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はるりん「青に溶ける」~ボカロレビューその2~

曲ごとに進化する才能

2018年6月に「水中都市」でデビューしたはるりんさんは、叙情的なリリックと聴きやすい歌メロが特徴のボカロPだ。

その後もリリースを重ねていくにつれ、曲だけでなく映像にも工夫をこらし始め、同年9月に公開した7作目「海底シティライツ」では実写MVに挑戦。落ち着いた曲と都会の喧騒を写した映像があわさって、人間誰もが根底に抱える、ある種のノスタルジックな感情を作品に落とし込むことに成功している。



また、その次の8作目「エンドロール」では線のハッキリしたイラストレーションを描いた。作品全体のクオリティを独力で追求することで、自分の描きたい世界観を模索しているようにもみえた。



そしてそんな飽くなき探究心が実を結び、ついに傑作ともいえるある楽曲が誕生する。

集大成、「青に溶ける」

2018年12月12日、9作目となる「青に溶ける」では、After Effectsを駆使したアニメーションを採用。シンセを主体とした音が整然と配置されており、IAの淡い調教もあいまって実にポップかつクールな仕上がりとなっている。



特筆するべきは歌詞とメロディだ。ラップともとれそうな軽やかなメロディに、思わずハッとするような言葉が随所に散りばめられている。例えば、


心じゃなくて 身体じゃなくて じゃあ あと何をあげればいいの


こんな風に手元のカードを切っていった結果、「もうこれ以上あげられるものなんてないのに」と途方に暮れる心情が、偽らず、脚色すらされず、しかし大きな説得力をもってリズミカルに提示される。


サビはもっとすごい。


何度でも 何度でも 何度でも 君を愛せると思っていた 声を失っても
掴まえて 手放して 掴まえて 手放して 泡になってさ
指をすり抜けてしまう


この繰り返しをサビに持ってくる胆力である。


「何があっても愛せると思っていた」。そうじゃなくなってしまったのは相手に魅力がなくなったからではなく、あくまで自身の問題だと語っているように読み取れるのだ。


段々と気持ちが色褪せてしまう、繋ぎ止める握力が弱まってしまう。歳を重ねていくごとに感じる「やりきれなさ」を、MVを漂うクラゲや魚に委ねながら曲は進行していく。

なんだ 少しも興味ないんだ
うわべとうわべの相思相愛


大切だから 自分で壊してみたくなったのでしょう


何度でも 何度でも 何度でも 君を許せると思っていた


曲は悲愴な感じなどなく、むしろかなり軽快だ。だからこそ、より一層この物悲しさが引き立てられるのである。

2019年、次の進化へ


ところではるりんさんは、処女作「水中都市」から最新作「青に溶ける」までが、半年程度の間にリリースされている。たった半年で試行錯誤を重ね「青に溶ける」ができたのだと考えると、末恐ろしいと感じるのはごくごく自然なことだろう。


ここから半年、さらに半年と時間をおっていけば、「青に溶ける」を軽く超えるような傑作を生み出してくれるのではないか。そんな期待を胸に抱えて、はるりんさんの今後をチェックしておこう。

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