安倍政権と天皇の深まる溝……保守派最後の切り札は皇太子!?

――戦後レジームからの脱却を掲げる安倍晋三政権。なりふり構わぬかのような強気の政権運営で、次々と関連法案が可決されていく中、実は皇室からも懸念の声が上がっているようなのだ。ここでは、昨今の両陛下のお言葉や宮内庁の動きなどから、深まる皇室と政治の溝を探っていこう。

『天皇陛下の全仕事』(講談社現代新書)

2015年という新たな年を迎え、今上天皇は次のような所感を述べた。

「本年は終戦から70年という節目の年に当たります。(中略)この機会に、満州事変に始まるこの戦争の歴史を十分に学び、今後の日本のあり方を考えていくことが、今、極めて大切なことだと思っています」

これは平和への強い願いをもって世界中を回る、いわば「慰霊の旅」をライフワークとしてきた天皇皇后両陛下の気持ちを表した言葉であろう。しかし一方で、宮内庁報道関係者の間では、「この発言には暴走する安倍晋三内閣を牽制する意味合いもあるのでは?」という見方も広がっている。穿った見方をすれば、今年8月の終戦記念日に合わせて安倍首相が発表する「戦後70年の首相談話」で、とんでもない発言をしないようにという釘刺しのニュアンスが感じられるのだ。

実はこうした指摘・憶測は、すでに週刊誌などでは盛んに行われている。例えば「週刊文春」(15年1月15日号)では、コラムページ「THIS WEEK」において「終戦70年、天皇新年のお言葉は8月の安倍談話を制する論言か」というタイトルのもと、先に引用した今年の新年のご感想に触れ、「政権に向けられた異例のメッセージなのではないでしょうか」という宮内庁担当記者の言葉を紹介している。ここでは、両陛下の会見での言葉や週刊誌の記事などを参照しながら、現政権との間にはどのような火種が燻っているのか、検証していこう。

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