ジハードを憂い、教義を過激に礼賛する アメリカのヒップホップに深く根付くコーランの教え

――本稿では視点を変えて、熱心なイスラム教徒であるヒップホップのラッパーたちのリリックから、その"思想"を読み取りたい。なぜ、アメリカの黒人ラッパーたちはイスラムに惹き付けられたのか。そしてイスラムがヒップホップに与えた影響とは?

ラッパーとしてデビューし、今や世界的に知られるようになったモス・デフa.k.a. ヤシーン・ベイは、正統派ムスリムとして知られている。

 いまだにヒップホップというジャンルには、偏見を持つ者が多い。危険で暴力的、かつ犯罪に直結する歌詞(リリック)の内容が、一般的に害悪のイメージを与えるから——。

 ある種、正解かもしれないし、それは大きな誤解でもある。結論から言ってしまえば、アメリカのヒップホップは、イスラム教が存在しなければ生まれ得なかった音楽と言えよう。それほど、ヒップホップとイスラム教の関係値は深い。

 果たして、イスラム教とヒップホップは、どのように邂逅し、誕生したのか。そして、ヒップホップに根差すアーティストの思想というのは、過激なものなのだろうか? 本稿では、アメリカのヒップホップにおけるイスラム教との関係性、そしてラッパーたちのリリックから、そこに潜む真実を読み取っていきたい。

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