アルハンブラ1

【旅の製図法/2】夢のなかのマッサージ店

2016.2.24

「お客様は2回目のご来店ですね?」と、そのマッサージ店の店員はいった。

そう、確かに2回目の来店ではある。ただし、前回ここへ来たのは夢のなかでの話だ。もちろん、今回も夢のなかで来店しているわけだが。

「いいえ、ポイントカードはいいです」と私は答える。なんだこの夢は。

スペイン、グラナダ。1492年にレコンキスタの終焉をむかえたその街は、今ではかつてイスラム圏であった面影はなく、グラナダ大聖堂を中心に西洋的な街並みが続く、いってみればごく一般的なヨーロッパの都市の1つである。

街歩きには、地下鉄を用いることはほとんどない。バスもほぼ使わない。小さな小さなその街は、2日も歩けばほとんどの場所に見覚えができてしまう。スターバックスは一軒も見かけることがなく、代わりにあるのは地元の人が経営しているカフェばかり。最初に入った店では、エスプレッソとパンで1.85ユーロだった。しかも、とても美味しい。パンには、トマトペーストを塗ってオリーブオイルをたっぷりかけ、さらにその上から塩を振るスタイルをよく見かける。なるほど、これではスターバックスなんかがやってきても確かに太刀打ちできないかもしれない。美味しいのに、とにかく物価が安いのだ。

50Lのバックパックを担いで、ロンダ通りにある安宿へ向かう。1泊1300円くらいで、WiFiの接続が悪く、インターネットはほとんどつながらない。あと暖房が効いていなくて寒い。宿泊しているのは、同じようなバックパッカーたちばかりだ。部屋ではいろいろな国の言語が飛び交い、夜遅くまで話し声や笑い声が続く。快適な環境とは言い難いが、グラナダの街からはすぐ出てしまうので、まあよしとする。

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