孤高の凡人
運動にはエネルギーがいる。目に見えないものもタダじゃない。他の惑星に住んだら空気も有料で、闇市では質の悪い安物の酸素が出回る。
肉体と同じように、心が疲れているときは、うまく動かすことができない。心が傷ついたときも、患部を清潔にして保護しなくてはならない。
何を見てもしけた気分になるときは帰って休んだほうがいい。できればぬいぐるみとお話した方がいい。無理をして立ち回ると人に優しくする余裕もなくなって、誰も得しない。
ねえ聞いてよ!
生きてるのってしんどいな?
別に何があったわけでもないよ、理由はないけど、ただただしんどい。
意識があることがつらい。傷んだものを食べたかのように、吐いても吐いても、自分を傷つける言葉が止まらない。
いつの間にか危険な領域に踏み込んでいた。緊張で毎日頭が痛くなる。何かを考えたり、思い出すのを、脳が拒否している。
苦痛から抜け出す方法をずっと考えていて、私はなんとかして「自分はよく頑張ってるじゃないか」と思って納得したかった。
でも本当にかけてほしたかったのは「何にも頑張らなくたって、生きてていいんだよ」という言葉だ、と気がついた。
私は、自分が誰の影に怯えてるのかを知っている。
私よりもずっと頑張っている人だ。
何かを頑張っている、頑張れる人はもちろんすばらしい。でもそれは"絶対"のすばらしさだから、その人と比べて別の誰かは劣っているなんてことは、ない。時々わからなくなるのだ。
いや、ずっとわからない。
自分の命に胸を張ることができないでいた。
自分の価値を自分で決める勇気がなかった。
降りようと思ったら、自分で選ぶこともできる。でももしどうにも生き残れない状況に置かれたときには、どんなに願っても自分じゃ何も選べない。一方通行だ。
どのような形であれ、私はどのみち死ぬ。
だが少なくともいまはまだ生きている。
どのような形であれ、とにかく生きよう。せっかく生まれてきたんだから。