足並みが揃わず、サービスが乱立中!――なぜカープはDAZNを拒む? プロ野球動画配信が混迷するワケ
――プロ野球を『DAZN』などのライブ配信で視聴することも普通になった今の時代。しかしDAZNで全試合が放送されるJリーグとは違い、プロ野球では広島カープが離脱したり、パ・リーグが『パ・リーグTV』を独自に運営していたりと、動画配信の状況は混沌としている。その背景とは――。
『野球消滅』(新潮新書)
『DAZN』が広島を除く11球団の主催試合をライブ配信――。
新型コロナウイルスの影響で6月に開幕した2020年のプロ野球。そこではスポーツ専門の定額制動画配信サービス『DAZN』が、なぜか広島カープだけ歯抜けの「11球団」の配信を行っており、その状況が物議を醸した。
だが、ネットでの動画配信で各球団の足並みが揃わないのは2020年に限ったことではない。
そもそも、英国の国際スポーツメディア企業のパフォーム・グループ(現在はスタッツ・パフォーム)が運営するDAZNは、プロ野球の生配信については16年のスタート時点では広島と横浜の2球団のみが参加。なお運営企業がスポーツベッティング(スポーツ賭博)事業に関わっていることも話題を呼んだ。18年には巨人を除く11球団が参加したが、19年には巨人が加わった一方でヤクルトと広島が離脱。20年はヤクルトが復帰も広島は継続して不参加という状況だった。なお有料多チャンネル放送の『スカパー!』は、近年は全12球団の主催試合の中継を継続している。
また足並みが揃っているパ・リーグについては、6球団の合弁企業・パシフィックリーグマーケティング(以下、PLM)が手がける動画配信サービス『パ・リーグTV』がDAZN以前から存在。そして、パ・リーグ6球団の試合を配信するサービスは楽天やソフトバンクも運営している。
さらにややこしいのは、ここに各球団が独自に手がける配信サービスが加わってくること。例えば巨人は『GLS(ジャイアンツLIVEストリーム)』、阪神は『虎テレ』を運営。そして巨人の試合は、日本テレビ傘下の企業が日本での運営を手がける『Hulu』でも配信。『Paravi』では横浜の試合が配信されている。
このようにサービスが乱立する状況は、「DAZNに加入すればJ1~J3までのリーグ戦全試合が視聴可能」というJリーグと比較すると“ムチャクチャ”と言えるもの。なぜこのような状況が生まれたのだろうか。
まず『パ・リーグTV』の成立背景について、『野球消滅』(新潮新書)などの著書のあるスポーツライターの中島大輔氏は次のように語る。
「PLMが設立され、全球団の試合配信が始まったのは07年から。当初はガラケー向けの配信で、サービスの名称も『プロ野球24』でした」(中島氏)
その以前の04年には『Yahoo!動画』内での一部球団の試合配信も行われていた。『パ・リーグTV』はそうしたサービスの流れを受け継いでスタートしたものなのだ。では、パ・リーグがガラケーの時代から試合の生配信に踏み切れたのはなぜなのか。キー局の野球放映関係者はこう語る。
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