『PERFECT DAYS』
期待しないでいたのがよかった。
ヴィム・ヴェンダース監督・脚本、髙崎卓馬脚本。
土曜の昼過ぎ、映画鑑賞の後、クラフトビールで妻と乾杯した。
変わらない、ヴィム・ヴェンダース。『ベルリン・天使の詩』でカンヌ監督賞を受賞したのが、1987年。彼が東京を舞台に撮るとこんな映画になる、そんな映画だった。
同じような毎日を、優しい視線で見つめている。冷たい都会で生きるのは厳しいようで、どこか楽しそうだ。早朝を走る車、昼間の公園はもちろん、夕方のコインランドリーや銭湯、河岸には、様々な人間の温かいドラマがある。無数の、偶然の、積み重ね。それだけで、笑ったり泣いたりできるのだ。
テレビもスマホもいらない。好きな古い音楽と本に囲まれて、そして、草木を育てカメラで遺す。そんな日常に、生きることの尊厳を感じた。
ユニクロと電通の企画にしては、少しステレオタイプに思えるところもあったが、カンヌ男優賞を受賞した役所広司の、ラストの演技は本当に圧巻だった。