今後はまさに「ケンタウロス」社会

 企業にとって、人工知能=AIやロボットの導入は、人員を削除して業務効率を改善し、高い収益を実現できるチャンスであるだろう。

 そうした中、企業で働く人々はAIの代替が難しい業務をすることになるのか、従来の業務でAIと協力するようになるのか。

 このような、今後のAIと企業の関わりや人間が果たすべき役割について考えてみたいと思う。

〈目次〉
・小売業では「スーパー店員」「レジ係」が対象に
・AIに今後期待されること
・AIに出来ること、出来ないこと
・AIでの代替が難しい業務とは?
・AI時代が進むにつれ、人間は面白い仕事ができるようになる
・伸ばすべきは、人間ならではの強み

小売業では「スーパー店員」「レジ係」が対象に

 今後、どのような業務がAIに置き換わるだろうか?

野村総合けんきゅうじょの報告によると、コンピュータ業務によって自動化される可能性が高いのは

「特別の知識・スキルが求められない職業」に加え、「データ分析や秩序的・体系的操作が求められる職業」であると分析されている。

 この「人口知能による代替可能性が高い100種の職業」には、店舗運営関連の職業では「スーパー店員」や「レジ係」などが含まれている。

 また既に売り場では、ロボットやデジタルサイネージ、VR、ARなどの技術を使った効率化・自動化が進んでいる。

 NECの調査によると、小売店の従業員が行う業務のうち、役割1/4をレジ対応などの決済業務が占めているという。

 スーパーマーケットに続き、コンビニでもセルフレジ導入を検討する動きが出てきているが、スマホ決済などのキャッシュレス化ぎ進めば、決済に関する業務を大幅カットできるだろうと考える。

 セルフレジの操作も、現時点では利用客が商品のバーコードをスキャンする形式が一般的だが、レジ台に商品を並べるだけでAIが商品を認識する技術も開発されている。

 実際、私の家の近くのスーパーでも去年11月頃からセルフレジが導入されるようになったり、コンビニでもキャッシュレスで買い物をするようになったことでレジでの滞在時間が短くなったりなど、日常を通じて社会の変化を感じるようになった。

 また最近のニュースでは、スーパーの無人店舗に何台もの監視カメラを置き、買い物客が事前にクレジットカードの登録をすることにより、店で買い物カゴに入れた商品を監視カメラが分析し、クレジットカードから引き落とすというシステムも開発されたということである。

 Amazon Goも上と同様のサービスであるが、レジ台に並べた商品だけを認識して決済する方法なら、レジ台を投影するカメラだけで対応できるので、コスト削減が期待されるだろう。

 AIに今後期待される事

 AIによって自動化が進むにつれ期待されているのが、バックヤードやバックオフィスの業務である。

 特に銀行などの金融業界では、AIに職を奪われてしまうのではないかという危機感が強い。

 アメリカの大手銀行シティグループでは、銀行のバックオフィス業務の多くが自動化され、2015年から2025年までの10年間に欧米の銀行員の約3割が職を失うと予測されている。

 実際私が就活していた時期にも、日本の金融業界が新入社員の採用人数を大幅カットしたり、学生側も今後のAIの発展を見込み金融業界を遠ざける傾向にあった。

 銀行の場合は、電子マネーの普及によるキャッシュレス化や、フィンテックによる銀行業務自体の簡素化などの要因が大きく影響している。

 キャッシュレス経済が急速に進むスウェーデンでら、現金による支払いを拒む飲食店や小売店が増え、ここ10年間で市中に流通する現金は半減した。

 それに伴い、現金を一切扱わない銀行の支店も珍しくないということである。

 世界最大のインターネット普及国である韓国でもこのような動きが活発化されている。

 2017年9月から韓国に留学していたが、その当時はもちろん日本よりもキャッシュレス化が進んでおり、ほとんどの現地人が決済の9割をカードで行っていた。

 しかし去年の11月2週間韓国に滞在した際、留学当時よりも多くの店で現金が使えないようになっていて驚いた。

 このような例を見ても、AIでバックオフィス業務が自動化されたら、さらに銀行人の数が減るのは当然の流れであるだろう。

 AIに出来ること、出来ないこと

 AIと人間の関係性を示す表現として、「ケンタウロス」という言葉がある。

 人間が上半身で、AIが下半身

 別々のものが一体となって動くというイメージである。

 AIに限らず、RPAもそうであるが、人間が教えたロジックや、人間が示した判断基準がなければAIは動かない。

 最近では、AIが人間の脳に違い仕組みで学習できるようになり、人間が教えなくても画像を見分けて分類できるようになったが、見分けるロジック自体は人間が設定しているのである。

 つまり、まだ完全な上半身にはなりえていないというのが、AIの現状であるといえるだろう。

 AIでの代替が難しい業務とは?

 AIが苦手な対応として、「不合理な判断」がある。

 例えば、老後の資金について、AIのファイナンシャルプランナーに相談したとする。市場の流れやリスクなどを合理的に判断して投資先を提案してくれるだろう。

 しかし、世の中には「投資」というだけで、漠然と不安を感じる人もいるだろう。

 このような状況になった場合、人間のファイナンシャルプランナーであれば、そういう不安を掘り下げて取り除くこともできるが、AIにはそのようなら理屈に合わない判断や行動に対して、柔軟な対応ができない。

 また、会話の中で相手の心のひだにふれることも苦手である。

 人間同士であれば、相手の反応を見ながら言葉遣いに気をつけたり、相手の機嫌が悪そうであれば、いきなり本題に入らず別の話題から初めてみたり、

 そのような心のひだを読んだ行動ができるが、このような判断はAIには難しい。

 AI時代が進むにつれ、人間は面白い仕事ができるようになる

 上で述べたように、AIができる業務とは、基本的にはデータを集めて、単純な分析やアウトプットをすることである。

 集めたデータから「これとこれは相互関係がありそうだ」などの新しい仮説を生み出すことはできないのである。

 つまり、仮説を立ててデータを検証するなどの頭を使う作業は人間に残されていくと考える。

 今後の世界では、AIと人間が役割分担をするような「ケンタウロス」社会になっていくだろう。

 AIやRPAに簡単な事務作業をしてもらい、無人で工場を動かすことを可能にするのである。そして、感情や心情を必要とする仕事を人間が行うのである。

 伸ばすべきは、人間ならではの強み

 上で述べた通り、これからは新しいことを発送したり、考えたりするような頭の使う作業や、人間らしいコミュニケーション、理屈では割り切れないことへの対応など、人間ならではの仕事が残っていくだろう。

 誰しも、これまで生きてきた経験やその中で培った感覚があるはずである。

 つまり、クリエイティブな部分は誰でも持っているということである。

 また、人間は曖昧なことや理屈に合わないことも、イメージとして認識することができる。

 言葉では伝えられない「快適さ」や「嬉しさ」といったイメージを感じ取り、周りと共有できるのは人間の特徴である。

 何かしらの工夫やイメージ、心に触れる能力は誰もが持っているものであり、一人一人が心の中に持っている人間らしい部分を強化しながら聞いていくことが、これからのAI時代で人間が活躍できる方法であるだろう。

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