日本には石油を掴むチャンスがあった!?――イスラム世界と【石油利権】

そもそもアラブ世界に対する欧米列強の関与の強い動機となったものは、いうまでもなく石油である。19世紀半ばにアメリカで産声を上げた石油産業は、一次大戦を経て一気に重要度を増し、いわゆる石油メジャーが形成されていく。そんなおりもおり、1931年にバーレーンで、33年にクウェートで、そして38年にサウジアラビアにおいて大規模な油田が発見され、ペルシャ湾岸地域の政治的重要度は格段に増し、それがかの地の国際紛争を一層複雑なものへと変えていくのである。

2008年に撮影された、サウジアラビアの油田の様子。(写真/REX FEATURES, アフロ)

 イスラエルやパレスチナ問題同様、近現代の中東世界を考える上で欠かせないのが、石油の存在と欧米列強の干渉だろう。保坂氏は、この分野の本としてはダニエル・ヤーギン著『石油の世紀』(日本放送出版協会)が最も充実していると話す。

「『石油の世紀』には、19世紀の終わりから20世紀の初頭、オイルショック時などの詳細な裏側が描かれており、欧米政府や大企業が、石油を巡ってどんな権謀術数を張り巡らせてきたかがわかる」

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