ダーケスト・ウォーター ブラム・ストーカーの『ドラキュラ』と同じ、滅びゆく貴族のアレゴリー

イギリス統治時代のアイルランド人の作家、ブラム・ストーカーの小説『吸血鬼ドラキュラ』と同様、滅びゆく貴族や地主のアレゴリーであろう。ドラキュラは人の生き血を吸う、つまり平民を搾取する貴族のメタファーだった。

(以下、核心や結末に関する記述あり)
先祖代々自殺というのはプロテスタントのメタファーだろうか?
村民の多くは小作農家でおそらくカソリック、元々お屋敷の一族(アングロ・アイリッシュ)には反感を持っているのだろう。辞書を引くと「アングロ・アイリッシュ」は、イギリス人とアイルランド人の血を引く者、アイルランド在住のイギリス人、の2つの意味があるが、普通は後者の意味で使われ、本作品の一族も明らかに後者である。また、正確に言うとアングロ・アイリッシュのアングロはイングリッシュよりスコティッシュであることが多い。
グーグルを駆使した知識で「イギリス人とアイルランド人の血を引く者」の映画だと勘違いしてしまうと、とんでもないおかしな解釈をしてしまう。

設定、ロケーション、主演のシャルロット・ヴェガ(あまりアングロ・アイリッシュ的な顔ではないが)の演技などは非常によいのだが、演出と脚本は水準以下。
これが全盛期のダリオ・アルジェントみたいな天才的な人が、演出と脚本をしていれば名作といわれるレヴェルの作品になる可能性もあっただろう、惜しい作品である。

2020年1月22日に日本でレビュー済み

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