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[没落の先へ]家族が道をはずすまで②

父はギャンブルが好きでした。前回を読んで頂いた方がこれを聞くとギャンブル依存症で家庭が破綻したのかと思われるかもしれませんがそうではありません。ただ、その資質が更にタチの悪い結果をもたらしますが。 

この頃、父は株式投資も始め信用取引も利用し多額の資産を運用していました。
「俺は何しても上手くいく人間や。」
これまで順調に苦労なく人生の階段を登ってきた父の慢心は数十年放置された換気扇のごとく汚れがこびり付き、心の換気もできないままバブル絶頂期を迎えていました。そして、

"バブル崩壊"

皆さんも聞いた事があるであろう強烈な5文字。浮かれきった日本社会が不安と恐怖という地獄の入り口に叩き込また瞬間。日本国民が公開処刑にされたかの様な衝撃の瞬間。その後、現在まで尾を引く恐怖の始まりの瞬間である。株価は一気に下がりストップ安張り付き。連日張り付いて株を売るにも売れない状況。現在の様にネット取引などない時代。各々が証券会社に電話を掛け売買を行うしか方法がない為、この混乱の中電話が繋がるはずもない。
ただただ、所有している銘柄がまさに崩れ落ちるのを傍観するしか出来なかったようです。
信用取引で膨大なレバレッジを掛けていた父は追証の餌食に。この時、負債が1億を超えました。
この時の状況を父は青ざめるとか血の気が引くとかあらゆる日本語でも表現できない感覚だったと言っています。ましてや、それを家族に言えるはずも無かったと。

母の紹介をします。
母は息子の私が言うのもあれですが容姿がよく身長も170センチほどあり非常に綺麗で目立つ存在でした。
父は身長160センチ程で足は短くちょび髭を生やした筋肉質の男。顔もお世辞にもカッコいいとは言えません。何故、母がこの父と結婚したのか未だに大きな謎です。

この頃の母は専業主婦でした。父の人脈の中で大手企業の重役の奥さんと知り合い可愛がられていたようです。よく高級ホテルで開かれるパーティーなどに呼ばれ参加していたと聞いています。
その様な華やかなお付き合いが暫く続いた後、母の容姿を買っていた重役の奥さんから「新たなビジネスをしているんだけど広報になってもらえないか。」と誘われたそうです。
この話を聞いた父はそのビジネスの話を聞きに重役の奥さんの元へ行きました。
いかにも資産家の出立ちで現れた奥さんから聞いた内容は、洗剤や鍋、あらゆる日用品を販売し、そのビジネスを紹介した人が更にネットワークを広げその紹介者が商品を売れば紹介した者にもマージンが入るというもの。つまりマルチ商法であった。
まだマルチ商法の情報が少ないこの時代に話を聞いた父は既に1億超の負債を抱えていた為これでどうにかなるかもしれないと思い母と共に乗っかってしまったのである。
母はまだこの負債の事は知らないまま。

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