大塚英志みたいなスター・ウォーズの見方は正しくない!ルーカスが接合したヒッピーとギーク

――熱心なファンなら、SWのシナリオは「単一神話論」を元ネタにしている──という話を耳にしたことがあるかもしれない。しかし、その事実は誤った理解をされている !? SFやラノベに詳しいライター・飯田一史氏が、SWの背景にある“西海岸”を読み解く!

『スター・ウォーズ学』(新潮新書)

『スター・ウォーズ』の生みの親ジョージ・ルーカス監督は、神話学者ジョゼフ・キャンベルの『千の顔をもつ英雄』(原著1949年)にある「単一神話論」を元に脚本を書きました。キャンベルは、世界各地の英雄神話には、主人公が旅に出てイニシエーション(通過儀礼)を経たあと、元の世界に帰還するといった共通の構造がある、と指摘した。

 しかし、この主張の文脈が日本ではあまり理解されていません。例えば、大塚英志は『物語論で読む村上春樹と宮崎駿』(角川書店/09年)で「単一神話論およびそれをなぞったSWはハリウッド的なグローバル資本主義とマッチした」などと否定的に論じていますが、こういう見方は正しくない。87年に行われたキャンベルの葬儀でサイケデリック・ロック・バンド、グレイトフル・デッドのミッキー・ハートが追悼演奏をしたのが象徴的ですが、彼はカスタネダやクリシュナムルティなどと並び、60年代に米国西海岸で隆盛したカウンター・カルチャー、近代文明批判の文脈でヒッピーに影響を与えた“グル”のひとりでした。単一神話論には「地球は一つだから人類は一つにならなければいけない」という――アメリカン・カウンター・カルチャーに共有された“ホールアース”な――思想がある。もうひとつ線を引くと、荒俣宏は『別世界通信』(月刊ペン社/77年)で、『指輪物語』のようなハイ・ファンタジー(架空の神話的世界を舞台に英雄が活躍する作品)がヒッピーに歓迎されたのは、別世界を創造し、耽溺することは、毎日時間に拘束されて働き、“役に立つ”ことを求められる現代社会を否定する行為になったからだと指摘しています。

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