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傑作『甲賀忍法帖』とかバジリスクの話

甲賀忍法帖すなわちバジリスク

甲賀忍法帖。1958年に書かれた山田風太郎の小説。
バジリスクの名前で知っている人も多いかなと思うのですが、バジリスクは甲賀忍法帖をせがわまさきが甲賀忍法帖を原作忠実に書き起こした漫画のタイトル。同タイトルでアニメ化されパチスロになり陰陽座が歌う同タイトル甲賀忍法帖もヒットしたために断片的でも知っている人は多い作品じゃないかなと思う。

日本版ロミオとジュリエット

甲賀忍法帖が傑作と言われる所以はたくさんあるのだけど、先ずプロットが面白い。そして発刊された時代を考えるとメチャクチャ読みやすい小説である。ライトノベルやチームバトル物の先駆けと言われている。エンターテインメントのありとあらゆる要素が詰まっている傑作!

プロットが面白いといったが、先ず主人公二人がロミオとジュリエット的構成になっている。そしてその二人がバトル物として最強の二人である。さらには、愛し合う二人を実際の歴史になぞらえた陰謀によって殺しあわなければならない運命の渦に巻き込まれていくこと。詳しく説明しよう。

甲賀の王子様と伊賀のお姫様の物語

甲賀と伊賀という忍者の里がありました。忍者って今でいうところのスパイや諜報部というところなんだけど、この伊賀と甲賀は他の国の外注先という立ち位置。他の国から依頼されて汚れ仕事をやる組織。いわば企業。
そんな伊賀と甲賀は企業的にもライバル、汚れ仕事的にも敵対していて憎みあう相容れない組織。数百年憎み合うこの二つの里。
そんな中、世の中を平定してしまった徳川家康。単純に外部の諜報部は邪魔でしょうがない。そして殆ど用事がなくなってしまった為にいがみ合う理由がなくなりつつある伊賀と甲賀。そんな2つの里の王子様とお姫様が惹かれ合い結婚して1つの里になろうとしていた。
そんな甲賀と伊賀のハッピーエンドに向けて進んでいくことをぶっ壊す人物がいた。それが徳川家康である。

歴史になぞらえたプロットがすごい

後継者選びに悩んでいた家康。その世継ぎ争いを甲賀と伊賀の忍法争い(戦争れべるの戦い)によって決めることにした。そうすればどっちも共倒れする可能性が高いし、自社お抱えの忍者以外は邪魔でしょうがない家康からしたら一石二鳥。伊賀が勝てば竹千代、甲賀が勝てば国千代。そんな里の事情もお構いなしの殺し合いバトルで丁半させるんだから鬼すぎる。

もちろん、そんな史実はないんだけど実際に竹千代と国千代の世継ぎ決めには相当困っていたのも母方が共に争っていたのも事実だったりする。それを小説のプロットに無理なく組み込む山田風太郎おそるべし。

みんな大好きチームバトルも先駆け

二つの里から10人ずつの代表を選び、殺し合いをする。最後まで生き残った者が巻物を家康の前に持ち帰ること。これのせいで結婚目前のロミオとジュリエットは殺し合いの渦中にぶちこまれていく。

そんな10対10のバトルロワイヤルが開始されるんだけど、お互いが忍者なので超人的な術を使うという設定もファンタジーバトルの先駆け。術に相性があったりするのも、聖闘士星矢の黄金宮編やキン肉マンの悪魔超人編なんかで描かれたチームバトルっぽい1対1バトルで生かされている。
これはちなみに小説だから生まれた、映画や漫画のようにひとつのカット・シーンで複数のキャラクターを分かりやすく動かせないから生まれた「タイマンバトル的手法」だというのも素晴らしい。たしかに小説だと2人のやり取り以上になるとゴチャゴチャして読みにくいもんな。

陰陽座の作品愛がすごい

アニメのオープニングを担当しているこの『陰陽座』。和風メタルの先駆けバンドなのだが一見イロモノバンド風だが技術も凄いしっかりした素晴らしいメタルバンドです。アイアンメイデントリビュートに日本人で唯一参加していたりね。そんな陰陽座の作ったオープニングが『甲賀忍法帖』。

♪♪♪水のようにやさーしくー花のよーにはげしくーふるーえるやーいばでつーらぬーいてぇぇぇぇ♪♪♪

そんなフレーズ聞いたことあるでしょう。あれです。そもそも陰陽座は忍法帖シリーズという山田風太郎オマージュの楽曲をたくさん書いていて、その10作目となる曲だったりするんだけど、甲賀忍法帖という作品や山田風太郎に対しての愛が凄まじい。

歌詞の中に「さだめられた二人を、あおい闇が裂いても」とあるんがこの「あおい闇」という歌詞が「葵闇」と表記されている。
そう、あおい闇は「葵(徳川)の闇」。徳川の陰謀に二人の運命が引き裂かれようとも死んでもなお二人は揺蕩う。そんな小説愛あふれる楽曲なのです。

バジリスクの作者せがわまさきの小説に対するリスペクトがすごい

甲賀忍法帖を原作に漫画として描き起こしたのが『バジリスク』。もちろん原作から着想を得て脚色して描く漫画も傑作は多いけれど、このバジリスクの凄いところは「甲賀忍法帖を忠実に漫画にしたらこんな感じ」を100%で描き切っているところ。あまりにも忠実なのでバジリスク読んだら、実質甲賀忍法帖読んだといっても差し支えないほど。
こんなに原作に対して敬意を感じる漫画はあまりみたことがない。ハッキリ言って凄いと思う。
ちなみにアニメも文句なしの傑作で、アニメバジリスクも漫画のバジリスクに忠実に作っており、本当にお互いがお互いにリスペクト溢れる作品です。

結論、バジリスクは読もう

長々書いたけど、頭からっぽで読んでも面白いし、漫画でもアニメでも小説でもどれで見ても読んでも最高なので少しでも興味持ってくれたらぜひ手に取ってほしい。

ちなみに映画化もされていてSHINOBIっていう作品が(略)


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