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『ハンナ』(2011)   『白雪姫』と『不思議の国のアリス』のオマージュ映画

プライム・オリジナル・ドラマ『ハンナ ~殺人兵器になった少女~』がリリースされ、それに合わせて映画版もプライム無料入り。今になってあらためて観直してみると、『ダウントン・アビー』のミシェル・ドッカリー(2010年9月に放送開始されたダウントン・アビー撮影開始直前の撮影か?)や、『ファントム・スレッド』のヴィッキー・クリープスが出演していてビックリ。
どちらもまだ未観賞という人は、どちらを先に観るか難しい選択ですが、私はプライム・オリジナルを先に観ることをお勧めします。映画版は不思議と、ほのぼのした雰囲気があり、主人公がお父さんの髪を切ってあげる場面(おそらく『オーケストラの少女』のオマージュ)や、お父さんが普通のスーツに履物だけ冬用ブーツで出ていく描写など、どこか微笑ましいのですが、プライム・オリジナル版は父親とCIA局員マリッサのキャラと動機が異なり、設定と序盤のプロットが似ているだけの別のお話ともいえますので、順番はともかく両方お勧めです。

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「一緒に狩りに行くか」「行かない」というシーンの父(エリック・バナ)とハンナ(シアーシャ・ローナン)の表情と、それを捉えるラック・フォーカス(ピン送り)の撮影は、本作品が復讐劇でなく少女の成長と自立の物語であることを表しています。また、主人公が実際に文明社会に接した驚きと順応をだらだら描くのではなく、モロッコの宿のシーンで一瞬で表現するなど、ジョー・ライトの演出も冴えわたります。
さて、本作品は、そもそも少女版ジェイソン・ボーンではありません。たしかに類似点はありますし、影響も否定はできませんが、脚本家や監督の狙いは、あくまで『不思議の国のアリス』や『白雪姫』のような、現代のおとぎ話です(白雪姫がモチーフであることを示す描写が何度もあります)。CIAの秘密施設からの脱出は『不思議の国のアリス』だし、ケイト・ブランシェット演じる敵役は『白雪姫』の王妃そのもの。彼女の歯磨きシーンは、そのメタファーです。

★★★★★

2019年3月29日に日本でレビュー済み

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