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『トレッドストーン』(2019)   『ボーン』シリーズのスピンオフTVドラマ

2020年1月10日に日本でレビュー済み
形式: Prime Video


これはもしかしたら日本ではあまりウケないかな。

アメリカのケーブル/衛星TV局であるUSAネットワーク(NBCユニバーサル系列)で放送されただけに、地上波ドラマに比べればお金を掛けてはいるが、HBOやアマゾン・オリジナル作品並の高い期待はしない方がいいだろう。
クリエーターのティム・クリングは『ヒーローズ』で知られる人だし、脚本も普通にTVドラマの脚本家たちといったところ。
第1話からして、監督のイラン系アメリカ人ラミン・バーラニはHBOの『華氏451』で大コケした人だし。地上波ドラマを手掛けてきたプロデューサーなら、ツカミの第1話の演出にはエースを起用しないとだめだろう。と、思ったら、ラミン・バーラニもプロデューサーに名を連ねているのか。とくに第1話の演出は今一つだ。第2話と第3話はわりと良いと思ったら、監督はGOTや『ホームランド』の演出もしていた人か。
さすが最近の作品だけあってアクションは良く出来ている。ゲストのパトリック・フュジットのガン捌きとフラッシュライトの扱いが最近のスタイルすぎて、長年スリープしていたわりに逆に不自然なくらいだ。ちゃんとしたタクティカル・アドヴァイザーが付いているからだと思うが、フュジットは親族に軍人が多いらしいし、そういうのが好きなのかもしれない。

主人公を1人に限定せず、数人のキャラクターのストーリー・ラインが並行して進行していき、過去と現在の2つのタイム・ラインが描かれる、典型的アンサンブル・キャスト(群像劇)なのだが、群像劇は完成度の高い脚本と、イギリス作品のように地味な演技派を揃えないと難しい。これなら、はっきりとエピソード毎に異なるキャラクターに焦点を当てるスタイルにしたほうが良かったかもしれない

おそらく、映画『ボーン』シリーズと同一の世界設定で、ジェイソン・ボーン(マット・デイモン)やアーロン・クロス(ジェレミー・レナー)と同格の複数のキャラクター達が登場するクロスオーバー作品を量産していく構想だったと思われるが、これではシーズン2もおぼつかないだろう。
TVシリーズで映画版の前日譚を描くというのは最近の流行りなのかもしれないが、どうしても細かな齟齬が生じて、オリジナルに思い入れが強いファンからは受け入れられないことが多い。本家マット・デイモン主演シリーズでは、計画の立案者は実は…という驚愕の事実が明かされたのだが、それをTVシリーズで、冷戦時代の70年代から同じようなことをやっており、ジェイソン・ボーンのような人間が世界に無数にいるということにされたら、興ざめするファンもいるだろう。いっそのことリブートさせた方が良かったようにも思うのだが、本家も続編の可能性も残しているし、映画版でマット・デイモンとジェレミー・レナーの共演もいずれはあるのかもしれない。人気TVドラマ『24』の最後が『24: Legacy』という中途半端なスピンオフ作品で終わってしまったように、『ボーン』シリーズも尻すぼみにならなければいいが。

また評価の対象にはしていないが、字幕のレイアウトというか配置が悪く、気になることが何度かあった。

総じて、お金を掛けた地上波ドラマといったところ。同じNBCUniversal系列製作で、プライム・オリジナルの『ハンナ』シーズン2のほうが、期待できそうだ。

追記:吹き替え版で朝鮮語に字幕が無い回があるそうだが、字幕版では朝鮮語にも字幕が付いているということは、字幕用の英語台本には記載されているはず。内容的に重要な台詞もあり、想像で補える範囲ではない。また吹き替え版第9話は英語音声で字幕もついていないようだ。いずれは修正されるだろうが、今のところ最初から字幕版で視聴したほうが良いだろう。
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