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松風

松風に吹かれよう、とその人は言った
陽射しの下しばらく自転車を漕いでいた最中、振り返ってそう言った

松風さわぐ、と歌う
ここしか知らない、わたしも同じだ

薄暗い店の奥でウイスキーの水割りをのむ
ちびちびのみ、無くなりそうになると氷と酒を入れてくれる

突如腿をつねられる
加減しないので痛い、いたいいたいと転げ回る
腿にいくつもあざができた

あざは青く、まだ残っている
あれは幻ではなかったとひとりで笑う




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