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進化する秋田を紐解く ~ 秋田ノーザンハピネッツ 熊谷航 interview ~

熊谷航、彼の加入で秋田に新しい可能性がもたらされたことは間違いない。今回は彼と共に今シーズンの秋田を振り返り、進化する秋田を辿っていく。その言葉から、まだまだ秋田は進化していくと確信した。彼らと共に秋田は新しいページをめくっていく。(取材日 : 5月14日 インタビュー・写真 : 宮本將廣)

今回のインタビュー能代電設工業株式会社様のサポートにより、実施させていただきました。企業情報などは以下のリンクをご確認ください。

自分の良さを出せたのが半分、出せなかったのが半分

宮本 今回は熊谷選手の感触を伺ってから、今シーズンを紐解いていきたいと思っています。今シーズンを振り返ってみるとどうですか?
熊谷 最初がなかなかうまく行かなかったんですけど、シーズンを通して成長できた部分があったと感じてます。ただ自分の良さを出せたのが半分、出せなかったのが半分ぐらいかなって感じですね。
宮本 以前、ケンゾーさんにも話を伺いました。熊谷選手は三河、信州というハーフコートバスケットが特徴のチームを経験してきました。特に信州はすごくオーガナイズされていて、ハイピックからペイントタッチ、コーナーへのキックアウトでオープンシュートを作り出す。秋田とは違うタイプのバスケットボールをやってきた中でケンゾーさんはそこを活かしつつも、熊谷選手が持っている縦への速さをもっと活かすことができれば、もっと違う熊谷航を見せていけるという話をしてくれました。秋田に加入するにあたってそういう話をされたと思うんですけど、どういうところが響いて秋田で新しいチャレンジをしようと思ったんですか?
熊谷 日本人が中心となって得点と取っていくというコンセプトも好きですし、速いバスケットボールをやってみたいという気持ちもありました。全員がボールを共有しながら攻めるところも魅力的だったので、秋田に加入することを決めました。
宮本 これはポジティブでもありつつ、ネガティブでもあるというか。秋田に加入したタイミングで日本代表に召集されて1ヶ月ほどチームから離れました。チームにとっては大事な時期で、合流したのは開幕節の北海道戦GAME2。次の試合から出場しましたが、やっぱり空白のある中で僕もそうですし、ブースターの方もなかなかうまくいかないなと感じる時間が長かったと思います。当時はどういう課題感がありましたか?
熊谷 自分の中では前よりも速くプレーしているつもりだったけど、メンバーに話を聞いてみると、「もっと速い展開にしたい」と言われたので、正直戸惑いはありました。あとはターンオーバーをしたときに僕は一回作りたいと思っても、ディフェンスを頑張ってもう一度速い展開に持っていくのが秋田のバスケットじゃないですか。今は理解できますけど、そこに当時の自分感覚とかなりズレがありました。そもそもディフェンスのシステムも学べていなかったので、正直20試合ぐらいはズレを感じていましたね。
宮本 じゃあ、連勝し始めてから、「こういう感じだな」っていう手応えが?
熊谷 そうですね。年末ぐらいから少しずつ自分の中でも手応えを感じるようになってきて、自分の良さも出せてきた。あとは外国籍選手との信頼関係も積み上がっていったなと思いますね。

年明けぐらいから習慣化されたディフェンス

宮本 ちょっと違う媒体さんも参加されるようなので、何か熊谷選手に質問ありますか?(中山選手が登場したので、無茶振り)
中山 そうですね。今まで所属していたチームが割とスローペースなチームだった中で、秋田は速いテンポでオフェンスをする。そのギャップというか、やりづらさはあったんたですか?
宮本 重複する質問になっちゃいましたけど(笑)。
一同 ハハハハハ。
中山 やばい、こっち目線(記者)だった(笑)!
熊谷 (笑)。それこそタクさんともいろいろ話しをしたんですけど、「もっと速いペースでもいいよ」って何度も言われました。最後は一緒に出ることが多くて、どちらもボールプッシュができるので、やりながらより速い展開を作っていくすり合わせができたと思いますね。
宮本 せっかくだから中山選手にも聞きたいんですけど、熊谷選手も言った通り、中山選手もボールプッシュができるわけじゃないですか。その中で、こういうときはどっちがどうするみたいな、ある程度のルールを決めていたりしたんですか?
中山 いや、ルールってほどのものはないですけど、基本的にはポイントガードの航がボールを受けてくれる。その中で僕たちはもっとペースを速くしたい。難しかったのはシーズン前に一緒に練習できなかったので、「こういうときはこうしよう」とか、「俺の方がボールに近かったら、航は走っていいよ」とか。試合をこなしながらそういうすり合わせをしていきましたね。シーズンの終盤になるにつれて、バランスがよくなっていったっていうのは僕もすごく感じました。
宮本 そこは熊谷選手も同じようなことを?
熊谷 そうですね、タクさんはガードもできるし、クリエイトもできるので本当に任せられる。同じガードとして出ていてすごく楽だし、助けられましたね。終盤になるにつれて良くなっていったなと思います。
宮本 ディフェンスについても聞いて行きたいんですが、秋田のディフェンスは他のチームとは違ってかなり特殊ですよね。ヘルプサイドもここまで寄るのっていうぐらい寄ってくるし、タグの出方とかも他のチームとは違いがある。シーズンが終わったから聞いてみたいんですけど、ポイントガードのディフェンスとして信州との違いはどの辺なんですか?
熊谷 信州のときは、基本的にピックアンドロールを2人で守っていました。スカウティングをして、この2人の場合はこういう守り方をする。この場合はこういう守り方というのがきっちりと決められていて、それを遂行していました。秋田は5人全員でラインを作りながら、ピックアンドロールに対しても2人ではなく、5人全員で守るという感じです。そこの違いがまずは大きいところですね。
宮本 その中でも、秋田はボールマンディフェンス以外のポジション取りが複雑というか。このときはここまでくるし、このときの身体の向きはこうとか。そういうのは自分の中で不安感みたいなものはなかったんですか?
熊谷 ありました。それは多分雷太も感じていたと思うので聞いてみてください。信州のときは基本的に「首を振るな」と言われていて、ボールマンと自分のマークマンが見える位置をとっていたんです。でも、秋田は首を振りながらボールマンとマークマンの確認をするんです。そこが全然違って、最初は特に不安がありましたね。
宮本 そこが掴めてきたのはどの辺だったんですか?
熊谷 うーん、年明けぐらいですかね。この試合っていうよりは年明けぐらいから習慣化されたというか。このポジションにすっと入って、速い展開にも持っていけるようになったのは年明けぐらいですね。


宮本 個人的なところを伺っていきます。熊谷選手は今シーズンの平均得点が8.2で、アシストが4.2でした。秋田の平均得点のリーダーが古川選手で10.8。彼以外に二桁得点がいないことを考えると、熊谷選手がもうちょっと打ち切ってもいい場面はあったのかなと感じています。秋田はリムエリア、ペイントに入ったエリア、スリーポイントがショットの優先順位として高いと考えられる中で、ミッドレンジがある程度許されているのは熊谷選手と古川選手だった感じています。その中で、熊谷選手はシーズン序盤は自分で打たずに周りに散らしていた印象が強くて、ラスト8(24秒ルールが残り8秒になってから)で自分にボールが来れば勝負していた。その辺はどんな考えがあって、そういう選択をしていたんですか?
熊谷 そこに関しては意識的にやっていたんですけど、今振り返ると少し積極性に欠けていたなとも感じています。最終戦とかは逆に、「何がなんでも自分が打つ」という感じで、確率が悪くても打ち続ける意識でやっていました。振り返ってみると、あれぐらいの積極性があった方がいいのかなと感じています。どちらかというと僕はファーストオプションに自分があって、そこからパスで散らす方というタイプだと思っているのですけど、最初の頃はチームとしていいバランスを見つけようと思ってやっていました。その意識がシューターを活かそうとしたり、パスファーストになってしまっていたというのは自分でも反省としてありますね。
宮本 なるほど。ケンゾーさんのバスケットはあまりミッドレンジをチョイスしないけど、あまり打たないでという話はあったりしたんですか?
熊谷 具体的にこれはだめっていうのは、他も含めて特にはなかったです。ただ奈良さんからフィードバックのクリップをもらうんですけど、そのときにタフショットがピックアップされたこともあったので、シュートセレクションや判断のところは自分も考えながらプレーしていました。
宮本 熊谷選手はペイントに入ってロールからのフェイダウェイとか、一見タフショットに見えるショットも得意だと思います。少なからず僕はそう認識しているんだけど、ああいったプレーがシーズン終盤にしか出てこなかったっていうのは?
熊谷 そもそもそこのエリアまで行けてなかったっていうのはありますね。そのエリアに行っても、ストップするという判断や選択が序盤はなかったんです。そこまで行ったら散らすか、レイアップでブロックされていたことが多かったんですけど、最後の方は少し冷静さというかいい判断ができるようになりました。前半戦はそこがなかったので、自分の良さも活きなかったというのは感じていますね。
宮本 その中で最後の千葉ジェッツ戦だったり、終盤戦は熊谷選手の良さも表現できるようになった印象がありました。こうすれば秋田は良くなっていくとか、こうやっていけば選手としてもっと成長できるなって感じたこと、得られたことを最後に伺えますか?
熊谷 チームとしては勢いがあるときはすごく秋田らしさを出せるし、どのチームにも勝つことができていたと思います。実際にチャンピオンシップを勝ち上がっているチームにも勝つことができましたけど、その中でやっぱり速い展開だけでなく、どう40分でバスケットボールを構築していくのか。ターンオーバーの質であったり、4Qの残り5分からのクロージングですよね。そこはチームとしての課題だと思います。正直に言えば、コートに立っている5人がひとつの方向を向けなかったこともあったと感じています。その中で自分としても少しずつですけど、表現できることが増えていったけど、もっとできたなというか……。ガードとしての力不足を感じたシーズンではありました。もっとクリエイトしていかないといけないし、もっと確率良くシュートを決めていかないといけない。チャンピオンシップを見ていても、最後は個々の力が問われる場面が多くて、特にガードがどれだけクリエイトできるか。勝ち上がっているチームはそこに強みがあると感じました。そこはまだまだ伸びしろというか課題だらけですけど、逆に言えばこのチームはもっと成長できるし、自分自身も成長できると思うので、来シーズンも楽しみですね。

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能代電設工業株式会社様
今回は以上の企業様のサポートにより、秋田での様々な取材を行わせていただきました。

能代電設工業様のサポートにより、秋田ノーザンハピネッツの取材も実施させていただきました。

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