とにかくぼくは デレク・ベイリーとかいうギターの人が 一日中ただギターを弾いたように それと同じように書く方法として 「自由連想法による文章練習シリーズ」を書きはじめたわけで しかしそれでもまだいろいろな何かしらに縛られているのは間違いないにしろ とにかくこうして書き進めることができているうちは まったく問題ないだろうと思っている やがてぶくどんをぬいで また着て またぬいだぼくは スーパービックチョコや草もちをそれほど食べたいと思わない理由のいちばんは やっぱり気温の上昇だろうと思った もちろん食べようとおもえばいくらでも食べられるどころか あれば必ず食べるにちがいなく しかしそのために買い物にいこうとまでは思えないという 要は「今どうしても食べたいものはとりあえず何もない」というこの素晴らしい状態に ぼくは今なかなか嬉々としている 一口食べると二口や三口どころか 二十口も三十口も食べたくなってしまうものたちに仕掛けられた多くの罠から完全にのがれることはできないにしろ 日々のがれる努力をしているぼくにとって お腹いっぱい神話を継承している野田は まさに死に突き進んでしまっているようにしかみえない だからぼくは野田の店にいかないのだというふうにもいえるが いちいち言うのが面倒くさいほかの理由もたくさんあって でも最後には一回必ずいこうと思っている 同じくヨッケと桂木のところにももう一回顔をだして 後生の別れになるかもしれないことにまで踏み込んで とはいえそれを軽いノリで伝えたいと思っている とにかくぼくは面倒くさい人間すぎて たくさんの友人たちに気を遣わせてしまうことがどうもやめられないらしく だからぼくは青森にはむしろいないほうがいいだろうという結論に達した ちょうど飯田も中田ももう青森に帰ってくることはないことも ぼくの背中というか運命を後押ししたような気がして ともあれ妻の仕事場は六本木になるだろうことから 近辺の物件をネットでさがしてあきらめて少し眠ってから 起きてようやく書きはじめて 妻はつまり今日何時に帰ってくるのか?の見当が微妙につかないにしろ どのみちマグロの刺身は明日に回すべきという決断だけは早々にした ぼくのじゃあ今日の夕食はなにかというと 母がつくった微妙な揚げだし豆腐と 同じく母がつくった妻好みじゃない太く切りすぎてあるキンピラゴボウもろもろで そのくせ東京の弟には成功したハンバーグを送ることを申し訳なさそうにいってきた母に そんなことよりバイトをすることの了解を父にちゃんととるようにとぼくはいった
自由連想法による文章練習【8】