おかたししなくちゃ

 日記。

 就活サイトに登録してからというもの、毎日メールが来る。「LGBTフレンドリーな会社で働きませんか?」「女性のキャリアアップ!」が交互に来て頭が混乱しそうだ。
 LGBTフレンドリーって何やねん。フレンドリーではない会社に比べたら優しいのだろうが、きっと本来そういうことをわざわざ書く必要はない。LGBTフレンドリーだったところで、性自認が女性だけど単にレディーススーツが嫌な人は? 発達障害の人は? 身体や心が壊れかけのレディオの人は? 扁平足の人は? なで肩の人は? 夜型の人は? 玉石混合の求人たちをLGBTフィルター、特性フィルター、社風フィルター……(中略)……で濾過したら一滴も水が出なくなっちまった。ポルノグラフィティもビックリである。
 そもそもフレンドリーという言葉が何か違う気がする。LGBTの人「も」「仲良くやっていけるように配慮してあげましたよ」、みたいな。不登校の子に対する「仲間に入れてあげる」みたいな。ちゃうやろ。その人がどういう人であろうと得意不得意を活かして仕事をする、そこに性や障害の名前なんか関係ないやろと。社会的に大丈夫な格好や言動なら性に関係はないはずだし、ヒールもネクタイも要らないし、必要ない出社は必要ないし、夜に家で作業して昼間に眠っても成果次第だし、イヤホンを着けていてもいいし、どんな存在と愛し合っていても祝福されるべきなのではないか。
 ア〜〜!!!!!!!!!!(苦しみの声) どうして人々はそういうことに拘るのだろう。仕事場なんだから仕事がちゃんと捗れば良いわけじゃん。「お前だけ特別扱いするわけにはいかない」って全員を特別扱いすればいいじゃん。花屋の店先に並ばすぞコラ。

 嫌だけどレディーススーツを着て、無理にでも就活の靴(大抵ストラップタイプだから足首を2秒に1回捻るのだ)を履いて、なで肩だから死ぬほど滑り落ちる就活鞄を持って就活をすることもできる。女性として採用されて「女子としての意見はどう?」とか言われて結婚妊娠出産の話とか当たり前のようにされて(中略)ウワ〜〜〜〜〜〜(中略)……そういうことが不可能なわけでもない。
 でも自分としては、こういう人間が「無理してでも社会の求める性に合わせて」「発達障害かもといった疑念を隠したまま」「身体的にも精神的にも苦しい仕事を」やらなきゃ就職できない……といった状況を何とかする仕事に就きたい。確かに自分は、そういう自分の特性で頗る嫌な目に遭ったことはない。しかし矢面に立つことは結構多かった。矢面に立つというと聞こえが悪いかもしれないが、いわゆるロールモデルになれば肯定も批判も可視化されるだろう。自分の姿を見て「こんなに批判されるなんてお先真っ暗だ」と思うこともあるだろうし、「それでも死ななきゃ生き延びるんだな」と思うこともあるだろう。
 格好良いから赤のランドセルが欲しいと言って止められた近所の男児、一人称があたしの仮面ライダー大好きな甥、女性らしい名前を隠すようにあだ名を名乗る同期、支援学級に行くことになったと泣いた時の同級生、趣味は麻雀と書いたせいか公務員試験に落ちた存在、他にも全ての1人1人が自分の特性で不利益を被ることがないようになってほしい。

 先日ストレスが溜まっていたのでハーゲンダッツを買ったのだが、ハーゲンダッツ様に忖度しすぎて食べるタイミングを図りかねている。そうして今まで色々なものをダメにしてきたので、ハーゲンダッツ様に下克上する計画を立てることにした。虎視眈々と冷凍室を狙う俺。ほうら、凍れ。


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