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サントリーホールで柏手を打ってきた

(※追記:12月29日よりファンクラブ有料会員限定で、このリサイタルがファンクラブサイトから配信で見られるようになりました。そっち見たほうがいいよ!)

12月13日、角野隼斗さんのリサイタル@サントリーホールに娘と行ってきた。もう感染者激増でどうなることやらと心配していたが無事開催されてほっとした。例によってチケットは娘に取ってもらったのだが、2階席の後ろから数列目、しかも両サイドに分かれて一つずつというディスタンスな席だった(イープラスからのメールで、離れたお席ですがよろしいですかと念を押された)。なにしろ2000人入るところを、席を一つ飛ばしにして半分しか入れないのだから予定枚数は5分で完売。取れただけで充分ラッキーだった。
今回、アルバム「HAYATOSM」発売に合わせてリストとショパンからの選曲ということだったのだが、プログラム…今はセットリスト(セトリ)というんですかね、それが事前発表になっていなかったので先行配信販売をダウンロードして予習していった(もちろんCDは予約済み)。ショパンのノクターンなんて9の2ってやつしか知らなかったので、にわかにはついていくのが精一杯なのであった。今はネットでいろいろ調べられるから本当に便利。「死の舞踏」って死者(骸骨)が踊っている様子だったのね。

ということで人生初サントリーホール。こんなところ、一生縁のない場所だと思っていたのだが。開場となって中に入る。チケットの半券には名前と電話番号を書くように指示されていて、自分で券をもいで箱に入れる。会場内のアナウンスでは、常にマスク着用、なるべくしゃべるな、ブラボーとか叫ぶなと言っている。席に着いてホールの写真を撮ったりしていたら、すぐ下の通路にどこかで見たような男性が。…ひょっとしてござさん?その隣には…いりすさん?そしてその衣装はけいちゃん!なんと3人連れ立って2階席の一角に。しばらくして菊池さんも合流したのが見えた。2階席じゃなかったら気づかなかったサプライズであった。

開演前に着席を促すアナウンスがご本人の声で入る。
そして万雷の拍手に迎えられて角野さん登場。スーツ蝶ネクタイの演奏会用正装。何しろ人が少ないんだから倍の拍手をしないと。だけどさすがにサントリーホール、音がよく響く。私の席からだと表情がよく見えないので、そこは持参した双眼鏡を駆使して。コンデジは娘に渡しておいたけど、今回はさすがにMCも撮影NGだった。

最初に何を演奏するのかがオーディエンスの最大の関心だったので、皆固唾を飲んでピアノの前に座る彼を凝視、会場内の空気がピンと張りつめる。精神統一をしているのか、かなり長い間があいて始まったのが「英雄ポロネーズ」であった。
英雄ポロネーズとサントリーホール!うあ!これほどお似合いの組み合わせはありますか?このホールすごいね、きっとどこの席でも同じ響きだと思うよ。弾き切った彼がマイクを取るのかと思ったら、まずピアノの足元にあったペットボトルの水を一口。
めっちゃ緊張していたけど、めっちゃ楽しいと言葉をつなぐ。先ほどの本人アナウンスや本日の開催についての挨拶と、2人分の拍手の要求を左手で煽って会場の笑いを誘う。

続けてショパンを3曲。最初のはアルバムに入っている「ノクターンの13番」。次が曲名が分からなかった「バラードの2番」(これだから初心者は…)。最後は、これは動画にも上がっている「木枯らしのエチュード」。
水を飲んでMC。このときだったかな?言いたいことはストリーミングの終わりに言います、と。

その後に「小犬のワルツ」「大猫のワルツ」を続けて。
MCは今回のアルバムの紹介。リストを目指してクラシックでもあり、クラシックでもないものを作りたかったと。オリジナル曲「奏鳴」への思いと。
私の(一つ飛ばしの)隣に座っていたお姉さんが、そのタイトルを聞いて息を飲んだのが聞こえた。お目当ての曲だったんだろうな。おばさんもだよ。
「奏鳴」を聴いていて、ああやっぱり生の演奏は違う!とつくづく思った。音楽は耳で鼓膜で聴くだけじゃないのよ、全身の皮膚でも聴いているんだと。

一旦退場の後に始まったのが「愛の夢(角野アレンジ)」初めて聴いた時、あれ私の知っているやつと違うーと思った。ちょっとリズムが違ってて。
そしてこの曲が最後だとあらかじめ伝えられていた「ハンガリー狂詩曲」。リサイタル開始から1時間ほど。もう終わっちゃうの?
角野さんはよく顔をしかめながらピアノの演奏をするのだが、この曲は時折り笑みを浮かべて弾いていたように見えた。最近の動画も笑顔で弾いていることが多くなって、いいなと思う。
カデンツァに入って、あれ、これ配信版と違う?なんかボリューミー?と思った。途中でドレミファソーラファ・ミ・レ・ドが混じったりして豪華版といった印象だった。最大出力の拍手が送られた。スタオベしている人もちらほらといた。

アンコール、何が来るのかと思っていたらモーツァルトのソナタが始まった。ピアノを習う者なら誰もが通る、ドーーミーソーシーードレドーーってやつ。オーディエンスから笑い声が漏れる。それがそのうちきらきら星変奏曲に。どんどん音が重なって、左手が英雄ポロネーズのデデデデを弾いてると思えば右手が木枯らしのエチュードのキラキラキラキラを弾き出したりしてもういろいろ混じっての豪華版。拍手が鳴り止まない。拍手じゃ音が小さい。私がしたのは最大音量の柏手(かしわで)の連打だ。

二度目のアンコールの前のMCで。ここサントリーホールで初めて演奏したのは、2年4ヶ月前にピティナの特級ファイナルでラフマニノフのピアノ協奏曲第2番だったこと、そして今年同じ場所に戻ってきてまた演奏できること、そんな思い入れを語ったと思う。そして最後に弾いたのが、その協奏曲の第二楽章のピアノ編曲版だった。ここらへん、もう感無量。私の隣のお姉さんは泣いていた。
演奏が終わると角野さんは深々とお辞儀をした。四方向に向かってお辞儀をしたあと、ちょっと手を胸の前で合わせて静かに舞台から去っていった。

夜からの配信に向けて速攻で帰宅!夕飯はデパ地下弁当だ!

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ストリーミング配信は、同じ場所とは思えない演出で良かったな。角野さんも着替えていて、リアル公演が角野隼斗、配信公演がかてぃん、という二部構成みたいだった。
…やっぱりトイピアノはこっちだったか。
ラ・カンパネラ、リアルで聴きたかった。
ハンガリー狂詩曲のカデンツァは、これも夕方の公演とは違っていて、これは今後も弾くたびに違うんだろなと思った。本人も覚えていないなんて言っていたし、なんていうか神様降ろしているような憑依されてるようなゾーンに入っているような…いいな、そういうのって普通の人では到達できない地点なんだろうな。

最後のMCはなんだかよく分からなかったけど笑、先人への敬意を持ちつつ独自路線で新境地を目指す、ということであってますか?

この日の公演の最初と最後が英雄ポロネーズ、というのも印象的。ヒーローですな。舞台袖ではなく、客席後方へ去っていくのもかっこよかった。今回の公演で、「ショパンとリストを足して2で割った日本人」とか、「オーケストラをピアノ一台で奏でる男」、なんてフレーズが頭に浮かんだよ。
ところでストリーミング配信見ていて気づいたんだけど、右手の小指に絆創膏貼ってる?そんな絆創膏貼ってリサイタルする人、他にいないよ笑
(※12月25日追記:指の保護のためにあらかじめ貼ってらしたそうです。YouTubeライブで仰っていました)

三鷹のリサイタルから一年。世界も彼本人も大きく変わった一年だった。この人と生きている時代が被っていて、良かったなとしみじみ思った。これからもおばさんは、このやさしくてかしこくて、そそっかしくて天邪鬼な青年を応援するよ。

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