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記憶の中のレストラン,私のグランメゾン渋谷

それは,まだ,街が活気にあふれ輝いていた頃の話です.何度も食事したレストランなのに店名が思い出せないのです.そのレストランを知ったのは雑誌「ぴあ」の小さな記事でした.会社の同僚・後輩,家族,そして独りでも,何回も食事をしたのですが,今は全く店名を思い出すことができません.グーグルのストリート・ビューで確認してみると,レストランは今は無くなっていました.

 首都高速3号渋谷線の上りで,渋谷の出口から六本木通りに降ります.渋谷二丁目の交差点を右折して,八幡通りを2ブロック進んだところにある7階建てのビルの地下1階に,そのレストランはありました.JR渋谷駅から徒歩で10分くらいのところです.

 伊豆のダイビング帰り道で,渋滞して早川口まで時間のかかった時は,小田原厚木道路,東名高速,首都高速3号を経由して帰ることがよくありました.伊豆で食事を取る機会を逸したときに,車を渋谷まで走らせて,休日の夜にも営業していたこのレストランによく立ち寄りました.

 レストランのある地下へ続く階段の壁に,欧州風のイラストが描いてあり,店の広さもゆったりとして,とても落ち着く雰囲気を醸し出していました.料理はメインに豚ヒレ肉を使っていて,コース料理でも気軽に食べれる値段でした.シェフがよい意味で野心的に作ったソースが,とても美味しかったことを覚えています.

 古い記憶は,その頃に流行っていた音楽と結びついています.「渋谷」で思い浮かぶのは,鈴木雅之さんと菊池桃子さんがデュエットした「渋谷で5時(1993)」です.初々しさがあってオリジナルのPVも良いのですが,音楽番組「僕らの音楽/our music」でのクリップも良い感じです.

  ときめきと云う 坂をのぼれば逢える

最近のお気に入り,櫻坂46の「偶然の答え(2021)」の歌詞は,渋谷を舞台にした出会いの物語を爽やかに歌っています.新しい渋谷で5時ですね.

  スペイン坂を降りて帰ろうと思った時
  階段を上ってきた君と目が合った
  僕たちは何故だか笑ってしまったね

 さて,レストランの名前は,やはり思い出せません.あのドラマをまねて「私のグランメゾン渋谷」としておきましょう.あの頃,複雑だった渋谷の駅を降りて,国道246号の横断歩道を渡る黄昏時の風景は憶えています.そこに行くことが,家に帰るのと同じように意識しない感覚だった.あのレストランは私にとって三ツ星でした.

 交差点を曲がるとき目印にしていた団体生命ビル(現:住友不動産渋谷ファーストタワー)には雑誌「ぴあ」の「ぴあ株式会社」が入っているそうです.確かに過去は今に繋がっているのですね.

 今も東京のどこかの街角で,あのシェフがあの頃と同じ料理でレストランを営業しているといいな,なんて思っています.
訂正です:今も,街も人も,それぞれのスタイルで,活気にあふれ輝いています,そしてこれからも.

それでは,また,何時か何処かで.

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