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人間の生き方は「向かうか」「離れるか」だけ

むかし、といっても1年前くらいだけれど、カウンセリングに通っていた。

自分のやりたいことがあって、それと同時にやりたくないことがあって。そのやりたくないことをやらないために入った会社だったのに、気づいたらそのやりたくないことをやることが仕事になっていた。

抽象的すぎて分からないかと思うので、もう少し解像度を上げると、要するに書きたくないタイプの記事をつくっていた。

ユーザーとしてそういった記事が嫌いだったからこそ、編集者になってそういう記事をなくそうと思っていたのに、気づいたらその記事を量産するのが自分の仕事になっていた。

自分がいったい何をしたかったのか、どこに向かって進んでいたのか、自分の現在地が分からなくなり、ストレスで持病のチックが悪化した。

うつ病と診断されたり、仕事に支障が出始めた段階で、家族の勧めもあり心療内科を受診することに。治療としては、主に2軸。チックの原因になっているストレスの特定と緩和、そしてチックの治療だ。このストレスの特定と緩和には、カウンセリングが行われ、半年くらい通ったのだけれど、その間で自分の考えが大きく変わった。

カウンセリングの先生と話していると、自分のストレスの正体が浮き彫りになっていく。先生が教えてくれるわけではない。ただ、先生と話すことで、自分自身が気づいていく。先生は、そのきっかけを与えてくれるに過ぎない。

僕のストレスの原因は、会社との方針のちがいにあった。

となると、一番シンプルな解決方法は会社を辞めること。しかし、新卒入社した会社を1年弱で辞めることには抵抗があった。自分が弱いだけなんじゃないかとか、世間的に入社後1年弱での退社は印象が悪いのではないかとか、自分の向かう先が正しいのか自信がなかったとか、いろいろなことを考え、後ろ向きに回答を先延ばしにしていた。

そんなときに、先生が教えてくれた言葉がある。

「人間の生き方には、向かうか、離れるかしかないんですよ」

会社に入る前は、僕はその会社に向かっていた。しかし、いまは離れたいと思っている。そして、それだけの話なんだと。

興味や関心があるものには、向かっていく。でも、ちがうなと思ったら離れればいい。それでまた別のものに興味が出てきたらそっちに向かえばいい。常に同じ場所にとどまる必要はなく、向かうと離れるを繰り返して生きていくのが人間。会社を辞めるのではなく、逃げるのでもなく、会社から離れて、また別のところに向かうだけなのだから、難しく考える必要はないと、教えてもらった。

この考え方が、僕を救った。もちろん、現実的には会社を辞めるわけだし、逃げたとみなされたりするわけだけど。でも根本が変わった。逃げるために辞めるわけではなく、他のもっと向かいたい場所に向かうために一度離れてみよう、そういう心持ちになった。そして、そこまで考えてみて、もっと自分本位で生きてみたいと思った。

自分本位で、向かう場所や離れる場所を決めて生きていきたい。自分の人生に責任をとれるのは自分だけなのだから、好き勝手に、心のおもむくままに生きてみたい。

離れることを決めたとき、目の前に無数の向かいたい道があることに気づいた。きっと離れてみないと見えなかったものなんだと思う。いろいろ窮屈に物事を考えていたけれど、こんなにも選択肢があるものかと驚いた。このときほど、人生って楽しいんだなと思ったことはない。

そしていま、向かいたかった道のいくつかを選んだ場所にいる。もっと向かっていきたいし、楽しくて仕方がない。いまの場所は、物理的な場所を変えなくても、さまざまな方向に向かうことができそうなところも気に入っている。無責任とはちがう話だと言うことは理解してほしい。いまの場所でも、きちんと自分で責任がとれるようになってから、自由にやっていこうと思ってる。

この話は、仕事を辞めたいとか何かから逃げるとか、何か本気で悩んでる人の一助となればいいなと思う。我慢なんかしなくていいよとか無責任に辞めていいよとは言わない。でも、その我慢が本当に必要なものなのかは考えてみる価値がある。

案外、あなたが我慢するべき問題じゃないかもしれない。

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