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「エンドレス・ポエトリー」

 「ダンケルク」、「ブレードランナー2049」と、音圧、眼圧、体感がものすごく刺激された映画の印象がいまだ拭えないまま、待ちに待ったホドロフスキーの新作「エンドレス・ポエトリー」を観にいった。
 シネマカリテはスクリーンが右に寄っているけど、椅子が心地いい。ほいっと腰掛けて、もはやのっけから気持ちがリラックスしている。にやにやしてしまう。やはりこういう映画のほうが好物なのだと自覚する。

 ドキドキする、ワクワクする。でもそれでいて嫌な気持ちにならないし、陰鬱にも陥らない、自然と頬がゆるんでしまう、そんな映画が好きなのだ。これからはじまる「エンドレス・ポエトリー」はその予感に満ちている。

 暗くなってすぐ、広告や他の映画の予告編などなくはじまるところがいい。映画館のこういう演出は、ほんとうに素晴らしいと思う。「それ=映画」はやはりこうして突如として「起こる」からこそ楽しい。

 トップカットから前作「リアリティのダンス」のエンディングに引き寄せられる。あれはあくまで仮に措定された終わりでしかなかったといわんばかりに、物語はあらたに接着される。船着場のイメージに晩年のアンゲロプロスの連作を思い起こしてしまうものの、ホドロフスキーの軽快さとユーモアを信じているからこそ、気を許して身をゆだねられる。
 映画の時間という小舟に揺られ、人生の海をたゆたう。ホドロフスキーの水先案内は、どこまでも気持ちがいい。観ながらずっと笑っていた。ときに大きく声がでてしまう。こんな世界があるのなら、喜んでその世界にひきこもりたいとさえ思う。

 眼圧、音圧、そして身体に受ける圧力にほとほと気疲れしているのなら、「エンドレス・ポエトリー」でたくさん笑うことをおすすめしたい。お客さんがいっぱいになって、「ダンケルク」や「ブレードランナー」のときのような、大きなスクリーンでもう一度観たいと思う。
 

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