八百長問題の本質は解決していない─人気と裏腹に薄氷の上に立つ相撲協会

――こちらでも触れたように、ここ10年ほどの間、八百長をめぐる騒動がたびたび起こってきた。日本相撲協会最大の事件となった2011年のメール事件からわずか3年で、状況はどう変化したのか?いまや八百長は協会の言うように「存在しない」のか? 現在の人気下にあって、いまだ角界が孕む危うい体質を問い直したい。

『八百長―相撲協会一刀両断』(鹿砦社)

角界において八百長をめぐる大きなトラブルは、実は2011年の「八百長メール事件」だけでない。80年代にこの問題に切り込んだのが「週刊ポスト」(小学館)だ。80年の元十両らによる八百長関与の暴露から始まり、以後99年まで約20年近くにわたって多くの力士や行司たちの告発を掲載してきた。その間、実際の土俵の上では若貴フィーバーが起こっていたが、95年11月場所千秋楽における史上初となった兄弟力士による優勝決定戦では、敗れた貴乃花が取組後に「やりにくかった」と発言したことから「八百長を認めたのではないか」とされて問題になった。この八百長は後述する「星」の売買というよりは、長男・若乃花に花を持たせたかった実父・二子山親方の指示があったのではないかと当時言われた。若貴ブームも落ち着き始めた00年には、今度は元小結が曙関らを含め、自身の現役中にかかわった八百長力士の実名を外国特派員協会の講演で暴露。当然日本相撲協会(以下、協会)側は反論を行ったものの、最終的には告訴せずに終わっている。

そして07年、「週刊現代」(講談社/2月3日号)に「横綱・朝青龍の八百長を告発する」と題した記事が掲載。一連の八百長告発キャンペーンがスタートした。朝青龍の06年11月場所の全取組15番中、11番は金で買ったものだ、とする趣旨であった。これに対して協会と朝青龍は疑惑を否定し、2月には講談社とノンフィクションライターの武田賴政氏を相手取って協会が民事訴訟を起こす。しかし以後も「週刊現代」は追及の手を緩めず、5月には朝青龍から300万円で星を買ったという証言音声をウェブで公開。最終的に、複数の力士らと協会から、4度にわたる提訴を受けることとなった。09年に講談社に対して東京地裁が下した4290万円の支払い命令は、当時類を見ない高額の賠償としても話題になった。

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