見出し画像

#02 Big Pun - Twinz (Deep Cover '98) (Feat. Fat Joe)

前回のASKAからの、突然のBig Pun。ただ先程まで聴いてたから書くという統一感の無さですが、案外このようなスタンスの方が選曲で迷わず書けるので楽です。

1. Big Pun

Big Pun (Big Punisher) は、ブロンクスを中心に活動していたFat Joe率いるTerror Squad出身のラッパー。2000年に惜しくも心臓麻痺で亡くなっていて、シングルはそこそこ出していますが、生前にリリースしたアルバムは「Capital Punishment」の1作品のみ。90sのラッパーってかっこいい人たちがめちゃくちゃ多いのに、様々な事情で一発屋で終わっているパターンが多くて、長く活動しているのはごく僅かな印象がある。今もなお人気なラッパーには、既に亡くなっている方も少なくないです(Notorious B.I.G、Big L、2pac、Eazy-E…などなど)。

僕はよくUSのHIPHOPを聴くのだけど、好きなラッパーで十本刀を挙げてくださいと言われたら、Big Punは絶対に選ぶ。それぐらいBig Punのラップはショッキングでした(後述に詳細あり)。

2. ドープすぎるトラック

Big Punの曲はR&B調が多くて、HIPHOPに馴染みのない人でも割りかし聴きやすい(はず)。「Twinz (Deep Cover '98)」も入っている先述の「Capital〜 」というアルバムは、グラミーにもノミネートされているので、メジャーにもウケがいいのかも。

しかしながらこの曲は、そんな世間的印象を振り払うかのような強烈なドープさを持っている。「Capital〜」収録曲の中には、歌モノ等のメロウなトラックばかりではなく、この曲のようにクソドープな曲も多く散りばめられていて、ビギーの1stアルバムばりの多彩さを感じる。

実はこの曲、92年にリリースされたDr.DreとSnoop Doggの「Deep Cover」のremixなのです。トラックまんま使いなのに、ノリ方に結構違いが出ていて面白い。僕的にはBig Punのver.の方が好き。

Dr.Dreが手掛けたトラックで、しかも「The Chronic」と同時期(そのあとぐらいかも)に制作したと思われるので、見事なダークG-FUNKに仕上がっている。
サンプル元は、Sly & the Family Stone「Sing a Simple Song」(1968年)と、The Undisputed Truth「(I Know) I'm Losing You」(1975年)。あと映画かなにかの声ネタ。
これらのネタに加えて、開幕から畝るベース、ピアノの和音(たぶんピアノなはず…間違ってたらすみません…)に、G-FUNK特有の高音シンセやらをミックスすると、このおどろおどろしいトラックが出来上がる。

90年代初頭の西海岸のギャングスタラップのトラックなのに、この二人がラップを乗せると妙なほど東の雰囲気にフィットする。ニューヨークのプロデューサーが手掛けたと言われても疑わない気がする。

当時のウェッサイサウンドを楽しみながら、Big Punの矢継ぎ早に飛ばしまくるライムも楽しめるという、なんて贅沢な曲だこと。

3. 一級品のライミング

盟友のFat Joeを迎えて、Dreの極上のトラックに、休む暇なく代わる代わるラップを畳み掛ける。主題にTwinzとあるが、当時のブロンクスでは、巨漢ラッパーといえばこの二人が有名で(ブルックリンだとNotorious B.I.G、みたいな)、両者揃うと双子ばりの相性の良さを感じざるを得ない。

Fat Joeのラップも勿論最高なのだけど、この曲は特にBig Punのラップがエグすぎる。
上手いラッパーがわんさかいた90sでも、その中でも、とりわけ彼はライミングにおいてトップクラスのスキルを持っていると思う。

一般的に言われるラップって、小節のケツでタイミングよく韻を踏むことがベースとされているのだけど(Eric B. & Rakimの「Paid In Full」(87年)なんかを聴くとわかりやすいかも)、彼はもうほんとに天晴れなほど色んなところで踏みまくる。
さらにはビートアプローチもかなり上手い。あらゆる箇所でライミングしているのに、リズムキープの正確さゆえに、聴いていて違和感を覚えることなく気持ちよく聴ける。

0分26秒間辺り(Spotifyカウントです)、「Dead in the middle of Little Italy, 〜」のところなんて常人では到底真似できない。よくもまあこんなに舌が回るなこの人。

特に2分27秒辺り、「Fxxk peace, I run the streets deep with no compassion〜」から始まる彼のバースは、隠されていたエンドルフィンが溢れ出してくるぐらい心地良いので、「あ〜最近エンドルフィン出していないな〜」って人はぜひ聴いてみてください。あゝ脳汁が止まらない。

もうBig Punの新しい曲は聴けないけれど、亡くなった後に未発表曲を含めたアルバムが2枚出ているので、それも併せて聴いてほしいところ。


というわけで第2稿は、東西のギャングスタによる、スペシャルコラボ感溢れる極上shitについて書いてみました。
我ながらちょっと玄人向けな内容になってしまった感が否めませんが。


これ書いてみて思ったのが、DrakeのNonstopばりに止まらない。意外と飽きずに続けられるかも。また片手間に次もやってみます。


https://youtu.be/AiwvPmRTv6M

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?