人間っていうのは簡単なもので、薬を飲んだら、それからすぐ体調が"普通"になれました。
強死焦燥みたいなのの襲来もなくなり、ただ「あの死の急ぎがまたいつ来るやもしれんから、家を片付け、掃除しよう。少しずつ」と、計画的に、ただ、死が、ぐるぐると、蟠り、腹の熱の治まり方を知らない幼子のように、ただ、死ななきゃなんねえのに俺って馬鹿だよな、下手くそだよな、ああもうたまんねえ、充分だよ、もう、充分。そう思っているうちに、ぐったりして眠って、起きて、出勤。あーあ、どうにか出勤。出勤が、できるように、なりました。みんな拍手。みんな。ありがとう。この、この世の中、クソ喰らえだっちゅーの。(ここで両腕で乳を寄せる)

でも飲酒しながら無心で自分の顔を叩き続けるとかは、全然まだやります。クソ喰らえだっちゅーの。(ここで両腕で乳を寄せる)
もう、おやすみ。おやすみよ、おい。

そういえば最近、ジャイアンのことをふと考えました。もちろんあの、ジャイ子のあんちゃんの、ジャイアンのことですね。
のび太から漫画を奪ったら、家で読めばいい。茶でも菓子でもあるでしょうに。スネ夫からラジコンを奪ったら家の前で走らせればいい。お店屋さんの前くらい舗装されてるでしょうに。
違うねん。家に帰れば母ちゃんが手伝いに駆り出してくるから。妹の趣味を邪魔したくないから。父ちゃんは、止めもしないし、応援もしないし。だからあの空き地に、空き地にずっと居着いているんだろうなと、思いました。勝手に。
空き地なら何をやってもいい。スネ夫の物を奪ったってどうせお金持ちの親族がまた買ってくれる。のび太の物を奪ってもドラえもんが何とかしてくれる。しずちゃんに何かすることはないけど、あの子は案外かなり強かだし、のび太がドラえもんに泣きつけばどうにでもなるんだろう。じゃあ、家の経営は、妹の夢は、妹の夢見る自由な恋愛は、誰が守ってくれる。ジャイアンには荷が重いだろうけれど、邪魔だけは。せめて。
そう思いました。勝手に。勝手に。楽しい夢が見れるお薬くれたら西日の窓になれますが。あたしのシーソーだけ動かない。そういう感じです。

生活の時間帯の様子など鑑みると、近頃の自分は非常に健康的になったと思います。職場の人々も、医師も。
朝はアラームできりきり起きて、洗顔し、朝ごはんを食べて歯を磨き、着替えて、髪を整えて出勤して、仕事して。健康でしょう、そう思うでしょうが、こんなに人生きりきり動いた試しがないので、You are my 躁 躁 いつもすぐそばに鬱。
あ、これ、なんかノリで電車とか、行っちゃうやつだな。テンション高まっちゃうと。そう思って、危惧しているわけです。非常に。
病院の先生曰く「死にたくなる気持ちを抑える薬」が頓服として出ているわけで、それって決して「"ワンダーランドへ飛び出す"のを、ふと思い止まるための薬」なわけじゃないから。そのうちきっと、あの深みが、温かくきらめく掘り炬燵に見えてくるかもしれません。あの早い乗り物に飛びつけば、誰よりも速く夢の世界へ行けちゃうんじゃない、と閃くかもしれません。夕焼け小焼けで日が暮れて、あの鉄のたくさんの、枕木を、ち、よ、こ、れ、い、と、と歩いて歩いて、ありもしなかった幼い楽しい綺麗で美しい午後五時に。するっとタイムスリップできゃうんじゃないの、と。思うかもしれません。魅力的な衝動だったとしたら。止まれないかもしれない。黄色が好きな幼子は黄色のシュシュッと忍者が現れたら、その信号じゃ止まれない。早く、檻に入れてくださいね。別に公共や他者に迷惑をかけるつもりで、存えてないんです。本当に。

もうおやすみよ。おやすみしなさい。額に大きな花瓶をブチ当ててざっくりと、おやすみなさい。おやすみなさいしなさい。おやすみなさいしなさい。だらっと垂れたそのだらしのねえ血を、眼窩の奥深くまで仕舞って。おやすみなさいしなさい。殴られて殴られて殴られてようやく様になった綺麗な面を、私の方へ向けなさい。その凹凸を、詳しく見せなさい。見せなさい。ようやっと、人間の形に。なれた。なれたその、貴方の貴方以外の、穴を埋める他の穴はもう、どこかへ、牛と一緒に宇宙船で飛んでいってしまったから。貴方の面は、殴られてようやく完成。ありがとう。もう、おやすみなさい。ありがとう。

たくさんの私たちに、一人一人に、こうやって、説得しながら、疲れ果てて、なぜなら本当にたくさんいるから本当に疲れて、納得させて、疲れて、寝こけています。
これが健康なんだってさ。えらいねこの社会の皆様方におかれましては。頑張んなくちゃ頑張んなくちゃあたしの愛に嫌われちゃうよ。

誰かワイを檻に入れてクレメンス〜〜

何かやらかす前に、頼むンゴねえ……




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