遠距離乾杯
コロナが今程拡がる前、恋人と同棲を始めるため住み慣れた故郷を離れた。
家族や友人、前職の方々にまた近いうちに会いましょうね、飲み行きましょうなんて言いながら。
蓋を開けてみれば、引っ越して数日もしないうちにみるみる感染者が増えてしまい、今もまだ故郷に帰れず、その約束は果たされていない。
そう、直接という意味では。
直接顔を合わせられない代わりに、テレビ電話をすることが増えた。
両親に至っては、前よりも顔を合わせて話せるから嬉しいなんて言っている。
お互い忙しくて中々飲みに行けなかった友人と頻繁にリモートで飲めるようになった。
画面越しにガラスを合わせる仕草にも慣れた。
思わぬ形だが、良い副産物ともいえる。
ただやっぱり、グラスとグラスがぶつかる時の音とあの心地が恋しい。
今はまだその時ではないけれど、いつかきっと。
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