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峠の

どうにも髪が伸びてしまって野暮ったい
こういうときは気持ちまで重たくなるものだ
意を決して山の向こうの床屋へ行く
行く道はスッスと歩く
床屋の女主人はいつもの通り、きれいさっぱり刈り上げてくれた
出来栄えに満足し床屋を出る
まだ明るいから、今日のうちに帰れるだろう
一杯だけ寄り道して帰路につく
家まであと一息の峠でひと休みする
野で暮らしているから、見晴らしのよいところへくると景色を眺めたくなる
緑色が目にしみる
あちらの山、木々、鳥の声
鳥はケケケケケと鳴いているようだ
ああ気持ちがいいものだ

どれくらい浸っていたのだろうか、日が暮れかかっている
はたと気配を感じる
どうしたものか
視線を感じる
からだが溶けていくようだ
そんなことがあるものか

気がつけば大男につままれ、手のひらにのせられている
ひどく恐ろしい気持ちと沸き立つような気持ちが入り混じる
食われてしまうのか
投げられてしまうのか
ぷちりと踏みつけられてしまうのか
それでも大男の顔を一心に眺めてみる
平気なふりをしてじいっと見る

髭面の大男は、私をポケットにひょいと入れた
今はまだ食われない
ほっとする
途端に衝撃、何かを確かめるように二度揺すられる
しかしまだ生きている
上に時折見える空はもう夜になったのか
私はゆっくりと目を閉じる












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