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身近に迫るEVの魔の手 <ヒョンデ コナ エレクトリック>

韓国という国を見て聞いて、皆は何を考えるだろうか。
あくまで筆者の認識だが、近年の流れを見ると若者の間でKPOPやコスメ、美容ブームなどが徐々に広まり流行することで、カルチャーの発信地としての立ち位置が徐々に確立されているように思える。しかし、我が国日本では政治的情勢の対立から来る所謂“嫌韓”という流れ未だ根強く蔓延っていることも事実だ。そしてこの「コナ」も例外ではない。EVとしてテスラに並ぶ魅力を感じた反面日本人が持つある意識を強く感じた一台でもある。

ヒョンデ再上陸の影響力

乗り味や試乗記を書く前に、まずはこの車もとい「ヒョンデ」の日本国内の影響力について触れたいと思う。

というのも、正直恐怖を感じるレベルで罵詈雑言の書き込みを見かけたからである。車離れが進む現代の日本なのにかなりの盛り上がりようだ。しかもどれも程度の低いコメントばかりで唖然としたことは記憶に新しい。
 特に、同社のアイオニック5の記事の荒れ方が凄まじかった。走りを高評価する記事のコメント欄に「燃える車を紹介するな!」「絶対買わない!」「保育園のお迎えに使ったら子供がいじめられそう」「走る棺桶」など他の記事では見たことないような類のコメントが多く見られた。その後、中国のBYDが参入した際のコメント欄はここまでの荒れ方はしていなかった故に更に日本人の嫌韓姿勢を強く感じたように思う。

実際にアイオニック5も試乗する機会があったのだが車としての出来は日本のEV達を遥かに凌駕していた。走りもデザインも何もかもが一歩先へ行っているのである。しかしbz4xやアリアと比べても見かける機会はかなり少ない。現状受け入れられていない所を見ると、どんなに良い車でもやはり、“韓国車”というだけで選択対象から外れているのだろう。PRにもかなり力を入れ、輸入車にも関わらずウインカーも日本仕様に合わせるほど徹底ぶりだがそれでもこの様子だ。
残念の一言に尽きる。

二代目になったコナ

さて、ここで一旦コナという車について触れていきたいと思う。ツーソン(ヒョンデのSUV)の下を受け持つクロスオーバーSUVとして開発されたのがコナである。
日産ジュークやキックス、ホンダ・ヴェゼル、ジープ・レネゲードに近いサイズのSUVだ。
基本的にはガソリン、ディーゼル、エレクトリックの3種のパワートレインから構成されており、地域によって排気量も様々である。


2023年から2代目に当たる現行型が販売されており、日本市場向けにはエレクトリックのみが輸入されている。日本市場向けのエレクトリックには地形や交通状況に合わせた日本専用のドライブモードが設定されている少し特別な一台だ。
電動専用プラットフォームを採用したアイオニック5に対し、ガソリン向けのプラットフォームをそのまま利用して作られた一台だが、399万〜とその分低価格であることが特徴だ。日本で購入可能なSUVタイプのEVの中では最も低価格ではないだろうか。

内装も至って普通。タッチパネルが多く採用されてるわけでもなく、物理ボタンが多く備わっている点はかなり印象が良い。少し表記や配置が分かりづらいが、走行中でも難なく操作可能。
内装はグレーばかりでプラスチックが多くお世辞にも高級感があるとは言えない。特別感はないものの走行関係のスイッチ類やナビのスイッチも手の届く範囲で機能的かつまあまあ扱いやすい内装となっている。小物入れも多く、カップホルダーも格納式になっており使わない時は隠せる点も良い。ナビのアイコンも大きくぱっと見でわかりやすいデザインで、ここに来るまでに乗ってきたプリウスのナビよりも使い勝手は良好だ。
なぜかブレーキホールドとパーキングブレーキの位置が離れていることが気になるが配置はともかく視認して卒なく扱えるインパネ周りになっているのにさして古臭く感じない点はかなり良ポイントに思う。

一方、外観はかなり独特。ヘッドライトにパラメトリックピクセルを配置して少なくとも日本車では見かけないであろうかなり個性的な外観をしている。私が街で見かけても思わず二度見するほど奇抜ですぐにコナとわかるデザインだ。
実際にコンビニから出てきた客が二度見していたほどだし、なんなら「この車は何か」と尋ねられたほどだ。少なくともインパクトづけには一役買ってると言える。

意外にも“普通”の走り

215/60 R17

アイオニック5がキワモノ家電EVだっただけに、コナもかなり独特な味付けがされているのではないかと予想して運転し始めたが意外にもクセのないフラットな走りを披露してくれた。アクセル開度に対する出力も緩やかで、“とんでもない乗り物”に乗ってる感はゼロ。

とは言っても、一度ドライブモードをスポーツに入れればEVらしいヒステリックな出足の強い加速を体感することもできる。出足に限るが255nmとは思えない一瞬思考が置いていかれるほどのフロントが軽く浮く加速をし、恐怖さえ感じた。モードごとの棲み分けという意味ではbz4xやソルテラのようにどのモードもガッツリ加速する味付けではなくキャラ被りすることがないよう調理されていた。

EV専用プラットフォームではないからなのかアイオニック5ほど滑らかでどっしりしてるわけではなく、静粛性もそこそこ。ロードノイズもそれなりに入ってくるし、荒れた路面ではシャシーにブルつきが出る場面があった。この辺りはガソリンシャシーの限界だろう。とは言え乗り味としては日本車的良さもありつつ欧州車ライクな面もあり素直かつ自然に気持ちよく走ることができる。ついウインカーを出す時に左手が自然と伸びる場面があるほどだった。

ワンペダルからコースティングまで細かくパドルシフトで回生レベルが調整できるのも魅力だ。
ワンペダルモードオンオフスイッチがあっても細かく調整ができるEVは少ない。痒い所に手が届くまさにそんな感じである。

ヒョンデではお馴染みだが、ウインカー操作で左右の死角をメーター内に映してくれる機能ももちろん搭載している。目視が最も大切なのは言うまでもないが、見落としリスクの軽減という意味では安心・安全に一役買っている機能だろう。

EV専用プラットフォームではないにも関わらず静粛性、乗り味、扱いやすさなど全体を通して高水準に作られているように思う。少なくとも、ガソリン車やHV、PHEVからの乗り換えでは不満は出ないだろう。bz4xのfwdモデルと比較しても引け目を取らない出来だ。

日本という環境が、EVの足を引っ張る

走りの面でも使い勝手、デザインの面でも他の車種と引けを取らない出来で、価格を踏まえればガソリンやHVのSUVも食えると言いたいところだが、一つ重大な欠点がある。

それはこの車がEVでありここが日本であるということだ。端的に言えばインフラの拡充があまりに遅いのだ。充電器があっても使えないなんてことはザラだし、もしあったとしても出力が小さく、30分程度では小腹の足しにもならないほどだ。

50kw級急速充電器で充電した場合の満充電までの時間だ。一回30分の時間では正直不足しているのが事実だ

これはこの車に留まらず、アリアやID.4、bz4x、タイカンなど大きなバッテリーを積む電気自動車全てに該当する大きな問題である。ましてあるだけで利用できないなど論外。少しずつ90kw級の充電器の設置が進んでると言えど、殆どは高速道路に設置されており一般道路にあるようなディーラー、コンビニ、スーパー等の施設は20〜50kwクラスの充電器ばかりだ。
現に50kw級の充電器に刺して30分で60%前後まで、22kwh程しか充電できなかった。今回は一般道がメインだったからよかったものの、帰省や旅行など長距離を伴う移動には心許なさがついて回る。その上連休や年末年始など、筆者の経験上充電器利用者ではない車が停めてあることも多く、必然的にロスタイムが生じる事もやむを得ない。



せっかちは回避だし、時間にゆとりがある人間以外は手を出してはならないジャンルである。

総評として

あまり普段の記事で総評を書くことはないのだが、この車については2点留意点が出た事も含めてあえて触れていこうと思う。

まず結論から言えば買いの一台である。
筆者もEVを購入するなら間違いなく候補にする一台だ。というか、既に欲しい。いい玉がないかと物色しているほどだ。
低価格ながらEVらしさもあり、使い勝手も良好。
のちに記述する条件さえ満たせば、他社のSUVすら凌ぐデザイン性と走行性能も備えている。

そして条件というのが

現代の日本において
韓国車であることを前提に、周りから何を言われようと所有していたいと思うか

そして

充電残量次第で予定通りに事が進まない充電奴隷になってしまうこともあり得ることを受け入れられるか

という2点である。

 前者もやはり日本という環境である以上ある程度は付きまとう。ヒョンデもおそらく理解した上で、あまり嫌韓思想を持たない若者に売り込むことを目的に再上陸しているのであろう。実際に私の友人にも嫌韓思想を持つ人間は複数いる。

後者はEVというジャンルを選ぶ以上ついて回る呪いのようなものだ。現状の環境では対策のしようがなく、どうしても避けたいなら、近距離利用以外に使わないという選択肢しかない。言うなれば「充電という手間をいかに楽しみとして見れるか」が現在のEVに乗る上での必須条件なのだ。

そして、日本の自動車メーカーはよりEVにも力を入れていかなければこの分野で負けてしまう事が懸念される。筆者が試乗したEVの限りではあるがBMW iX3やプジョーe208、そしてコナエレクトリックとガソリン車のプラットフォームを流用した車にすら国産EVは遅れをとっている面があまりに多い。ハイブリッドが至高だから自国産業は大丈夫!ではなく、既に追手はそこまで迫っている認識を持たなければならない。

黒船はもう来航しているのだ。


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