【無料公開中】戦後70周年の今、 あらためて知るべき“天皇”とは何か?――戦後70年の今の今知るべき皇室

――天皇陛下のお顔を見ると目がつぶれる」などといわれたのも過去のこと。時代が昭和から平成に移り、現在の佳子さまフィーバーに代表されるように、皇室はメディアを通して「見る」対象となりつつある。天皇陛下自らも「開かれた皇室」ということを話しているが、その言葉に便乗するかのように週刊誌や女性誌で盛んに取り上げられ、一大人気コンテンツの様相を呈している。現代において天皇は、私たち日本人にとって絶対的で象徴的なものであるよりも、「親しみの持てる存在」となりつつあるのだが、果たして本当にそれで良いのだろうか?佳子さまフィーバーに浮かれ、本当に議論すべき問題をすっかり忘れてしまってはいないだろうか?

『知っておきたい日本の皇室』(角川ソフィア文庫)

 こちらで、日常的に天皇をどう考えればいいか、について話を聞いた新右翼団体「一水会」の元代表の鈴木邦男氏は、天皇をめぐる議論の対立関係にも変化が起こっているという。かつては左翼vs右翼、つまり天皇反対派と擁護派の対立が大半だったが、現在はほぼ右翼vs右翼という構図になっているという。思想的には同じところに帰するはずの擁護派の中で「平和憲法を守るという天皇を認める/許せない」「女性天皇賛成/反対」などと対立している不思議な状況だ。

 本年は、終戦から70年を迎える記念すべき年である。今こそ基本に立ち返り、右や左といった思想に偏らないフラットな視点から、天皇や皇室について考えてみるよい機会ではないだろうか。それこそ天皇を象徴する「菊花紋章」とは何か? から。

菊花紋章(きっかもんしょう)のトリセツ

菊の御紋が、皇室の紋章であることくらいはわかっていても、じゃあ、花弁の数は何枚? という質問に、果たして答えられるだろうか?天皇が日本の象徴であるならばこそ、しっかり知っておきたい、菊花紋章についてのアレやコレをお勉強しておきましょう。

十六葉八重表菊
花弁の数が16枚。天皇家の紋章。中央に萼(がく)がないものを「表菊」という。

十四葉一重裏菊
花弁の数が14枚。宮家の紋章。「裏菊」には、中央に萼(がく)が描かれている。

 菊といえば皇室、皇室といえば菊――。菊花紋章は、皇室の象徴として広く浸透している。鎌倉時代初期の後鳥羽天皇がとりわけ菊の文様を愛し、身辺のあらゆるものを飾った習慣が受け継がれ、次第に天皇の御紋として定着していったという。そして、慶応4年(明治元年/1868)に出された太政官布告「菊御紋並禁裡御用等の文字濫用禁止の件」により、菊は正式に皇室の御紋となる。さらに大正15年(1926)の皇室儀制令で、十六葉八重表菊形が天皇家、十四葉一重裏菊形が宮家の紋章と法制化された。

 戦前は、菊の御紋を皇室以外の一般人が使用することは禁止されていたが、現在では使用制限はない。しかし、引き続き商標法上は登録できないことからも、特別な存在であることには変わりない。

[参考文献]「知っておきたい日本の皇室」(角川ソフィア文庫)、「日本の皇室―なぜ、菊の御紋なの?」(PHP研究所)

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