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舌の記憶

母の実家は愛知県の農家でした

夏休みに遊びに行くと
祖父と祖母は、私が起きるより前に田んぼに出かけて行きます。

手にはほうれん草の束をもっていました。

使い込まれた木のまな板の上で
ほうれん草を刻むころ私は起きてきて
祖母が朝ごはんを作るのを
いつもみていました

鰹節削り器を食器棚からだしてきて
シャコンッ シャコンッといい香りがしてきます

お味噌はもちろん赤だし
小さめに刻んだ木綿豆腐のヒビに
赤だしの模様がはいっています

ほうれん草はおひたしに
といっても、
茹でたほうれん草にお醤油とおかかをかけただけ


そのほうれん草はいつも
ピンク色の根っこが少し
入っていました

それを一番に食べるのが
私の楽しみだった

土のかおりがするけど
一番甘い場所

好きだから食べるというよりも
これがほうれん草なんだ
と確認していたような


これが私の舌の記憶


他にも
祖父が掘る自然薯
黒豆の枝豆
どんこが一枚入った、あったかいそうめんつゆ
庭のみかん


そして、
朝ごはんの後に祖父母について軽トラに乗ると
喫茶店に連れて行ってくれました

じじばばの方言を聞き分けるのは
楽しくはなかったけれど

トーストとゆで卵は美味しかった


舌の記憶

今となっては
もっと話を聞いておけばよかったと思う

食べた記憶ばかり・・・

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