見出し画像

スタートアップ企業における難しい仕事と容易な仕事。創業者における仕事の難易度の峻別と仕分け。

本日で創業して6ヶ月。

初めの半年間は、向こう3年間で売上100億円という事業計画を立てているため、其の達成難易度の仕分けを行っていた。創業すれば起業家や投資家の知り合いも増える。真摯に耳を傾け、事業における達成難易度に耳を傾けた。

難易度が難しそうに見えて、実際には難易度が低い仕事

例えば、資金調達。創業前に何人かの起業家に相談したこともあり、必要時間軸と、自らの社会与信と照らしての資金調達金額と投資供給先は判断できていたこともあり、(投資家の皆様に大変感謝しつつも)達成難易度は実際には低いことを理解していた。

また難易度が高そうに見えて、実は容易な仕事の1つはコンパウンドスタートアップや複数事業展開。

これもイメージと照らし、難易度が高そうに見えて達成難易度は低い典型的なもの。資金調達と優秀な人材採用さえ担保できていれば、複数事業の運営は当たり前に実現できている企業が歴史的にも多く、其のための管理運営手法も確立されている。容易な仕事の部類である。前職でもいくつもの事業を運営経験もあり、PeopleXの経営チームからするとむしろ慣れている仕事の1つである。

むしろ難しいのは、単一事業で運営されたチームを後から複数事業化することである。同じく自社運営に慣れたチームが上場後の成長戦略で後からM&Aを成長路線に変えていくことである。仕事には実際には多くの社員の想いや感情の起伏があり、組織運営の慣性の法則を変えるのは多くの社員の反対と戦わなければならない難しい仕事となる。

採用活動も難易度が高そうに見えて、実は容易な仕事である。やるべきことが決まっている。人類初のイノベーションやアイディアは不要で、やるべきことを最短で実装することである。必要な人材のリスト化、人材ロングリストからの声がけ、クロージング、リファラルを前提とした採用活動に専念すること。

PeopleXも現在6ヶ月間で40名近くの人員となっているが、リファラルとダイレクト応募経由で採用できており、採用サイト、採用Deck、エージェントなしでできている。今後もエンジニア、デザイナー以外の職種は1,000名規模でも拡張性があると考えている。

このように実際にスタートアップ企業を運営してみて、歴史的に手法が確立されている仕事は実は容易で、実行力勝負な仕事は実行力を伴えばよい。頭を悩ませたり、会議は不要にすることが重要である。

他の企業を見ていると採用定例など、実行力勝負なところを戦略を議論していたり、戦略が重要なところを実行力勝負にしていたり、仕事の難易度における峻別/仕分けを行い、何を議論し、逆に何には議論せずに歴史的に証明のついている事実は実装するだけと峻別することこそが創業者の仕事なのだと理解した。

本当に難しい仕事

創業者の本当の仕事は、この仕分け作業にある。

創業者は対外的な象徴業務もあり、それは信用を毛体化する重要な仕事となる。インサイダーにおいて信用がおける人物と見做されれば、この仕分け作業は他社から情報流通することが可能であり、その情報輸入業務は、社員の多くの時間を救うこととなる。

社員においては初めての事象で戦略議論が必要と思われる業務も、他社では既に実装のROI判断が終わっている業務であれば、それを輸入し、いち早く実装力勝負に持ち込めるからだ。他社で3年かけた検証であれば、自社でその3年間を早回しできる。

PeopleXでは行動規範の1つに「異常速度で、社会実装していく。」を挙げているが、その多くは上記仕分け作業から生まれているものである。歴史的に証明された事実を重要視し、自社の少ない議論よりも信憑性が高いと判断している。

逆にやらないことは、他社のnoteなどを参考にすることである。弁護士的に言えば事実かの信憑性が薄く、事実と評価と主観的事実が多分に含まれている証拠価値が低いエビデンスである。創業者自身が体感した生の気迫のこもった証言が証拠価値が高い。

もう1つ付け加える難しい仕事がある。内政である。

創業者は基本的に外交の仕事で忙しくなる。投資家とのIR活動、アライアンス、採用活動、自社広報など、外交は創業者自らが出るかどうかで効果に雲泥の差が出る。会社の顔としての責任を果たす必要がある。

そのため内政に時間が取れなくなった結果、内政に多くの時間をさく事象が発生する。他社スタートアップ企業に話しを聞くと、多くの創業者が外交でなく、内政に頭の悩みをさいているケースが多い。すると業績向上に専念できなくなり、結果的にモメンタムが生まれず、より内政が必要になる悪循環である。

上記に挙げた仕分け業務も、高い内政自治ができていないと実装難易度は異様に高まる。他社からよく聞く話しで「会食の後に、うちのCEOがまた意識が高まって、別の戦略を言い始めた。」と。実際には上記仕分け業務を行っているも、信用力が低いと、実装に時間がかかる。

多くの丁寧な説明が求められ、本来説明不要で明日から実装力勝負に持ち込まなければならないところ、社員に対しての丁寧な説明、理由付きのフィードバック、異論反論の受付、異論を考慮した最終の意思決定、中庸な決定により実装しても中庸な決定となってしまうこと。これが内政が弱い会社の作用となる。

ただ、これは社員目線からすると合理的な思考過程となる。

信頼のおけるリーダーであれば其の決定に疑問を挟まず、説明なしでも「きっと正しいのであろう。」で、すぐに実装できる。この信頼がないリーダーであれば、まず「本当だろうか?」と疑いながら論理的な立証に耳を傾け、論理構成に矛盾でも見つかれば異論反論となり、更なる合理的説明を要することとなる。信頼、はとてもROIが良いのである。

そのためPeopleXでは行動規範に「信頼」を挙げて、重要視している。信頼は自然発生的に在るものではなく、育てていくものである。信頼で誤っているものとは「この人は信頼できる/信頼できない。」と判断するものである。それが最も信頼が置けない。

どのような人物でも、まず信頼する。そして徐々にお互い育てていく性質のものだからだ。そしてそれは相互に存在しないと成り立たない。片方が信頼を育てようと思っているのに、もう片方が「其の時点での信頼」ベースで判断する者であれば信頼関係は育っていかない。

逆にこの相互信頼が成り立ちさえすればこそ、強い組織が生まれる。ゲーム理論が成り立つ性質のため、この社員同士の信頼の価値観を維持するためには、中央組織で、信頼を育成でなく判断するものとの考え方を逐一駆逐していかなければならない。

逆に他社で強い組織力を持つ会社はこれが強い。

「あのCEOが言ったから、うちの会社は一斉に動くよ。」と言い、急な新規事業に一斉に社員がシフトしてノルマを課されても社員が一斉に動き出すような企業である。もしかしたら「うわー、その会社怖いな。」と思う方もいるだろうが、価値観や思考の問題でなく、実装力の問題でどちらが強い会社かは明白であろう。それを権力発動で行うか、信頼で行うか、教典により行うかの根拠の差であり、効果面からすると同様の効能が得られる。

PeopleXでは実装力を「信頼」により行うと判断した。信頼は、実装力に大いに依存し、経営チームが外交に専念できる効果をもたらす。本当に難しい仕事の1つである。

以上のように、経営には実は容易な仕事と、本当に難しい仕事が存在する。歴史的事実で証明された事実に時間を割かずに実装すること。そしてそれは本当に難しい仕事である「信頼」により成り立つもの。

お読みいただきありがとうございます( ´ ▽ ` )ノ