【無料公開中】妖怪たちも怒ってる!? 死してなお妖怪が群がる、ゲゲゲの水木しげる利権

――妖怪マンガの第一人者・水木しげるが亡くなった。その裏でファンたちの醜い“水木しげる利権”争いが勃発していた……。

(絵/小笠原徹)

 巨星墜つ……。11月末日、マンガ界のレジェンド・水木しげるの訃報に、多くの日本人が涙を流した。

 これに際して、NHKでは、2010年に連続テレビ小説として放送された水木の妻である武良布枝の自伝を原案にドラマ化された『ゲゲゲの女房』の再放送を決定。また、生まれ故郷の鳥取県境港市では、『ゲゲゲの鬼太郎』のキャラクター(の着ぐるみ)が町を練り歩く催しが行われた。さらに、評論家・荻上チキのラジオ番組『Session22』(TBSラジオ)で組まれた特番の中では、マンガ家・つげ義春の電話インタビューを放送。めったにメディアに出ないつげだが、かつてアシスタントとして作品を手伝うなど水木とは親密な交流があった。マンガ家としての自分と作品が売れずに生活苦で水木の作品を手伝っていたことに対する自我の葛藤がかいま見える、それはそれで貴重なインタビューとなった。

 また、SNSなどでも一般のファンからの哀悼のコメントがあふれかえったが、その内容が水木ならではで、話題に。ツイッターには「しかし『亡くなった』と感じない作家というのも珍しいと思う。あの方自身が『妖怪』そのもののような気がしていたからなのか」「『水木先生のご冥福をお祈りします』と言うのが筋なんだろうが、案外本人は楽しく墓場で運動会とかしてそうだから困る」などと、独特の表現で哀悼の意を表すファンが現れ、それがまとめサイトなどにも掲載された。

「いつまでも元気な方で、90歳を超えても新作マンガを描き続けたり、『すた丼』を食べたりする姿を見ては、ネットで常に話題になっていました」(マンガ編集者)

 もちろんネット住民だけでなく、マンガ家や著名人などにも水木の弟子と自称したり、作品のファンを公言する人物は多い。京極夏彦や荒俣宏などは、“関東水木会”という水木しげるに関するデータベースを共有して研究する会に所属し、研究活動を行っていたほど。水木プロ公認のファンクラブもいくつもあり、また同人作品も人気で、水木タッチでエヴァなどオタク作品の同人を描くマンガ家のドリヤス工場なども人気が高い。そして、そうした水木ファンたちの間で、実は骨肉の争いが起きているというのだ。

「水木さんは、紙芝居から貸本屋そしてマンガ家となってからもたくさんのマンガを出しており、どこかで眠っているものが膨大にある。なので、レア本を収集する個人マニアが大勢いるんです。そうした人たちが個人サイトを開いたり、同人作家として活躍しているんですが、彼らがめっぽう仲が悪い。同人作家同士、作品内で誰かをディスったり、2ちゃんねるなどでも例えば『あいつがレア本を高騰させている!』などという罵り合いが、行われているんです」(同)

 関東水木会に所属する京極もどんな作品が出回っているのか全貌がまったくくつかめないと、「ダヴィンチ」2013年6月号(KADOKAWA)のインタビューで語っていた。とかくレア本が絡むだけに、感情むき出しの争いが行われているようだ。

また、ある出版社と作家がもめているという話も。

「ある出版社と、その版元から出版された妖怪系の雑誌を作っていた人物が、水木作品の版権でもめているそうです。編者が水木しげるの相当なファンであるだけに、なかなかにこじれているそうですよ」(同)

 皮肉屋でもあったという水木は生前、手塚治虫の負けず嫌いを見て「自分が世界で一番でなければ気がすまない棺桶職人」を主人公にした短編『一番病』を描いたという。もしこの争いを見ていたら、どうマンガにしているだろうか。

(文/編集部)

『少年マガジン/オリジナル版 ゲゲゲの鬼太郎(1)』
水木しげる/講談社(07年)/823円
長期シリーズ化し、小学館や双葉社などさまざまな出版社から発売された同作の、講談社オリジナル版。



この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?