に成功した場合の互いの信頼の現れや、失敗した時の年若い少女が異常な環境に放り込まれた困惑などを演出できるでしょう。
 またお嬢様学校の生徒ということで、バインダーもシフターも少し大げさなくらいのロールプレイをした方が、忘却してしまったフラグメントで少しずつ性格が変異していくのを表せるかと思います。

結末
 この異様な状況において変化を認められるのは、垂れ幕の指示だけ。
 とりあえずそれに従ってみることに決めたら、物語を先に薦めましょう。


チャプター2「信頼の証明」(異界深度6)

状況説明
 指示に従うことを決定すると、垂れ幕は「信頼を証明せよ」という文言に変化します。
 それを2人ともが確認する、あるいは読み上げるなどを行うと、奇妙な白い靄が互いの顔から上を包み込んでしまい(靄の中からの視界は確保されています)、相手が本当に相手なのかを確認する手段が減ってしまいます。

※手を触れさせる
 このチャプターでは手を触れ合わせることで、シフターの視界が次のように変わります。
・垂れ幕の文字の色が真っ赤に変化し、血で書かれているように見える。
・見たこともない制服(実は大花都女学院の旧制服です。シフターの設定によっては知っていても構いません)の女の子が一瞬ステージの上に見える。

判定
「互いを信頼していることを証明する」 難易度:6

 顔は見えなくなってしまったし、声も心なしか別人みたいに聞こえてきます。
 相手のことをそれでも信じられますか?

・2人とも成功した
 互いのことを完全に信頼しあい、相手が自身の最愛の相手だと一切疑うことなく証明することができました。
 ロールプレイに進んでください。

・片方だけが成功した
 片方が不審や不安に囚われそうになりましたが、成功した方が何とか宥めて、落ち着かせることができました。
 失敗した方のフラグメントボックスから1個を選び、「忘却」にチェックを入れてください。
 次にフラグメントを「変異:本当に貴女ですか?→揺らぐ信頼」に変異させてください。
 その後、ロールプレイに進んでください。

・両方が失敗した
 不安の感情が爆発してしまい、互いのことを信頼しているとは思えないほど取り乱してしまいました。
 両方のフラグメントボックスから1個を選び、「忘却」にチェックを入れてください。
 次にフラグメントを「変異:本当に貴女ですか?→揺らぐ信頼」に変異させてください。
 その後、ロールプレイに進んでください。
 

ロールプレイの指針
 両方が成功した、あるいは片方が成功した場合は、互いの小さな仕草や口癖、あるいはお互いしか知らないであろう思い出などを語ることで盛り上げることができるでしょう。
 バインダーとシフターで示し合わせて、ここで2人の出会いの過去描写を入れる……などすると更に盛り上がるかも知れません。
 逆に失敗時もそれらの出来事を話し合うことで、片方あるいは両方がそのことを変異によって覚えていない、という絶望的な描写もできるでしょう。

結末
 互いを信頼しあっているかどうかはともかく、信頼関係の形を表すことには成功した貴女たち。
 垂れ幕は新たな指示を示し、次の場面に移ります。


チャプター3「敬愛の証明」(異界深度7)

状況説明
 垂れ幕の指示は新たに「敬愛を証明せよ」の文言に変化しています。
 また、あちこちから自分たちのものではない笑い声や囁き声が聞こえ、いずれも言葉遣いは丁寧ですが貴女たちの絆を囃し立て、傷つけるようなひどい言葉をかけてきます。
「どうせ一過性の感情でしょう?同性同士で恋愛ごっこ、卒業したら男に媚びを売るに決まってますわ」
「姉妹だなんだと言っても、いずれは離れ離れになるんでしょう?それに血道を上げるなんて馬鹿馬鹿しくなくって?」
「誰でも良かったんでしょう、寂しさを埋めて貰えるなら。次の寄生先を探さなくてもよろしくて?」
 異常が本格化し始める中、お互いを敬い、愛していることを証明できるでしょうか?
 

※手を触れさせる
 このチャプターでは手を触れ合わせることで、シフターの視界が次のように変わります。
・周囲に大花都女学院の制服(旧制服含む)を着た少女たちの幻影が見える。
・何故かその全員が、シフターが姉の場合は左手、妹の場合は右手を喪失している。
 

判定
「周囲の声に負けることなく、互いへの敬意と親愛を叫ぶ」 難易度:7
 怪異かつ無礼な声たちに負けることなく、互いに尊敬しあい、確かにお互いを必要としあっているのだと証明する必要があります。
 シフターを異界から連れ戻す役目を持つバインダーは、特に周囲の幻影たちへと啖呵を切るような形で証明をすべきでしょう。

・2人とも成功した
 お互いを如何に敬いあっているか、必要としあっているか、他の誰にも変わりができないかを声高く証明することができました。
 ロールプレイに進んでください。

・片方だけが成功した
 異常な状況に翻弄されてしまう片方を、強い敬意や親愛を語り掛けることでなんとか正気づかせることができました。
 失敗した方のフラグメントボックスから1個を選び、「忘却」にチェックを入れてください。
 次にフラグメントを「変異:周囲からの圧力→この想いは永遠ではない?」に変異させてください。
 その後、ロールプレイに進んでください。
 

・両方が失敗した
 異様な状況と押し寄せる声に圧倒され、自分たちの関係の正しさ、強さを声にすることができませんでした。
 両方のフラグメントボックスから1個を選び、「忘却」にチェックを入れてください。
 次にフラグメントを「変異:周囲からの圧力→この想いは永遠ではない?」に変異させてください。
 その後、ロールプレイに進んでください。

ロールプレイの指針
 ある意味では本作における最大の見せ場とも言えるパートです。
 この関係の強さを心から信じている場合でも、不安を何処かで感じている場合でも、それを思う存分語ってみてください。
 同じ内容、例えば「この関係は絶対に揺るがない!」と叫ばせるにしても、成功時ならば強い感情の炎を感じさせるものになりますし、失敗時なら逆に何処か空虚に響くそれに必死にすがる姿が哀愁を誘うでしょう。

結末
 互いの敬愛の形を、どんな風にであれ証明した貴女たちの周囲から不気味な声と幻影は消失し、舞台上に見たこともない制服(大花都女学院の旧制服)を身に纏った少女が現れます。
 彼女はたった1人なのに、芝居がかった仕草で拍手をした瞬間、周囲は万雷の拍手で包まれます。
「ようこそ、今回の守護天使たち……互いの為に、この学院の未来の為に、その絆を最後に見せてもらいますわ」


ファイナルチャプター「選別のガーディアン」(異界深度8)

状況説明
 2人の前に現れた少女は告げます。

「貴女たちは真なる“守護女神の天杯”に選ばれました。絆深き姉(シフターが妹の場合は妹)が永遠に姉妹の繁栄を祈る儀式。さあ、こちらへおいでなさい。私と、私たちと1つになりましょう!」

 そう言って少女は両方が左手(シフターの妹の場合は右手)になっている自身の腕を異様に伸ばし、シフターに向かって掴みかかってきます。
 バインダーはシフターを守り抜き、2人で脱出を図らなくてはいけません。

※手を触れさせる
 このチャプターでは手を触れ合わせることで、シフターの視界が次のように変わります。
・襲って来る少女の背中に無数の手が生えており、それらもこちらに差し向けてきていること
・縦横無尽に伸ばしてきているように見える腕が、入り口や窓を避けているように見えること

判定
「少女から逃れ、明けない夜の学院を脱出する」 難易度:8
 最後の判定は2人ともが成功するまで終了しません。そのことを告げてから最後の判定へ移ってください。
 縦横無尽に伸ばされる少女の腕。しかも、シフターにしか見えていない異形の副腕まで存在しています。
 2人が無事にこの異界を脱出する方法は……?

・2人とも成功した
 シフターの指示の元、腕の攻撃を掻い潜る姉妹。
 やがて伸ばされた腕は入り口や窓に接触してしまい、自分たちがどれほど脱出しようとしても叶わなかったそれらを易々と破壊し、そこから太陽の光が漏れ始めます。シフターには、それが現実の大花都女学院から漏れ出しているのだと一目で分かります。
 脱出しようとすると異形の少女が叫びます。

「ま、待ちなさい!貴女たち、これからのことを考えたことはない?この箱庭から出れば貴女たちの自由は終わる、バラバラに引き裂かれて不幸になるに決まってる!でも、その腕を、そう捧げれば!片割れの幸せを保証できる!絆を!絆を証明しなさい!貴女たちの愛を証明するのよぉぉぉぉっ!」

 あるいはこれまでも“守護女神の天杯”の裏側で、こうやって少女たちの不安に漬け込むようにして、この恐ろしい存在は儀式を続けてきたのかも知れません。貴女たちは、そのことにどんな感情を抱くでしょう……。
 ともあれ、少女たちは現実へと駆け去り、アフタートークへと進んでください。

・片方だけが成功した
 伸ばされた腕に弾き飛ばされた姉妹を必死に受け止め、脱出のチャンスを探ることになります。
 失敗した方のフラグメントボックスから1個を選び、「忘却」にチェックを入れてください。
 次にフラグメントを、シフターが最初に失敗した場合は「変異:腕が!腕が!→痛みもなく腕が千切れそうになる」に、それ以降はシフター、バインダーともに「変異表:恐怖」と「変異:幻想化」を交互に変異させてください。
 その後、2人でもう一度この判定に挑んでください。

・両方が失敗した
 伸ばされた腕に2人とも弾き飛ばされ、地面を転がりながら懸命に逃亡のチャンスを狙うことになります。
 両方のフラグメントボックスから1個を選び、「忘却」にチェックを入れてください。
 次にフラグメントを、シフターの場合は「変異:腕が!腕が!→痛みもなく腕が千切れそうになる」に、バインダーとそれ以降はシフターは共に「変異表:恐怖」と「変異:幻想化」を交互に変異させてください。
 その後、2人でもう一度この判定に挑んでください。

ロールプレイの指針
 これが最後のチャプターです。
 互いを信じ、絆を束ねて、異形の少女から逃れ光射す世界へと帰還しましょう。
 最後の判定では両方が成功するまで脱出はできません。じわじわと増えていく変異に絶対絶命感を出すと盛り上がることでしょう。
 脱出時、貴女たちは異形の少女に何を語り掛けるでしょう。あるいは語ることなどないでしょうか。

結末
 光の中に飛び込むことで、貴女たち姉妹は元々眠っていたベンチへと戻ってくることができました……無事かどうかは別にして、ですが。
 それでは、物語の結末を描きにアフタートークへと進みましょう。


アフタートーク

結末の分岐
 バインダー、シフターともに「忘却」にチェックの入っていないフラグメントが1つでもあるならば、そのキャラクターは現実世界へと帰還することができます。
 全てのフラグメントを忘却していた場合は、そのキャラクターは常夜の大花都女学院へと閉じ込められてしまいますし、もしシフターに「変異:腕が!腕が!→痛みもなく腕が千切れそうになる」がついていてしまった場合は、異形の少女に腕を引きちぎられることになります。
 また、この際にバインダーのみが現実へと帰還していた場合、以降はバインダーは何かに守られているかのように幸運に包まれた人生を送ります……死すらも選べないほどに。

変異への抵抗
 無事に生還したなら、変異への抵抗を行い、フラグメントを取り戻しましょう。
 バインダーは6面ダイスを振り、2人の変異の中からダイスの出目の個数まで選んで、元に戻すことができます。次にその出目と同じ数だけ、忘却のチェックを外すことができます。また、戻す変異と外すチェックが同項目である必要はありません。
 どの変異を直し、どの忘却を外すのか、2人で相談して決めるといいでしょう。
 今回のバインダーとシフターは高校生という設定の為、肉体的な変異が残ってしまった場合は、隠すのに苦労することになるでしょう。

ロールプレイ指針
 変異への抵抗を終えたら、元の世界に帰還後のロールプレイを始めましょう。
 “守護女神の天杯”の裏側を覗いたことで、貴女たちは出場を固辞するかも知れません。それは何も恐れ故ではなく、異界で確かな絆の確認ができたことからの心境の変化の場合もあり得るでしょう。
 あるいは、様々な資料を調べて儀式のことを探ろうとするかも知れませんが、残念ながら学校にはもうほとんど儀式に関する資料は残っていません。ただ、この学校の設立時に何故か軍部からの後押しがあったこと、一番最初に大花都女学院に通うことになった生徒たちの中に、異形の少女と容貌のよく似た少女の映った古い写真を見つけるくらいです。
 ともあれ、貴女たちは掛け替えのない日常へと無事に帰還することができました。そのことをまずは2人で祝いあうべきでしょう。お疲れ様でした!

フラグメントの追加
 ロールプレイを終えたら、新たなフラグメントを1つ取得することができます。
 フラグメントの内容は自由に決めて構いません。
 2人の想い出や決意、あるいはパートナーがほめてくれた容姿などがいいかも知れません。また、変異で失ってしまったフラグメントを取り戻してもいいでしょう。
 それでは、少女たちの次なる物語を楽しみにしています……お疲れ様でした。



蛇足気味なあとがき

 まさかの第8回ムビシナ2本目です。「アンサング・デュエット」のルルブをゲットして興奮が納まりませんでした。已む無し。
 これの何処が「ホーム・アローン」やねん!と思われるかも知れませんが、「自分の陣地を守ろうとする者と2人組の対決」という骨子と、あとケヴィンが1人でクリスマスを謳歌していた場面と泥棒コンビとの戦いに挑む調度中間の、何だか物寂し気な様子が酷く印象的で、気付けばこんな感じの話になりました。
 ちなみに本編中で語るチャンスがありませんでしたが、本来の“守護女神の天杯”に選ばれた少女たちが生贄に適さないのは、その絆が強すぎて困難を自分たちで乗り越えていってしまう、言わば百合漫画などにおける「主人公」だからで、異形の少女はそういった強すぎる存在を避け、相手を思う故に自分を捧げてしまいそうな危うい乙女と標的にしていたから……という裏設定があります。この儀式、本当に設計段階からガバガバだったんですね(笑)。
 今年も一年、ムビシナには楽しませていただきました。改めまして良いお年を!

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