15「質疑応答」ただしい人類滅亡計画―反出生主義を考える―
前回の振り返り
パープル:
話が入り組んできたので、少し整理してみましょうか。
人間を新しく生みだすことには、当然ながら良いことも悪いこともあります。それは、世界に生み出された当人にとっても言えるし、当人が生み出された世界についても言うことができます。
だから、出生のいい面に着目すれば、出生者が幸せになれるとか、出生者が世界にとってよりよいことをするといった、出生のメリットを述べることができます。逆に、出生の悪い面に着目すれば、出生者が不幸になるだとか、出生者が世界にとっての害をもたらすといった、出生のデメリットを述べることができます。
では、新たに人を出生させることは、結局のところ良くも悪くもない……というか、ただ結果的に良かったり悪かったりする行為にすぎないということになるのでしょうか。ブラックさんは、ここで善悪そのものの運用基準を示して、悪を引き起こさないことが善を生みだすことよりも優越する、という証拠を示しました。
ブラックさんが言うには、人が道徳的に負っている義務は「不幸を生み出さないこと」であって、「幸福を生みだすこと」ではない。人を幸福にするような行いは確かに善行であるとされますが、あくまでも二次的な義務……「できる人がやればよい」という義務にすぎず、われわれはみんな「誰かを不幸にしない」という原理のほうを優先するような道徳観のもとで生きているというのです。
よって、誰かを出生させるという行為は、「幸福を生み出す」という二次的な義務は満たすかもしれないけれど「不幸を生み出さない」という、より重視されるべき義務に反している。だからやはり出生は悪なのだというわけです。
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