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インターフェース:人工物と認知の相互作用

 意味論的転回 デザインの新しい基礎理論 クラウス・クリッペンドルフ(The Semantic Tern A New Foundation for Design, Klaus Krippendorff)の第3章『人工物が使用される際に持つ意味』のメモ-1(3.1-3.3)です。

インターフェースの2つの特性

 インターフェースには、相互作用(ユーザーが見えるものに反応してそれを変化させること)と、力動性(人間と人工物のここの組み合わせが発展して時空における運動を創造すること)の2つの特性がある(Krippendorff, p89)。そのため、PCの画面、映し出されるスクリーンの背後のプログラムロジック、その間のデータ通信、画面の推移などの工学的な問題と見なすのではなく、人間とPCの動的・共創的な発展システムとして考慮することが必要だ。

 特に、登場したてのインターフェースや人工物は、予期しない仕方で発展するが、それを促すのは人間であるユーザーなのだ(p90)。人間は、人工物をどのように認知するか、それが何を意味するか、それで何を達成したいか、ということに基づいて行為する。そのため、人工物の反応が予期したものと異なる場合には、混乱する。デザイナーはそれを観察し、起こっている事実と、その解釈によって、その解決法を示し、その方向性が人工物の発展を促す。

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人工物と人間の動的関係

 人間と人工物の関係、認識・探究・信頼のステップを見てみよう。探していたものに遭遇したり、目新しいものを目にして、その人工物を認識する。その後、その人工物を獲得(購入したり、それを使用する場所に持っていく)することによって、人はそれが何であるか探究を始める。その人工物と人間の関係をつなぐものがアフォーダンスである。その後、使用によって、思った通りの経過で信頼を増したり、混乱を起こしたりするフェーズが続く。

 デザイナーは、これらの認識・探究・信頼の全てを支援するように人工物をデザインする。

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メタファーと新規性

 デザインされる人工物(以下では、人工物として新規市場を考える)は、新規性が必要である。しかし、新しすぎると、見た人は困惑し、使うことができない。そのため、何か似たものを連想させるメタファーが役に立つ。そもそも、言語は人類の類型化の累積であり、私達の長い生活から生み出された人工物であり、そのためメタファーは私たちの長期の暮らしから紡ぎ出された文化に基づく。人工物のデザイナーは、人間の想像力、慣れ親しんでいるメタファーで辿り着く範囲で、新しい領域を創造することになる。

 人工物として新規市場を考え、企業内の活動を思い出してみよう。通常、市場調査、先進ユーザーインタビュー、技術ロードマップなどのあらゆる情報を集め、市場を探索し、機会を発見しようとする。Krippendorff、Gibsonはそれを否定する。「我々が対象の意味を学習するに先立って対象の変数を区別しなければならないという考え方は問題がある。」(Gibson, p157)。

 ようするに、人工物は、事前にどこかにあるものを見出すのではなく、人間との学習、価値共創によって創られる作られるということなのだ。これは、起業家理論effectuationと親和性がよい。あらかじめ市場や目的、ゴールがあるのではなく、実践と共に間主観が創られてくる。Effectuationは、人工物の科学として起業家活動を捉え直そうとしている。この辺りはまた今度ゆっくり振り返りたい。

参照

Krippendorff, Klaus. The Semantic Turn. CRC Press. Kindle 版.

Gibson, J. J.. 生態学的視覚論 ヒトの知覚世界を探る、サイエンス社

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