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交換による資本主義と情報化時代のプラットフォーム

 今回は、ブローデル物質文明・経済・資本主義15-18世紀日常性の構造の都市の誕生と、情報化社会の企業について考えてみたい。

資本主義を土台にした中世都市の誕生

 ブローデルによると、西ヨーロッパは3つのタイプの都市を見出した。それは、(a)開かれた都市、(b)閉ざされた都市、(c)後見下に置かれた都市という。都市は、農村によって作られ、また農村は都市によって築かれた。初期の年は、農村が再構成されたものであり、その結果元々存在した領主・世俗的君主・高位聖職者などの政治的・社会的権威の影響を免れなかった。

 それに対し、(モーリズ・ロンバールによればイスラム圏からもたらされた)貨幣というイノベーションが、状況を大きく変えた。貨幣の交換可能性が市場を指数関数的に強大化したのである。そのため、都市の姿をまとった資本主義が登場し、その主役は、他の都市や国家との交換によって巨大な富を得た資産家となり、国家は都市の政治的・社会的権威の後見としての地位のみに留まることとなった。

 その後、世界経済の中心となった都市は、国際貿易、金融ビジネスなど、時代の要求とともに変遷する。都市は、自身の内面的要素だけではなく、外部のイベントに応じて、姿を変容してきた。但し、ある一時点で見てみると、ある都市が巨大な金融資産を蓄え、交換量を増やし、一人勝ちという状況が現れる。それに対して、社会は政治的ルールを変更したり、新しい社会的な価値観を提示することによって、その中心を動かし続けているのだ。

情報化社会のインフラを制するデジタルネイティブ企業

 この貨幣による資本主義の益を貪る都市と、情報化によって金融資産を集める企業には、何か共通点があるのだろうか?貨幣によって加速されたものの交換に対し、情報技術によって可能になったインタラクションとそれによる関係性の構築。それら企業の一つとしてGAFAをみてみると、B2C企業であり、顧客とのインタラクションによって、関係性の構築で圧倒的に優位に立った。ものの交換と関係性構築の違いはあっても、都市とデジタルネイティブ企業は、貨幣あるいは情報のプラットフォームの活用で一人勝ちしたという点は共通と言えるのではないか。

  貨幣の交換によって巨大化した市場、情報インフラによって生まれた受容者との新しい関係性と蓄積されるデータ、そのインフラストラクチャーは、私的使用の場合、winner takes allを引き起こす。これらが社会全体に影響を与える基盤であるならば、他の道路などの公的基盤を参照し、私的だけではない社会基盤としてルールを創っていくことも必要なのかもしれない。それは、私たち人間の学ぶ力にかかっていると考えるのは、人間に期待しすぎか?

交換と関係性の相互参照による社会変容

 交換による経済的価値、情報化による関係性構築とそれらの生活への埋め込みによる社会的価値は、相反するものではなく、互いに積み重なっていく。交換とその効率化は、関係性では、受容者の効果まで責任を持つ事になる。提供者・受容者の関係性が効果的なのかどうかは、両者にとってこの関係が意味のあること、重要であることであって、経済的価値ではない。また、交換にとって得たものを関係性として捉え、自分にとっての意味を認識する。関係性構築は交換によって成り立つ。つまり、相互に関与しながら、私たちの意味世界を変容していくと考えられる。これはすなわち学びだ。

 持つ事によって、事前に予測していなかった使用法を発見したり、またそれによって新しいものを得る。人間の欲望は果てしない。反対に、消費によるライフサイクル全般の知識を得る事によって、それを活用する道筋を創り出すのも、私たち人間なのではないか。所詮、私たちの世界を占める人工物は、我々が創り出したものだ。とすれば、それとの新しい関係性を創り出すことこそ、私たちに委ねられていると考えるのは、人間に期待すぎなのか。資本主義と、関係性主義が2重螺旋となり社会を変えていく、それも社会を良くしていくと考えるのは、夢物語か?ヒントは、私たちの好奇心、遊びにあるのかもしれない。


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