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治療体験記 術前治療編②

今日は術前抗がん剤治療について書きます。
抗がん剤治療は、化学療法(chemotherapy)とも言います。

ちょうど数日前、英国キャサリン妃のニュースがありました。

今年3月に自ら「がん」を公表し自宅療養中だったキャサリン妃が半年ぶりに公の場に姿を現しました。
腹部の手術を受けた後、化学療法を続けているキャサリン妃は
声明で次のように語っています。

「がんの治療は順調に進んでいます。
しかし、化学療法を受けている人なら分かると思いますが、
いい日もあれば、悪い日もあります。」

とてもよく分かります。
抗がん剤治療は副作用を抑える薬がたくさん出ているとはいえ、
やはり体調に少なからず影響を及ぼします。
私自身も身を持って経験しました。

自分の力では体調の波をどうすることもできないのを痛切に感じました。

私が投与された抗がん剤は「トラベクテジン(ヨンデリス®︎)」という
名前の薬剤で開発されて比較的新しいもののようです。
婦人科がん関連では使わない薬剤です。
細胞毒性が強いため、心臓に近い血管(中心静脈)から24時間かけて点滴します。
そのため、私は入院初日にCVポート(皮下埋め込み型ポート)を
右胸の鎖骨の下あたりに留置する処置を受けました。
一度ポートを留置すると抜去するまで、点滴用として何度も使用できます。

トラベクテジンの副作用は、軽い倦怠感と吐き気、便秘、
骨髄抑制(白血球など血液細胞の数が減ること)などが主なもので
まれに横紋筋融解症という重篤な副作用も起こり得るとのことでした。
髪の毛が抜けることはほぼないそうで、実際私も髪は抜けなかったです。

当初の予定では4月から5月にかけて3週ごと3回投与を計画していました。
2回終わった時点で、私は平均よりも副作用が強く出てしまったようです。
抗がん剤投与中と直後は、吐き気止めの薬もしっかり入っているため
なんともないのですが、翌日あたりから一気に体調が悪くなりました。
吐き気(嘔吐)と倦怠感が強く起き上がれない状態が1週間続きました。
食べ物のにおいが一切受け付けられなくなってしまい、
あまり食べられなくなりました。

4月末、術前治療が始まってひと月ほど経った頃の日記には
心の葛藤が記されています。

・家族、特に高齢の父母に負担をかけていると思うと、つい涙が出てしまう
・きっとよくなると信じているし、心をしっかり保とうとするけれど、
ふとすると感情がぐらついて泣いてしまう

5月2日(木)、竹中先生の外来診察がありました。
3回目の抗がん剤のための入院予約をする予定でした。
この日、私は言おうかどうかずっと悩んでいたことを正直に伝えました。

「先生、3回目(の抗がん剤)、自信がないです」

医師でもある私がこのひと言を伝えるのはとても勇気のいることでした。
治療の重要性を分かっているからです。
でも言わずに、またあの苦痛に耐えることの恐怖の方が勝っていました。

患者としての正直な気持ちを伝えてみよう。
伝えた上で、主治医の返答がどういうものであったとしても、
かりに「大切な治療だから3回目もがんばりましょう」と言われたとしても
拒まずそれに従おう。
そう心に決めていました。

竹中先生の返答は、全く予想外のものでした。

「(3回目を中止して)すぐ手術にしましょう!」

驚くと同時に心底ホッとして泣きそうになりました。
希少がんである粘液型脂肪肉腫は、トラベクテジンによる化学療法に
「強い」エビデンスがあるわけではありません。
それは治療前から説明を受けていました。
言い換えると、必ず3回すべきというものではないのです。
加えて、この腫瘍は放射線がよく効くので、放射線治療を最後までやって
それからオペという方針に変わりました。

治療前は、術後にも2回ほど化学療法を加えることもあるという説明も
受けていたのですが、手術で無事に取り切れたら、それもなしにしましょうと
言われ、重苦しかった心が一気に軽くなるのを感じました。

手術は予定していた日程より1週間早めて6月5日に決まりました。

こうして、私の生まれて初めての抗がん剤治療は、
たくさんの忘れられない思い出を残して幕を閉じました^^
(胸のCVポートも先週、無事抜去してもらいました。)

※冒頭の写真は、初回の抗がん剤治療中の夜に病室の窓から撮った大阪城です。
ライトアップされていてとても綺麗でした。












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