【無料公開中】ももクロメソッドでスターダストがぶち上げる!ジャニーズにゲリラ戦を仕掛けんとするEBiDANとは何者か?

――長らくジャニーズ帝国の寡占状態が続いてきた男子グループアイドル界が、いま動こうとしている。LDHの台頭に続いて、今この市場に殴り込みをかけんとしているのが、スターダストプロモーションが放つEBiDANだ。ももいろクローバーZで培った“接触”とドサ回りというメソッドを注ぎ込み、女子を熱狂させる新勢力に迫る!

「10年前だったら、とてもできなかったでしょう。男子のグループを組むとなったら、テレビ局やメディア側がジャニーズへ“配慮”するのは当然のこととして、マネジメント側もジャニーズの威光にひるむところが大きかった。今でも相変わらず『ミュージックステーション』(テレビ朝日)には出られないし、おおっぴらにアイドルは名乗っていないですが、隙間を縫ってフィールドを選びながら、彼らが仕掛けられているのがわかります」

 そう語るのは、音楽業界の関係者だ。「彼ら」とは誰か? それは、スターダストプロモーションが仕掛ける男子集団「EBiDAN」のことを指している。

 実によく知られている通り、日本の男子アイドル市場は、長らくジャニーズ事務所という巨大な存在が独占してきた。その壁は高く厚く、これまでに多くの男子たちが挑んでは敗れ去っていった。だがこの数年、ジャニーズ帝国の足元では、地殻変動が続いている。

 まずこの市場に巧妙な形で進出したのが、LDH勢だ。始祖たるEXILEはジャニーズとは相反する男くささが特徴であったが、三代目 J Soul Brothers、GENERATIONSと、年若のグループになるにつれて外見は垢抜けてゆき、女子中高生の熱狂ぶりはまさにアイドルに対するそれといっていいものになっている。そしてEXILEと時を同じくして、東方神起をはじめとするK-POP勢が大ブレイクを果たしたのも重要な出来事だった。歌って踊れるイケメン集団はジャニーズだけではない──日本の女子がそう知った今、男子アイドル市場には多様性が生まれつつある。

 そしてここに第四勢力として浮上してきたのが、冒頭で述べたEBiDANなのだ。始まりは2010年。14人体制になったEXILEが初のドームツアーを成功させ、東方神起が人気絶頂の最中に5人での活動を終わらせた陰で、ひっそりと誕生した。「EBiDAN」とはひとつのユニット名ではなく、いわばアップフロントプロモーションにおけるハロー!プロジェクトのようなもの。つまり、スターダストにおける男子アイドルグループの総称だ。
 詳細は下記ボックス内をご覧いただきたいが、最初期の11年に結成されたのが、ダンサー5人+バックボーカル2人という7人編成の「超特急」と、楽器を持ちながら踊るエアバンドの「DISH//」の2グループである。その後、アニソンバンドの「カスタマイZ」が誕生し、他事務所で結成されたダンスボーカルユニット「PrizmaX」が合流。この4組が、CDデビュー済みの年長組になる。そして「研究生」とも呼ばれるのが、EBiDAN39&EBiDAN KiDSだ。ジャニーズでいうところのJr.に該当する(ただし先輩のバックで踊ることはない)。

 この数年、アイドルファンの女子たちの間で、EBiDANの名前は密かに広がっていた。いわく、「接触行ったらマジでヤバい」と──。

 彼らのアイドルとしての最大の特徴は、「接触」にある。もはや説明するまでもないが、CD等の購入特典としてアイドル自身と握手などができる(=触れ合える)ことを意味するアイドルオタ用語であり、女子アイドルの現場においては欠くことのできないイベントだ。EBiDANは最初期からこれを取り入れ、全国各地のショッピングモールやCDショップでイベントを行ってきた。これは彼らの先輩に当たるももいろクローバーZがブレイク前にこなしてきたことと同様だ。つまりスターダストがももクロで学んだ女子アイドルの育成メソッドが、EBiDANには注ぎこまれている。

 しかも彼らの場合は単なる握手会ではなく「たたいてかぶってジャンケンポン」や「糸電話」といった、一風変わった接触イベントが中心になっている。ジャニーズが築いた日本の男子アイドル文化において、接触は決して存在し得ないものだった。ステージ上の綺羅星を遠くから眺めることのみが、アイドルファンの女子たちに許されてきた鑑賞方法だったのだ。それが、CDを数枚買って列に並べば彼らが手を握って微笑んでくれ、通えば“認知”もしてくれる。その近しさは、「触れ合えるアイドル」という文化を持たなかった/持てなかった女子たちを魅了し、武道館や代々木体育館で単独ライブを行えるまでに彼らを押し上げることとなった。

「遊ばせとくより何かさせる」スターダストの“ハミ子”たち

 しかし彼らは、最初から未来が約束された芸能界デビューを果たしているわけではない。スターダストに近いプロダクション関係者は、こう説明する。

「スターダストはもともと女優の育成を得意としている事務所で、現場の人間も女の子のマネジメントをやりたい人が多い。特に近年はももクロのブレイクもあって、そちらに比重が寄っていた。社内オーディションでも男の子にはなかなかチャンスがなくて、正直余ってしまっていたわけです。そこに目をつけた社員がいて、男の子グループをやりたい、と言って始めたのがEBiDAN。会社としても、新人開発部に置いたままにしていたら利益を生み出さないから、何かやらせてみようか、と」

 いわば、女性優位のスターダストにおけるはみだしっ子たちなのだ。デビュー済みの者の中にも、端役での映画・ドラマ出演経験を持つ者は多い。スカウトが基本のスターダストにおいて、声をかけられて所属してみたものの、箸にも棒にもかからない日々を過ごしていた俳優の卵が集められ、ミニライブと接触イベントを繰り返すドサ回りから這い上がる──それがEBiDANだった(現在は独自に新規メンバーオーディションを行っている)。結果、超特急はセカンドシングルの初動売り上げ560枚から、8枚目のシングルでは3万7000枚超を売り上げるまでのグループになった。

 先述した通り、接触イベントを特徴とする彼らは、CDの売り上げ枚数が人気のバロメーターになる。そしてこのCDの売り方にも、ひとつの特徴がある。DISH//とカスタマイZはそれぞれソニー・ミュージックとキングレコードからメジャーデビューしているが、最も多くのシングルを出し、人気もナンバーワンの超特急が所属するレコード会社は、スターダストの子会社であるSDR(スターダスト音楽出版)。つまり、いまだにインディーズの扱いなのだ。

「制作はもとより、宣伝力やブランド力、地方での営業力がレコード会社の優位性を担保していましたが、CDが売れない時代にあって、どれも以前よりパワーが落ちている。接触イベントが特典化しているのがまさにそうですが、CDももはやグッズのひとつにすぎなくなっているわけです。スターダストも内部に制作部隊を持っていて、楽曲制作からライブなどの興行、それに伴う物販まで、すべて自社で行えるようになっています。現在の超特急ほどの枚数を売り上げられるのであれば、レコード会社を通さずに原盤権まで抱えたほうが、圧倒的に実入りがいい。今さらメジャーデビューする必要はないでしょう」(レコード会社関係者)

 本誌先月号で既報の通り、最近ではジャニーズでも関ジャニ∞がテイチクから自主レーベルに移行した。もはやCDを販売するのに必ずしもメジャーレコード会社を経由する必要はなくなっている。スターダストにとって、EBiDANで自社レーベルの運営ノウハウを積み上げることは、今後の事務所経営にとっての試金石でもあるのかもしれない。

 ただし、そうしたさまざまな試みを行っていながら、いまだ世間に広く認知されていないのには、理由がある。

「超特急もDISH//も、頭打ちになりつつあります。DISH//は今年元日に武道館公演を行い、超特急は年末に代々木体育館での単独2デイズを予定していますが、それ以上はいけないという動員の壁にぶち当たっている。それは結局、キー局の番組に出られないからなんです」

 そう語るのは、前出のプロダクション関係者だ。冒頭でも音楽業界関係者が語ったように、EBiDANの各グループは、実質地上波唯一の音楽番組といっていい『Mステ』出演には縁がない。 

「確かに、昔に比べればだいぶ変わりました。以前なら『ジャニーさんが気にしているらしいよ』という話がかなり早い段階できていましたが、今はそんなにない。それでも、情報番組や深夜番組にはどうにか押し込むことができても、ジャニーズの顔色をうかがう歌番組には出られない。EBiDANは地道な“接触”活動で伸びてきましたが、接触イベントでは一度にさばける人数に限界があり、場所も物理的な限界があるわけで、それだけで今より上にいけるかどうか、これからが勝負どころでしょうね」(同)

 マスが消失しただの、テレビの力が落ちただのといわれていても、AKBグループがそうであったように、アイドルが一部のファンのものから国民的な認知を得るのにテレビという装置は欠かせなかった。果たして、それなしでEBiDANはどこまで男子アイドル市場をかき回すことができるのか? いま勝負の時が訪れつつある彼らを、本特集では深く掘り下げてみたい。

(文/小宮 鰯)

「YOUたち、ちょっと脅威だネ!」
非ジャニ男子アイドルの牙城となれるか!? EBiDAN全貌

――2010年にスタートし、飛ぶ鳥落とす勢い……とまでは言わないが、徐々にその勢力を広げつつある男子アイドル集団、それがEBiDANだ。まだご存じない読者諸兄のために、彼らの全体像を解説していこう。

■ダンサー5人とバックボーカル(!?)2人
超特急

11年11月に結成された、EBiDANの古株・最年長グループ。5人のメインダンサー(カイ、リョウガ、タクヤ、ユーキ、ユースケ)と、2人のバックボーカル(コーイチ、タカシ)という逆EXILE編成。電車をコンセプトにしており、メンバーには1~7号車まで番号が振られ、ファンは8号車と呼ばれる。今年6月にはヒャダインと小室哲哉がそれぞれプロデュースした両A面シングルをリリース、10月にはグループ初の主演映画『サイドライン』の公開、12月には初の代々木体育館ワンマン予定と話題が絶えず、この1年が勝負の年となりそう。

■紙皿投げるエアバンドアイドル
DISH//

11年12月結成、13年6月メジャーデビュー。メインボーカルのTAKUMI、ギターのMASAKI、ベース&ラップのRYUJI、DJのTo-iからなるダンスロックバンド、だがその実態はエアバンド。ただし、今年1月に開催された初の武道館単独ライブから演奏を解禁した。EBiDANの仕掛け人であるスターダスト取締役・藤下良司氏(通称“理事長”)いわく「イメージとしてはファンキーモンキーベイビーズだった」(「natalie」インタビューより)とのこと。ライブにコントが多いあたりも、どちらかというとゴールデンボンバーのほうが似ている気がする。

■アニソン界隈で認知度上昇中
カスタマイZ

12年に「カスタマイズ」として結成。DISH//とは違い、演奏も行うアニソンバンド。13年に当時のボーカルの脱退に伴い一度解散するも、ギターボーカルのGOROが高校の友達だったHAMAを誘い、再結成。HAMA(ボーカル)、GORO(ギター&ボーカル)、DAICHI(ドラム)、HIROKI(ベース)の現体制になる。15年2月にスターチャイルド(キングレコード)とメジャー契約を果たし、テレビアニメ『シドニアの騎士 第九惑星戦役』のタイアップを獲得したことでアニソンファンからも徐々に認知を得ている。

■紆余曲折の正統派ダンスボーカル
PrizmaX

モデル系事務所が02年に結成した小学生男子ダンスユニット「Wonder☆Wown」から、度重なるメンバーチェンジを経て10年よりEBiDANに参加。前事務所時代はハロプロのバックダンサーなども務めていた。その後も何度かメンバーが入れ替わった後(俳優・冨浦智嗣などが元メンバー)、現在の5人体制に落ち着いた。02年からのオリジナルメンバーは黒川ティムのみになっている。出自の所以もあり、EBiDANの中では珍しくギミックが皆無なダンスボーカルグループ。個人で役者としての活動も多い。

【EBiDAN39&KiDS】
EBiDANでは、ジャニーズでいうところのジュニアに当たる「研究生」が在籍している。中学生以上なら「EBiDAN39」、小学生以下は「EBiDAN KiDS」と称され、Jr.同様に研究生内ユニットも多数存在。その中ですでにCDデビューを果たし、ショタコンを動員するのが、下に挙げる3グループだ。

■大御所ラッパーが14歳をプロデュース
MAGiC BOYZ

14年に結成された、4MC1DJの5人組ヒップホップグループ。平均年齢14歳。15年3月のデビュー曲「MAGiC SPELL~かけちゃうぞ!ぴっぴっぴっ~」はリリックを元ブッダブランドのNIPPSが、同シングル収録曲はNITRO MICROPHONE UNDERGROUNDのMACKA-CHINが制作するという、ジャパニーズヒップホップ界の重鎮たちの手が入った本気仕様になっている。ライブでは超特急やM!LKをディスるラップも披露。

■爽やかに歌い可愛く踊る王道5人組
M!LK

前身ユニット「Clash,」からメンバーを入れ替え、15年3月にCDデビューした5人組ダンスボーカルユニット。若手アイドルらしい楽曲を与えられており、あまりの正統派ぶりに、とうとうジャニーズからやんわりと注意されている……という噂も。

■ショタ感強すぎ!美少年フォークデュオ
さくらしめじ

現在14歳の田中雅功&髙田彪我の2人からなるフォークデュオ。14年に結成され、すでに2枚のシングルをリリースしている。田中はクリープハイプの影響からギターを始めており、マッシュルームカットの髪形もあって「サブカル」と呼ぶファンもいる。


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