自分にとって大切だからといって
頭の中で連想ゲームが繰り広げられ、もし誰かが聞いていたらポカンとされてしまうだろうなというくらいに最初にいたところとは全然別の場所にいる、ということがよくある。
そんなこんなで今日も連想ゲームが繰り広げられ、ふと思い出したのが、外国の、とあるブックカフェ。そのお店のことを思い出すと、ふたつの理由で胸がきゅっとなる。
薄暗くて、本棚に囲まれた一人がけのソファに座って、カフェラテとブラウニー、というのが疲れたときの最高の贅沢だった。特別な隠れ家。誰かと一緒に行ったこともない。自分だけの大切な場所。私にとっては、けっして安くはなかったので、本当に心が疲れたときに逃げ込んでいた。胸がきゅっとなる理由のひとつはこれ。
そこは古本屋さんでもあり、私はなぜかHarry Potterシリーズをせっせと読んでいた。読み終わったら買い取ってもらって、また次の巻。そういえば、「Girl with a pearl earring」が読みたかったのだけど、私の英語力では2冊同時進行は心許なく、迷っていたらいつの間にか売れてしまってしょんぼりしたのだった。
滞在していた「その国らしさ」がまったくないこのお店は、私の心の支えの一つだった事は間違いない。日本人に会わないのもよかったのかも。完璧にひとりになれる場所。
帰国する少し前に、友人にそのお店を紹介した。疲れたときに行っていたんだと言ったのだったかな。内緒、とは言っていないけれど、誰にも言っていない特別な場所であるということは伝えたと思う。ひとりでこっそり行っていた、と。もしかしたら、彼女の逃げ場所のひとつとして役に立つかもなんて思って。
しばらくして、「○○と行きました!」と言われた。ああ、そうか、と思った。その相手のことも知っていたけれど。
そのお店は大通りに面していたし、たまたま知り合いには一度も会わなかったけれど、もしかしたら有名な場所だったかもしれない。私だけの特別な場所、だなんてとんだ勘違いだろう。そもそも、逃げ場所を提案するなんて大きなお世話だ。
そうは言っても。
心の奥をぎゅっと掴まれたみたいだったし、すごく寂しかった。「土足で踏み込まれる」という気持ちを味わった初めての経験だった気がする。
自分にとって大切なものを相手も同じくらい大切にしてくれるとは限らないのだ。押し付けることもできないし。本当に大切なものは、自分の心の中だけで大切にしておいたほうがいいのかもしれない。そんなことを思いながら、懲りない私はGoogleMapを検索する。確かこの辺・・・あった。古本を扱っているのは変わっていないようだけれど、お店の雰囲気はずいぶん違う。それとも、私の頭の中で記憶の改竄が行われているのか。わからないし、胸がキュッとなるけれど、記憶の中でやっぱり大切な場所。
追記:
万が一、よりも低い確率だとしても、本人が読んだらわかるかもしれないことは書かない、と決めていたのだけど(身バレ対策ではなく、誰かが私の書いたことで少しでも嫌な気持ちになったら嫌だから)なんとなく書いてしまった。公開しようか、消そうか迷っています。
*写真のこと*
たぶんこのお店のブラウニー。私は食べ物の写真を撮るのが好きなのだけど、お店の名前と一緒に撮っておかないと、後からどのお店かわからない、ということにようやく気がつきました。