#04 Dragon Ash - Life goes on <その一、思い出>
僕ら世代はDragon Ash世代ではない。
僕が音楽を自発的に聴き始めたのが小4〜5の頃で、ちょうどリーマンショック前の2006,7年だった。
この頃ぐらいから、仲の良い子たちが音楽を聴き始めていて、僕はそれを見て、「なんか、いいな」って思ってた。
当時の僕は、見栄を貼りたい年頃だったこともあって、周りの子たちより大人びて見られたかった。
僕にとって音楽を聴くということは、大人っぽくて、イケていて、周りよりも一歩進んでいるかのように写っていた。
当時のポップスシーン、さらには同級生の間では、FUNKY MONKEY BABYSやAqua Timez、ET-KINGなどが流行っていて、僕も真似して聴いていた。
だから、Dragon Ashを知る由もなかった。彼らのピーク時は2002〜3年頃迄なので、自ら掘り下げなければ出会わないグループだったのだ。
- Dragon Ashについて -
Dragon Ashは90年代末〜00年代前半に活躍したバンドで、日本のミュージックシーンにおいて、HIPHOPを一気にメジャーへと押し上げた立役者と言われている。
今でこそ、ミクスチャーロックバンドとして、HIPHOPとは異なるサウンドを奏でていますが、当時絶頂期だった彼らはHIPHOPを取り入れて人気を博していた。
その絶頂期に彼らがリリースした曲が、この「Life goes on」という楽曲。
2002年1月にリリースされたこの曲は、当時のJ-PHONE(後のボーダフォン。僕ら世代だとソフトバンクモバイルの前身と言った方がわかりやすいかな?)のCMソングに起用され、80万枚を売り上げた、同グループの代表曲でもある。
- きっかけ -
僕がこの曲を初めて聴いたのは、高1の夏の頃。2000年代メドレーをYouTubeで流して勉強していたときに偶然発見しました。
Dragon Ashというグループを知ったのは、中2の春頃でした。よく観ていたSPACE SHOWER TVに、「ROCK BAND feat. SATOSHI, KO-JI ZERO THREE」という曲が流れていて、純粋に「このラップかっけえなあ」とぼんやりながら感じていました。
それから約2年が経ち、メドレーの動画内でDragon Ashの名前を見たとき、「え、この人たちこんな前から曲出してたんだ!」と驚いたのを覚えています。
そのメドレー動画ではサビしか聴くことはできないのですが、その僅かなサビの一部から、「心地良いノリ」を感じていました。
そこから彼らにハマるのに時間はかかりませんでした。16歳ながら、「これが自分の求めていた音楽だ」と、そう直感的にわかったのです。
すぐにTSUTAYAへ行ってベストアルバムを借りて、小5から愛用していたTOSHIBAのgigabeat(知っている人いるのでしょうか笑)に入れて、ひたすら彼らのエッセンスを吸収していきました。MVも飽きることなく繰り返し繰り返し見続け、ペンを握るより携帯を握る時間の方が圧倒的に多くなっていました(笑)。
なによりも、降谷建志(Kj)に惚れていました。音楽も、ファッションも、顔も、声も、全てが彼の虜になっていた。本当にかっこよかった。リアルタイムで聴けなかったのが残念でならなかった。
HIPHOPにのめり込むようになったのも、Dragon Ashがきっかけでした。RIP SLYMEも昔からよく聴いていたけど、ルーツや、当時の音楽シーンを深く知りたいと思ったのは、彼に出会ったからこそでした。
僕にとって、この「Life goes on」との出会いは、後の人生にも影響を与えるほど、かなり大きなものだったのです。
- Life goes on について -
さてこの曲、リリース時期は、アルバム「LILY OF DA VALLEY」を引っ提げた全国ツアーや、Kj主催の音楽イベント「TOTAL MUSIC COMMUNICATION(TMC)」のツアー後間もなく。
本作は、前作「Lily's e.p.」 までのノリも踏襲しながら、新しい領域にチャレンジし始めた実験的な曲になっている。まあ、彼らの曲は実験的なものばかりだけど(笑)。
冒頭から流れるアコギのメロディーを一聴するだけでも、本作のハートフルさを感じるだろう。前作収録曲「静かな日々の階段を」でもアコギを使用しているが、本作はよりパーティーソングチックになっており、サビがそれを上手く演出している。
そのサビのメロディーには、Fan Factoryの「I wanna be with you」(95年)のサビの引き直しを使用(これに関してはパート2で詳しく話します)。ポップスソングのメロディーを上手くアレンジさせてハメ込んでいる。同じメロディーでもここまで変わるものなんだなと感心していた。
全体を通して転調が多く、聴く箇所によって異なる雰囲気を楽しめる。それらを一つの曲としてバランスよく、そして上手く一体化させているのはさすがはKjといったところ。
前アルバム「LILY OF DA VALLEY」では、Limp Bizkitらに代表されるようなニューメタルやラップメタル要素の強い曲が多く、彼らなりにロックとヒップホップを上手く融合させていた。
先述の通り、本作はその要素も取り入れながら、Smash Mouth「All star」(99年)や、Chumbawamba「Tubthumping」(97年)のようなラップを入れたポップロック要素も上手くミックスさせている。
当時の日本のメジャー音楽シーンでこの曲をヒットさせるのはすごい。2002年のシングルランキングにおいても、この曲だけ異質だ。(参考:http://the-musicbox.net/japan_singles_2002.html)
MVにもかっこいい要素が凝縮されており、よくKjの振る舞いを真似していた。時代が過ぎた今でも、この頃の彼のかっこよさは薄れることがない。
曲含め、ぜひ一度このMVを観てほしい。ちょっとヤンチャな男の憧れが全て詰まっている。(MV:https://youtu.be/KxMvJEbEyqk)
- 結び -
主観だが、彼らはこの曲を皮切りに、世間から言われるような「HIPHOPをやっているバンド」ではなく、「HIPHOPも取り入れたミクスチャーロックバンド」になろうとしていたように僕は思えるのだ。後のシングル「Fantasista」やアルバム「HARVEST」では、その意気込みが顕著に表れている。
この曲はHIPHOPではないとか、パクリだとか(これに関してもパート2で詳しく話します)、この曲に対しては賛否両論あったと思う。だけど、僕がこの曲を好きだという思いは変わらない。
周りからの批判に遭うと、どうしても好きという思いがブレることもあると思う。本物志向の人は特に、「これは紛い物だ」と感じることも多いだろう。
でも、それが紛い物だっていいじゃないか。その紛い物にだって好きと思える人がいればそれでいいと僕は思う。
僕は自分がかっこいいと思うものを信じ続けたい。ああでもない、こうでもないと、評論家を気取っているようでは、永劫そこに辿り着けない。
彼らの音楽は自由だ。首尾一貫としたスタイルではないけれど、根っこにあるものは不変で、その常々で、彼らにとってのタイムリーな表現を追求している。僕にはそれが美しく見えて仕方がない。
彼らが音を奏で続ける姿に、僕は常に奮い立たされてきたし、これからもきっとそうなのだろうと思う。今年は久しぶりに彼らのライブに顔を出したい。