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2023年3月締め請求書のお手紙

私たちデザインモリコネクションは、陶磁器デザイナー・森正洋さんのデザインした製品の卸売を主な活動としていて、毎月、お取り扱いいただくショップのみなさまへ請求書をお送りしています。
ふと思い立って、2021年9月分から、請求書を発送する際、お手紙を同封するようにしました。その時々に思ったことなどを書いています。イラストレーターのデータに直接書いているので、何を書いたか分かりやすく保管しておく意味もあり、noteに置いておきます。
請求書をデジタル化した方がいいんだろうけど、その場合、こういうお手紙をどういう形でつけたら良いのか、悩ましいところ。


この3月で、10年ほど活動してきた地元の消防団も退団かなと思っていたら、なり手不足や所属しているが出動しない、いわゆる「幽霊団員」問題もあり、人員確保のため、残ることにしました。

消防団が身近でない方もいらっしゃると思うので、消防団の概略を整理すると

・他の本業を持ちながら活動する、非常勤特別職の地方公務員
・地方交付税より、自治体の条例で定められた額の報酬が支払われる
・火災など災害が発生すれば出動し対応する
(火災の場合、水利から消防ポンプを使い放水するなど)
・平時も防災について広報したり、避難訓練に参加したりする
・階級制度を採用していて、団長・副団長・分団長・副分団長・部長・班長・団員、という構成。
・女性の団員(市役所職員が多い)もいるが、女性部という形で、別枠になっている

というところでしょうか。

災害対応を除けば、決まった行事を繰り返していて、主なものを列挙します。

■毎月1日15日に消防ポンプの点検。作業の後、飲み会。
■春
・入退団式(2年に1回。体育館にて式典の後、店を予約し区の役員さん達を招いての歓送迎会。その後、自分たちだけで二次会・三次会。2019年度からは歓送迎会は休止。2023年度は開催される模様)
・春季訓練
■夏
・夏季訓練
■秋
・秋季訓練
・操法大会(ホースやポンプの取り扱いの、スピードと丁寧さを競う競技。2年に1回。2019年度から休止しているが、2023年度は開催される模様。2週間、月曜から金曜の夜19時から21時まで練習。その後飲み会。大会後は、店を予約しコンパニオンさんも手配し飲み会。二次会・三次会もある)
■冬
・年末警戒(12月28日〜30日、20時から0時の間、3回見回り。残りの時間は飲み会)
・出初式(冬の早朝、グラウンドに整列し、市長、警察署長、消防署長、消防団長などの訓示。その後、消防団主催で、区の役員さん達を招いての新年会。2019年度以降は休止中。役員さんもすべて男性なので、男性だらけの飲み会)

基本的に、あらゆる行事に飲み会がくっついています。昔からそうだと思いますが、いまも、出席率の良い団員は、みんなでワイワイ飲むことを楽しみに来ているようです。消防団員のほとんどは男性のため、男子校というかボーイズクラブというか、ちょっと偏っているなあと思うこともありますが、先輩後輩の良い関係というのも見受けられます。おそらく私のいる部は、かなり雰囲気の良い部で、活動のしやすさや、みんなの居場所として成立しているかどうかは、部によってものすごく差がありそうです。

概略で、「地方交付税より、自治体の条例で定められた額の報酬が支払われる」と書きました。報酬には、年額報酬と出動手当・訓練手当の2種類があり、それぞれに市役所から部の通帳へ振り込まれてきます。そこから団員個人へ渡すのかと思いきや、軍手やなんかの細々したものの購入や、各種の飲み会、2年に1回、団員が退団するタイミングでの旅行(2019年度以降は休止中)に使っています。最近では総務省(消防庁は総務省の外局)で、上記のような報酬の不透明な流れが問題になり、個人へ支給するよう自治体へ通達が出て、それぞれに対応を進めているところのようです。しかし、個人支給にすると頻繁に行われる飲み会の費用をどう捻出するか、やり方を考えないといけないので、消防団の幹部たちの間でも意見が割れていそうだなと推測しますが、どうなんでしょうか。

私の所属する嬉野市消防団全体としては、まだ報酬の個人支給は行われていないのですが、私が所属する部では、独自に去年から報酬を個人へ渡すようにしてみました。とはいえ、それで団員の意欲が上がり、出席率が良くなったかというと、まだ1年しか経っていないのでなんともいえませんが、意欲や出席率とは関係がないかもしれません。来る人は来るし、来ない人は来ない。

マイケル・サンデル「それをお金で買いますか 市場主義の限界」で、スイスの放射性廃棄物・貯蔵場所の事例が紹介されていて、詳細は省きますが「金銭的な動機付けによって、市民としての義務感や公共心が弱まってしまうことがある」そうです。そうであれば、報酬を出すことで、かえって意欲が減る場合もあるのかなと心配しています。かといって、今まで通り、飲み会という形での現物支給だけでいいのかというと、市民としての義務感や公共心から消防団に参加するけれど、別に飲まなくても良いという人が取り残されるし、悩ましいところ。

政府や県、市などの自治体では、消防団に入ろう!消防団はいいよ!みたいな広報活動をしていますが、前述した通り、活動のしやすさや、居場所として成立するかどうかは、それぞれの部の運営方法がすべてなので、広報だけでは、消防団員不足は解決しません。新たな団員が入っても、イヤな先輩がいたり、お金の使い方がおかしかったり、部の居心地が良くなければ、行かなければ良いだけなので、幽霊団員化してしまいます。また、地元の同年代の男たちだけで集まっているからこその「面白さ」「楽しさ」が、消防団への意欲になっているのは確かですが、地元の同年代の男たちだけで集まっているノリに馴染めない人にとっては、なんの楽しさもないと思います。

嬉野市には自治会とは別に「地域コミュニティ」と呼ばれる小学校区を基本の範囲とする住民組織があり、広報誌を作ったり、サークル活動をしたり、ゴミ拾いしたり、ウォーキングイベントをしたり、いろいろな活動をしています。

私の考えとしては、消防団をこの「地域コミュニティ」の一部として編成しなおして、性別を問わず、また多世代の関わる組織にした方が良いと思っています。そうすることで消防団が開かれた集まりになり、同じ小学校区に住むみんなで関わる活動にすることができそうです。その場合、もちろん、地元の同年代の男たちだけで集まっているからこその「面白さ」「楽しさ」がなくなるので、地元に残って暮らしている20〜30代男性が参加する動機付けが難しくなるかもしれません。

うーん、これからの消防団は、どういう形が良いんでしょうね。

ともかく、嬉野市消防団員1044人中、女性が36人だけ(平成29年データ)というように、圧倒的に男性しかいなくて、それゆえ男性だけの楽園のようになっていて、そこが問題の根っこなんじゃないかなと思っています。

2023.3.31

デザインモリコネクション有限会社
小田寛一郎

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