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【読書会感想】悪童日記を読んで

コロナ禍で13年間通ってきた茶道教室に行けなくなり、半年が過ぎた。

この分人を生きられないことはつらい事だが、今は代わって文学サークルに参加することが、新たな経験になっている。

#文学を語ろう の読書会、八月の課題本はアゴタ・クリストフ『悪童日記』だった。

戦時下を生きる双子達と個性的な登場人物達が、感情表現の極めて少ない簡単な文章で綴られている。
アゴタ・クリストフが出版社に自らこの作品を郵便で送りつけ出版に至った経緯から、この作品は読まれるべきだという作者の強い意志を感じた。

双子達の目を通してアゴタ・クリストフが伝えたかったこと、そして双子達が大きなノートブックに書き留めたことは。

死、安楽死、欲望、性行為、孤独、いじめ、悪口、疑惑、労働、物乞い、貧富、飢え、恐喝、エゴイズム、殺人、裏切り、サディズム、差別、偏見、戦争、別れ、、、。

私はここに描かれていることに、ありとあらゆる「人間の業」があかるみになっていると思えてならなかった。人間が本来持っていて、いつ顔を出すか分からない、恐ろしさを感じていた。

茶道の中で、頭を下げお辞儀をするという所作はとても頻繁に出てくる。
正座をし、茶道用の小さな扇子を前に置き、手をつき、頭を下げる。
簡単なようでいて、素直に頭を下げられていないと感じる日もある。

なぜ頭を下げ、詫びないといけないのか。
何も悪いことはしていないのに、と思うかもしれない。
でも「わびの精神」に含まれる私が知ることは、人間は生まれながらにして詫びなくてはいけない存在だということだ。

母なるものから離れ、父なるものを乗り越えて、成長した双子達は、新たな世界にどう踏み出していくのだろうか。

あっけない幕切れの余韻をいつまでも感じていたくて、続編を読む気には、まだなれないでいる。

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