『リッパー・ストリート』シリーズ3 (2014) 『不思議の国のアリス』オマージュ
〈結末や核心に関する記述あり〉
2012年放送のシリーズ1が1889年設定、2013年放送のシリーズ2が1890年設定だったが、2013年放送のシリーズ3は1894年設定となっている。
ローズ役シャーリーン・マッキナとジャクスン大尉役アダム・ローゼンバーグは本作品撮影中から交際していたようで、最近、婚約を発表している。マッキナはミュージカルの子役としてデヴュウ、その後、音楽の教育も受け、歌は得意なようで、劇中でも本人が歌唱している。
19世紀のイギリスでは大きな鉄道事故が何度も起きているが、チャールズ・ディケンズも乗っていたステープルハースト鉄道事故が、エピソード1に影響を与えているのかもしれない。
信憑性はほとんど無いが『不思議の国のアリス』原作者のルイス・キャロルが切り裂きジャックだったのではないかという説がある。事件当時キャロルはオックスフォードシャー在住で年齢は50代後半だったので可能といえば可能だが、とくに根拠があるわけでもない。この説は1990年代に出版された本で発表されたもので、日本でもネット上ではわりと有名な説だが、本の内容は相当怪しいものである。事件当時、警察の捜査対象になったわけでは無いのだ。ただキャロルが写真撮影を趣味としていて、少女の写真を多く撮影していたことはよく知られており、シーズン1第1話のヒントになっている可能性もある。
リードの行方不明だった娘マティルダが「アリス」として地下で育てられていたのだが、これは言うまでもなく『不思議の国のアリス』の影響であり、「鍵」や「鏡」といったモチーフが登場する。マティルダが椅子を使って小さな窓から逃げ出すシーンは、間違いなく『フェノミナ』(1985)のオマージュだろう。再三、私が指摘してきたがダリオ・アルジェントの『フェノミナ』は、ホラー版『不思議の国のアリス』である。
また本作品に登場する実在の人物アバーライン警部は、史実では1892年にロンドン警視庁を退職したので、シリーズ3の設定である1894年にはすでに退職していた。面白いことに彼は退職後ピンカートン探偵社で働いていた。
ピンカートン探偵社は司法省から1871年に連邦法違反の発見と起訴を請け負っているし、シークレット・サーヴィス(財務省)の創立にもピンカートン探偵社が関わっていると言われている。アメリカで刑事訴追される可能性が高い人物の国外脱出や不正な資金移動に関われば、当局に筒抜けになる可能性が高い。おそらく今回登場するスウィフトのボディーガードたちは、ピンカートンを辞めた連中を直接雇っているか、中小の同業者の人間なのだろう。またスウィフトにカルロス・ゴーンを連想する人も多いだろう。ゴーンの海外逃亡には、元グリーンベレー(米陸軍特殊部隊)のPMC(民間軍事会社)崩れが関わっていると言われている。
マルサス主義に基づく人為的な人口抑制(日本では殆んど誰も触れないが、グレタ・トゥーンベリグはネオ・マルサス主義である)、貧困層など社会的弱者を利用した人体実験など現代にも通じるテーマが描かれたシリーズ3であった。
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